モテない男とラブレター

冬生まれ

文字の大きさ
上 下
5 / 7

5

しおりを挟む
「って……か、か、か、海堂…せん、ぱい……」「あ?」
 
その人物は、この学校では有名な海堂【かいどう】先輩だった。先輩は喧嘩がめっぽう強く、今まで一度も負けたことがない。そのうえ、虫酸が走るほどの女嫌いで恋愛というものに対しては嫌悪感しか抱いておらず、彼の目に触れた恋愛ごとには必ず血生臭い噂が付き纏うらしい……。
そんな先輩を前にした俺は、咄嗟に手に持つ封筒を後ろに隠し、軽く会釈をしてその場を去ろうとした。だが、運悪く内宮が先程いた窓から顔を覗かせ声を掛けてきた。
 
「おーい!ラブレター見つかったかぁー?」「ラブレター……?」「あのバカッ……!!」
 
内宮の声を聞いた先輩はピクリと反応した。俺は慌てて内宮に『それ以上喋るなっ!』と口に人差し指を当てたり、チャックのジェスチャーを真似てみたりするも内宮は解ってないのか、また声を掛けてくる。
 
「はぁ?なんだよ、ラブレター見つからなかったのかー?」「だからッッ~~」「おいッ!」
 
先輩に声を掛けられビクリと肩が跳ねる。先輩を見やると重たい空気を背中にまとわせ、鋭い眼つきで睨みつけていた。
 
「せ、せ、せ、せんぱい……?」「お前、背中に隠したソレはなんだ?」「え、ええっと……」

先輩の声色から、今確実に下手な事を言えば生きては帰れない事が伺える。俺はなんとかせねばと四苦八苦しながら頭をフル回転させたが、解決策が一向に浮かばず、そうこうしているうちに内宮がまた口を開いた。
 
「先輩!そいつのラブレター見なかったスか?そいつのラブレターそこらに落ちたんですよ!」「ほう。そうか……」「ひいいい~~!!」
 
更に重たくなった空気が身体にヒシヒシと伝わり、気づけば足が笑っていた。
 
「いや、先輩……これはその、、、」「言い訳無用!!」

ビリビリと身体に走る先輩の声。このままでは三途の川を拝む羽目になるだろうと、今にも拳を構えて殴りかかって来そうな先輩に俺は咄嗟に口から出た出任せを告げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

その関係はこれからのもの

雨水林檎
BL
年下わんこ系教師×三十代バツイチ教師のBL小説。 仕事中毒の体調不良、そんな姿を見たら感情があふれてしまってしょうがない。 ※体調不良描写があります。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...