モテない男とラブレター

冬生まれ

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 下駄箱に着くと、無言で靴を履き替えていた俺達に来たばかりの友人らが声を掛けてくる。

「よぉ、お前ら!」「おー浅倉、石田」「たくっ参ったよ。何だあの女子の群は……」「いつもの事だろ?」
 
細目の浅倉【あさくら】と体がゴツい石田【いしだ】も校門に集る他校の女子の群に困惑している様だった。それもその筈。何故なら、俺達は女子達とは無縁な輩だからだ。
 
「少しは考えて欲しいよなぁ…?」「通行の邪魔だっつうの!」「本当にな~!」      

だからだろうか。口々に文句が出る友人達の言葉の端々には、何処か嫉妬や妬みを感じられる。
 
「……でもさ、朝から女子が見られるだけでもいいじゃん?ここ男子校なんだし!」「お前なぁ……」
 
そんな友人達に俺は一人だけズレた発言をかまして呆れられた。

「なんだよ、お前らだって本当は嫌じゃないんだろ?」「そ、それは……」
 
下駄箱から中靴を取り出し、何かを言いたそうな友人達に顔を向けると内宮が何かに気付いて声をあげた。

 「あ…オイ、なんか落ちたぞ?」「えっ?」
 
足元に目をやると、内宮がしゃがんで何かを拾った。
  
「なんだそれ?」「手紙っぽいな……」
 
浅倉と石田も内宮の手にある白い封筒を見つめる。
 
「ほれ!」「あんがと」
 
手渡された封筒を見てみると、俺の名前が記入されていた。しかし、それ以外には何も書かれていない。

「誰からだよ?」「それが何処にも……」「中にでも書かれてるんじゃないか?」「開けてみろよ!」
 
友人達に急かされ封を切ろうとした時、貼られていたシールに目がいった。

「ハートマーク?」
 
そう呟いた瞬間、友人達の視線は一斉にそのシールに集まった。
 
「もしかして、それって……」「まさかの……」
 
内宮と浅倉がそう呟いた刹那、石田が俺の手から封筒を奪い盗ってそのまま駆け出した。

「!?ーーーって何すんだよ石田!!」
 
俺は封筒を持ち逃げする石田に大声で叫ぶと、石田は怒り気味に『お前だけに良い思いはさせんっつ!!』と走り去って行った。
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