未来の砂嵐

冬生まれ

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あれから数年。男は未だに独り身でいた。夢で少年が言っていた様に、花嫁が男の元へ訪ねて来るワケも無く、花嫁は未だに新郎と仲良く暮らしているらしい……。別にそんな夢など長く覚えている筈もない男は、日々を淡々と過ごしていた。しかし、住んでいたのは海の見える赤い屋根の家。貯めたお金で建てた一軒家で、男は毎日窓から見える海をぼんやりと眺めていた。そんな時だった。自宅のチャイムが珍しく鳴った。

「はい」

男が出ると、そこには見知らぬ夫婦が立っていた。

「こんにちは」「隣に越してきた者です」「あ、どうも……」

優しそうな夫婦は引っ越しの挨拶に来たらしく、男が軽く会釈をすると、女性は自身の背後に向けて声を発した。

「ほら、隠れてないで貴方も挨拶なさい?」

女性が告げると、背後に隠れていた小さな子供は恥ずかしそうに顔を出す。

「は、はじめまして……」

視線を合わせず挨拶をする子供に男は首を傾げる。

「キミ、何処かで会った事あるかい?」「え……」

男がふと子供に声を掛けると、子供は不思議そうな顔をした。しかし、それからすぐに顔を反らして小さく呟やいた。

「多分……ない、けど」「そうか。じゃあ、勘違いだね」

男が笑うと、子供はじっと男の顔を見つめた。

「これ、つまらない物ですが……」「わざわざスイマセン。有難う御座います」「これから失礼お掛けしますがよろしくお願いします」「いえいえ、こちらこそ」

夫婦は手土産を男に渡し、頭を下げて帰って行った。その時、母親にしがみついていた子供が男へと振り返り、小さく手を振った。

「バイバイ、またね!」

クスリと笑うその顔に男はあの日の夢を思い出す。

「まさか……な」

手を振り返す男は、夢の少年と子供を重ねて何とも言えない顔で笑うのだった。




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