輪廻転生

冬生まれ

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【輪廻転生、因果の果てに】



私には前世の記憶がある。

私が私と同じ年くらいの少年だった頃。

屋上でもう一人の少年と揉み合い、私達は金網にぶつかった。

ガシャンと金網が外れる音がした。

私と彼は真っ青な空の下、真っ逆さまに落ちていく。

目前まで迫るコンクリートに血の気が引いた。

青ざめる私はおもわず隣の彼を見た。

彼は恐がるわけでもなく、私を見据えて口元を微かに動かした。

私はその笑みを最期に意識を飛ばした。

「ッ……」

そこで目が覚めて飛び起きた。

噴き出すような汗と早まる鼓動が気持ち悪い。

ベッドから出て支度をする。

最近よくこんな悪夢をみる。

何故かは分からないけど、兎に角最悪。

髪を梳かして歯を磨く間、その悪夢について考えた。

私は彼が憎かった。

そしてナイフを手に彼を襲った。

彼は抵抗してフェンスへと逃げた。

私は彼目掛けてナイフを翳しながらそちらへ向かった。

金網にしがみつく彼に思いっきり突っ込んだ。

その瞬間、ガシャーンと音がして見ると金網が外れて私達は勢いのままに空中へと放り出された。

しまった!そう思っても後の祭で、みるみる内に地面へと急降下。

怯える私に平然と、死を受け入れる彼が最期に言った。

「─────」

あれは……。

言葉を思い出せないまま、身支度を済ませて学校へ行く。

家を出る時、母親が言った。

「最近、不審者が出ているらしいから気をつけなさいよ?」

二つ返事で家を飛び出す。

私は不審者よりも夢の事が気掛かりでそれどころでは無かった。

彼のあの言葉、あれはなんと言っていたのか。

考え事をして信号に差し掛かった時、背後から腕を掴まれた。

「オイ」「ッ……!」

咄嗟に振り向くと、そこにいたのは幼馴染みだった。

「なんだ、アンタか…ビックリした~!」「なんだとはなんだよ?せっかく助けてやったのに」

幼馴染みが指差す信号は赤に変わっていた。

「あ、いつの間に……」「さっき点滅してたろ?見てなかったのかよ、たくっ」

呆れて頭を掻いてる幼馴染みにゴメンと謝ると、幼馴染みはフッと笑った。

「まぁ、命の恩人に感謝するんだな?」「何よそれぇ…!」

信号機が再び青に変わると、幼馴染みは先を歩いて揶揄う様に告げる。

「やっぱり、お前は俺がいないと駄目だな。仕方ないから一生面倒みてやるよ!」「えっ?ちょっ、それって……」

幼馴染みは振り返り、此方に手を差し出した。

「ずっと一緒にいてやるっつってんだよ!」「……」「それとも俺じゃあ不満かぁ?ワガママなお嬢さん…!」

その言葉にクスリと笑い、差し出された手を躊躇いなく掴んだ。

「フフッ…アンタらしからぬ発言ねぇ?」「悪いかよ!」「いいわ。しょうがないから付き合ってあげるわよ。格好つけの王子様!」「ケッ、上から目線か。可愛くねーの!」

ぼやきながらも手をギュッと握り締めてくれる照れ屋の幼馴染みに、私はこの上ない幸せを噛み締めていた。

そう、あの悪夢を忘れるくらいに……。

手を繋いで学校の門まで着いた頃、友人達を見掛けて声を上げる。

「あっ、おはよう!」

友人達は気付いて手を振り返す。

私も手を振ろうと上げた時、突然友人達は顔色を変えて叫び出す。

「きゃああああ!!」

私と幼馴染みを見て声を上げている…。

そう思い、少し気恥ずかしさを感じていると幼馴染みが突然私を抱きしめた。

「ちょっと、何よ急に……」

見ると、幼馴染みは眉を顰めて険しい顔を見せていた。

それからもたれ掛かるように私に倒れてくると、幼馴染みは苦しそうに告げた。

「に、げろ……」「えっ?」

その場に倒れた幼馴染みの後ろには、フードを被った黒いパーカーの男が立っていた。

男は手に血の着いたナイフを持ち、私と目が合うとニヤリと笑う。

「みぃーつけた!」

私はその言葉にあの悪夢を思い出す。

そう、あの時─────アイツが言っていた言葉。


『また、逢おうね?』


私はその場で動けなくなり、地面に尻餅を着いた。

「あ、あんた……もしかして」

男は私に目掛けてナイフを突き付けた。

「もう逃がさないよ?」

振りかざされたナイフに思わず目を閉じる。

また、駄目なの……?

そう思った矢先、男は学校から出てきた先生達によって取り押さえられた。

「大丈夫かい!?」

校長先生が私と幼馴染みを匿って、何とか助かった。

男は取り押さえられながらも私をジッと睨み付けて何かを呟いていた。
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