3 / 5
3
しおりを挟む【輪廻転生、因果の果てに】
私には前世の記憶がある。
私が私と同じ年くらいの少年だった頃。
屋上でもう一人の少年と揉み合い、私達は金網にぶつかった。
ガシャンと金網が外れる音がした。
私と彼は真っ青な空の下、真っ逆さまに落ちていく。
目前まで迫るコンクリートに血の気が引いた。
青ざめる私はおもわず隣の彼を見た。
彼は恐がるわけでもなく、私を見据えて口元を微かに動かした。
私はその笑みを最期に意識を飛ばした。
「ッ……」
そこで目が覚めて飛び起きた。
噴き出すような汗と早まる鼓動が気持ち悪い。
ベッドから出て支度をする。
最近よくこんな悪夢をみる。
何故かは分からないけど、兎に角最悪。
髪を梳かして歯を磨く間、その悪夢について考えた。
私は彼が憎かった。
そしてナイフを手に彼を襲った。
彼は抵抗してフェンスへと逃げた。
私は彼目掛けてナイフを翳しながらそちらへ向かった。
金網にしがみつく彼に思いっきり突っ込んだ。
その瞬間、ガシャーンと音がして見ると金網が外れて私達は勢いのままに空中へと放り出された。
しまった!そう思っても後の祭で、みるみる内に地面へと急降下。
怯える私に平然と、死を受け入れる彼が最期に言った。
「─────」
あれは……。
言葉を思い出せないまま、身支度を済ませて学校へ行く。
家を出る時、母親が言った。
「最近、不審者が出ているらしいから気をつけなさいよ?」
二つ返事で家を飛び出す。
私は不審者よりも夢の事が気掛かりでそれどころでは無かった。
彼のあの言葉、あれはなんと言っていたのか。
考え事をして信号に差し掛かった時、背後から腕を掴まれた。
「オイ」「ッ……!」
咄嗟に振り向くと、そこにいたのは幼馴染みだった。
「なんだ、アンタか…ビックリした~!」「なんだとはなんだよ?せっかく助けてやったのに」
幼馴染みが指差す信号は赤に変わっていた。
「あ、いつの間に……」「さっき点滅してたろ?見てなかったのかよ、たくっ」
呆れて頭を掻いてる幼馴染みにゴメンと謝ると、幼馴染みはフッと笑った。
「まぁ、命の恩人に感謝するんだな?」「何よそれぇ…!」
信号機が再び青に変わると、幼馴染みは先を歩いて揶揄う様に告げる。
「やっぱり、お前は俺がいないと駄目だな。仕方ないから一生面倒みてやるよ!」「えっ?ちょっ、それって……」
幼馴染みは振り返り、此方に手を差し出した。
「ずっと一緒にいてやるっつってんだよ!」「……」「それとも俺じゃあ不満かぁ?ワガママなお嬢さん…!」
その言葉にクスリと笑い、差し出された手を躊躇いなく掴んだ。
「フフッ…アンタらしからぬ発言ねぇ?」「悪いかよ!」「いいわ。しょうがないから付き合ってあげるわよ。格好つけの王子様!」「ケッ、上から目線か。可愛くねーの!」
ぼやきながらも手をギュッと握り締めてくれる照れ屋の幼馴染みに、私はこの上ない幸せを噛み締めていた。
そう、あの悪夢を忘れるくらいに……。
手を繋いで学校の門まで着いた頃、友人達を見掛けて声を上げる。
「あっ、おはよう!」
友人達は気付いて手を振り返す。
私も手を振ろうと上げた時、突然友人達は顔色を変えて叫び出す。
「きゃああああ!!」
私と幼馴染みを見て声を上げている…。
そう思い、少し気恥ずかしさを感じていると幼馴染みが突然私を抱きしめた。
「ちょっと、何よ急に……」
見ると、幼馴染みは眉を顰めて険しい顔を見せていた。
それからもたれ掛かるように私に倒れてくると、幼馴染みは苦しそうに告げた。
「に、げろ……」「えっ?」
その場に倒れた幼馴染みの後ろには、フードを被った黒いパーカーの男が立っていた。
男は手に血の着いたナイフを持ち、私と目が合うとニヤリと笑う。
「みぃーつけた!」
私はその言葉にあの悪夢を思い出す。
そう、あの時─────アイツが言っていた言葉。
『また、逢おうね?』
私はその場で動けなくなり、地面に尻餅を着いた。
「あ、あんた……もしかして」
男は私に目掛けてナイフを突き付けた。
「もう逃がさないよ?」
振りかざされたナイフに思わず目を閉じる。
また、駄目なの……?
そう思った矢先、男は学校から出てきた先生達によって取り押さえられた。
「大丈夫かい!?」
校長先生が私と幼馴染みを匿って、何とか助かった。
男は取り押さえられながらも私をジッと睨み付けて何かを呟いていた。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
新しい派遣先の上司が私のことを好きすぎた件 他
rpmカンパニー
恋愛
新しい派遣先の上司が私のことを好きすぎた件
新しい派遣先の上司は、いつも私の面倒を見てくれる。でも他の人に言われて挙動の一つ一つを見てみると私のこと好きだよね。というか好きすぎるよね!?そんな状態でお別れになったらどうなるの?(食べられます)(ムーンライトノベルズに投稿したものから一部文言を修正しています)
人には人の考え方がある
みんなに怒鳴られて上手くいかない。
仕事が嫌になり始めた時に助けてくれたのは彼だった。
彼と一緒に仕事をこなすうちに大事なことに気づいていく。
受け取り方の違い
奈美は部下に熱心に教育をしていたが、
当の部下から教育内容を全否定される。
ショックを受けてやけ酒を煽っていた時、
昔教えていた後輩がやってきた。
「先輩は愛が重すぎるんですよ」
「先輩の愛は僕一人が受け取ればいいんです」
そう言って唇を奪うと……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる
春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。
幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……?
幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。
2024.03.06
イラスト:雪緒さま
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる