憧れ

冬生まれ

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「よぉ!遅かったなー?」

教室には僕のスマホを振り翳しながら此方に話掛けてくる彼の姿があった。

「ち、千草君!?なんで…「だって、お前途中でいなくなるんだもん。教室で待ってりゃ来るかと思って待ってたんだぜ?」

そう告げた彼は僕に近づきスマホを手渡した。

「ほらよ!」「あっ…」

手渡されたスマホは画面が暗く、電源を入れるとロック画面が表示された。そういえばスマホに鍵を掛けていた事をすっかり忘れていた。彼はその画面を見ながら残念そうに告げる。

「それのお陰で中身なんて見れなかったぜっ!チッ命拾いしたなぁ…?」「ハハハッ、そっかぁ……」

僕は若干苦笑いを浮かべながらも、内心では『良かった!ホントに良かった!!』と心の底から安堵した。彼は机の上に置いていた自身のカバンを手に持つと、『じゃあな!』と軽く手を振って教室を出て行った。一人残された教室で、僕は大きく溜息を零す。

「危なかったぁぁぁぁ!一時はどうなる事かとおもったよ~~~」

緊張の糸が解けて一気に脱力し、そのまま自身の机に腰掛ける。手に持つスマホに電源を入れ、ロック画面に暗証番号を入力して開くと待受画面には此方を見つめる彼が映し出された。

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