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第1章*とんでもない専属メイド初日
17・夢か現か
しおりを挟む熱い。
頭がふわふわとして、体までふわふわと宙に浮いているような気がする。
ゆらゆらと。
意識が揺れる。
これが夢なのか現実なのか、ルーナには判別することが出来なかった。
(私……)
「ルーナさん」
声がする。
聞き覚えがあるはずなのに、その声が誰のものなのか、ルーナはすぐに思い出せない。
ゆっくりと柔らかなベッドに体が降ろされても、それでもまだルーナの頭はぼんやりしたままだった。
「……すみません」
(どうして、謝るの……?)
男が体の上に跨り、片手をついてルーナのほうを見下ろしている。
靄がかかっているように視界が薄白く、ルーナには目の前にいるのが誰なのか分からない。
誰だか知らないが、謝らないで欲しい。
謝られる覚えがないのに謝られてしまっては、居心地が悪くなる。
(……熱い)
「謝ら、ないで……」
口にした声は上擦っていて、思いのほかに甘やかでルーナ自身驚いてしまう。
だが、わずかに残った理性は、すぐに湧き出てくる熱に支配された。
体の奥底が、何かを渇望している。
何かが欲しくて欲しくてたまらない。
この熱を、今すぐ誰か沈めて欲しい。
しゅるりと、ルーナの眼前で男がタイを解く。
そのさまが、熱に侵されたルーナの瞳には異様に美しく映った。
「この後にされることが分かっても、そんな言葉を言えますか……?」
「……っ?」
男がのしかかってくる。
(この声……知ってる)
耳朶に響く低い声。
「マクシ、ミリアン……?」
ルーナは無意識のうちにその名前を口にしていた。
(ああ……きっとこれ、夢だ)
ルーナは、前世でマクシミリアンが大好きだった。
二次創作では、もっぱら主人公かマクシミリアンばかり創作していた。
これはきっと……。
(私の前世の願望が形になったに違いない)
「は、ぁ……。マクシミリアン……」
ルーナはマクシミリアンに手を伸ばす。
決して届かないと知っているからこそ、手を伸ばす。
だって彼は二次元のはずだ。
「……そんなうわ言のように、私の名前を呟かないでください。媚薬のせいとはいえ……そんな目を向けられたら……」
だけど、伸ばしたルーナの指先はマクシミリアンに触れた。
その感触は三次元のもので……。
「っあ……っ」
触れられなかったはずのマクシミリアンに触れられる。それがどういう意味を持つのか。
思い出す前に、ルーナの思考は霧散した。
マクシミリアンが、ルーナに口付けたから。
「ん……っ!!」
優しく、気遣うような口付け。
ただ触れただけだというのに、ルーナの唇はそれだけでじんとする。
唇とは、こんなにも敏感なものだっただろうか。
「……さすがの私も、その気になってしまいます」
まるで、言ってはならぬことを口にするように。
マクシミリアンが、小さな声で囁く。
耳にひっそりと吹き込まれるように告げられて、ルーナの体にさらに熱が回った。
「……っや……っ」
マクシミリアンの低い声がルーナの体を震わせる。妙な気持ちが体の奥底から湧き上がってくるのを感じた。
勝手に、下腹が甘く疼く。
びくりと震えたルーナの頭を、マクシミリアンが触れるだけのキスをしながらぎこちない仕草で撫でた。
「これは、貴女を助けるためです。他に意味なんてない」
まるで自分自身に言い聞かせるように、マクシミリアンが言う。
「貴女は嫌でしょうが……。今だけは私を、心を向ける相手だと思いなさい」
「ん、ん……っ」
(どういう、こと……?)
だけど、ルーナはもう何も考えられなかった。
頭を優しく撫でられるから、心地よくてたまらない。
嫌悪感なんてものはない。
ただ、食むように繰り返される口付けが、どうしようもなく気持ちいい。
こんなふうに感じるのは生まれて初めてだ。
(もっと、して欲しい……)
こんな願いを抱くなんて、また「はしたない」とマクシミリアンに言われてしまうかもしれない。
嫌われたら嫌だなと、ルーナはぼんやりと考える。
「できる限り優しくしますから、大人しく私に抱かれてください……」
マクシミリアンはそう言うと、触れるだけだった口付けを途端に深めた。
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