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一方その頃、一足先に王都を飛び立ったファルファルは、全速力で飛んで早くも南の砦に到着していた。
「ご苦労様! 戦況はどう?」
リリアナは、出迎えた見張り役の兵士に向かって問い掛けた。
「はい!『東の国』との国境付近で小競り合いが起きている模様です!」
「そう...父上は?」
「お屋形様は国境に、最前線に向かわれました!」
「分かった。ありがとう。私達も国境に向かうわ」
「ご武運を!」
「ファルファル、行って!」
「グエッ!」
一息吐く暇もなく再び飛び立ったファルファルの姿を、見張りの兵士は敬礼で見送った。
「殿下、大丈夫ですか?」
リリアナは病み上がりのクラウドを心配して声を掛けた。
「あぁ、大丈夫だ。アドレナリンが上がって来て、逆に体調が良くなりそうだよ」
クラウドはリリアナを心配させまいと、敢えて軽口を叩いていた。
「あ、見えて来ましたよ」
やがて前方に『東の国』との国境検問所が見えて来た。すると、その国境検問所のあちらこちらから煙が上がっているのが確認できた。
どうやら戦闘中なのは間違いないらしい。
「行きますよ、殿下!」
「おおよ!」
リリアナの気合いにクラウドが応える。二人は最前線に向かって飛び込んで行った。
◇◇◇
「ちょっと! ちょっと! ポチ、またなの!? いい加減にしてよね!」
同時刻、全速力で突っ走るポチがまたもや急減速した。そしてまたもやアマンダはつんのめりそうになり、恨みがましくポチに苦言を呈す。
だがポチはそんなアマンダの様子に気を回すことなく、今度は三つ首全てが上空を仰いでいた。
「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」
すると、そんな情けない悲鳴の方が先に聞こえて来たと思ったら、
「お、お助け~!」
次にそんな悲鳴を残し、物凄いスピードでなにかが飛び去って行った。
「あれはシオンと...マリウス殿下の声だったわね...」
「ウォン! ウォン!」
そうだと言わんばかりにポチが激しく尾を振った。止まった理由は、シオンのこともさることながら、大好きなマリウスの気配を察知したからというのが大きいのかも知れなかった。
「マリウス殿下が出ばって来たとなると...よっぽどの緊急事態が起きたってことよね...」
シオンが飛んで行った方角には北の砦がある。目的地はそこで間違いないだろう。アマンダは口唇を噛んだ。恐れていた事態が現実味を帯びて来る。
「こうしちゃいられないわ! ポチ! 最大スピードでお願い!」
「ウォン!」
走り出したポチは、これまで以上のスピードで疾駆し始めた。アマンダは必死にポチの背にしがみついた。
「ご苦労様! 戦況はどう?」
リリアナは、出迎えた見張り役の兵士に向かって問い掛けた。
「はい!『東の国』との国境付近で小競り合いが起きている模様です!」
「そう...父上は?」
「お屋形様は国境に、最前線に向かわれました!」
「分かった。ありがとう。私達も国境に向かうわ」
「ご武運を!」
「ファルファル、行って!」
「グエッ!」
一息吐く暇もなく再び飛び立ったファルファルの姿を、見張りの兵士は敬礼で見送った。
「殿下、大丈夫ですか?」
リリアナは病み上がりのクラウドを心配して声を掛けた。
「あぁ、大丈夫だ。アドレナリンが上がって来て、逆に体調が良くなりそうだよ」
クラウドはリリアナを心配させまいと、敢えて軽口を叩いていた。
「あ、見えて来ましたよ」
やがて前方に『東の国』との国境検問所が見えて来た。すると、その国境検問所のあちらこちらから煙が上がっているのが確認できた。
どうやら戦闘中なのは間違いないらしい。
「行きますよ、殿下!」
「おおよ!」
リリアナの気合いにクラウドが応える。二人は最前線に向かって飛び込んで行った。
◇◇◇
「ちょっと! ちょっと! ポチ、またなの!? いい加減にしてよね!」
同時刻、全速力で突っ走るポチがまたもや急減速した。そしてまたもやアマンダはつんのめりそうになり、恨みがましくポチに苦言を呈す。
だがポチはそんなアマンダの様子に気を回すことなく、今度は三つ首全てが上空を仰いでいた。
「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」
すると、そんな情けない悲鳴の方が先に聞こえて来たと思ったら、
「お、お助け~!」
次にそんな悲鳴を残し、物凄いスピードでなにかが飛び去って行った。
「あれはシオンと...マリウス殿下の声だったわね...」
「ウォン! ウォン!」
そうだと言わんばかりにポチが激しく尾を振った。止まった理由は、シオンのこともさることながら、大好きなマリウスの気配を察知したからというのが大きいのかも知れなかった。
「マリウス殿下が出ばって来たとなると...よっぽどの緊急事態が起きたってことよね...」
シオンが飛んで行った方角には北の砦がある。目的地はそこで間違いないだろう。アマンダは口唇を噛んだ。恐れていた事態が現実味を帯びて来る。
「こうしちゃいられないわ! ポチ! 最大スピードでお願い!」
「ウォン!」
走り出したポチは、これまで以上のスピードで疾駆し始めた。アマンダは必死にポチの背にしがみついた。
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