殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません

真理亜

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「国王陛下、恐れながら申し上げます。今回の式典には我が国のみならず、周辺各国の要人をも招待しております。それを今更延期するという訳にはいかないでしょう。国の威信に関わります。それに式典の後は、王宮の正面広場に抽選で集まった国民達を前にして、大々的にお披露目会を催す予定であります。国民達も楽しみにしておりますので、こちらも延期するというのは気の毒になります」

「あぁ、それは重々承知している。だからこそだ。安全を保障できない以上、各国の要人達や我が国の国民達を危険に晒す訳にはいかんだろう?」

「えぇ、それも良く理解した上で言っています。安全第一なのは言うまでもありませんが、それよりも何よりも魔族の脅威に屈したと思われる方が屈辱だと思っております故」

「全くもう...そなたが頑固なのは知っていたつもりだったがまさかここまでとはな...一体全体誰に似たのやら...」

 リヒャルトはため息を吐きながらそう呟いた。

「それはもちろん国王陛下...いえここは敢えて父上と呼ばせていただきますが、あなたに似たに決まってるじゃありませんか?」

 対してクラウドは、ちょっとハニカんだような笑顔を浮かべてそう言った。

「フゥ...やれやれ...これ以上は儂がなにを言ったとしても無駄か...仕方ない...クラウドよ、式典は予定通り行うものとして、警備を特に厳重に行え。それこそ猫の子一匹通さんくらいにな」

「心得ております」


◇◇◇


 翌日もミランダ達三人は各々で動いていた。だがなんの成果も上げられず、焦りだけが増して行くという状況に陥っていた。

 ミランダは上空から捜索するのを早々に諦め、マリウスと一緒に王都の廃屋を中心とした、人が隠れられそうな場所をしらみ潰しに当たっていた。

 アマンダは、比較的魅了の掛かりが薄かった近衛騎士団の団員達を治療していた。眠り続けている連中達はどうにもならないが、集中力が散漫になる程度の者達ならば、なんとかアマンダの力で治療が可能になるからだ。

「ミランダ、お疲れ様...どうやら芳しくないようね..」

「えぇ...空振りばっかりよ...」

 そして夜にはこうやってお互い報告し合うことにしているのだが、特に報告するようなことはなにも無かったりする。

「マリウス殿下は?」

「今、クラウド殿下の所に報告しに行ってるわ...なんの成果も無しっていう報告をね...」

「そう...立太子の式典の日ってもう来週よね...それまでにはなんとかケリを付けないと...」

「えぇ、分かってるわ...」
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