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「グエッ! グエッ!」

「あ、おじ様。ファルファルが戻って来たみたいですよ?」

 翌日の朝早く、南の砦にジャイアントファルコンであるファルファルの巨体が降り立った。また手紙を咥えている。

「ファルファル、ご苦労様」

 ミランダはファルファルの労を労った後、手紙を読んで顔を顰めた。

「なんだって?」

 やって来たライリーにミランダは無言で手紙を渡した。

「なるほど...魔族どもの狙いは王都だったのか...」

「えぇ、どうやらそのようです...なにを企んでいるのかまでは分かりませんが...」

「この主犯格であるカーミラってのに逃げられたってのは痛いな...」

「はい...」

 ミランダはカーミラの醸し出す妖艶さを思い出していた。カーミラがサキュバスとみて間違いないのだろう。

「おじ様、もしかしたらなんですが...いつまで経ってもリリアナが目を覚まさないのは、魅了を掛けたカーミラが野放しになっているせいかも知れません...」

「要するに...そのカーミラとやらを倒さない限り、リリアナが目を覚ますことはないと?」

「可能性はあります...なのでおじ様、私も王都に向かうことにします」

「あぁ、分かった...よろしく頼む...」


◇◇◇


「なに!? 目を覚まさないだと!?」

「はい...営倉にぶち込んだ団員全てが...」

 同じ頃、王都では近衛騎士団長の報告を受けていたクラウドが渋い顔をしていた。

「魅了の力を解除できないってことか?」

「いえ、魔道士達の話によりますと、解除には成功しているはずなのになぜか目を覚まさないらしく...」

「そうか...」

 どうやら南の砦からの連絡にあったリリアナと同じ症状のようだった。クラウドは頭を抱えた。こんな時、ミランダかアマンダが側に居てくれたらと願わずにはいられなかった。

「仕方ない...北と南の砦に連絡するしかないか...」

 クラウドはミランダかアマンダを王都に寄越してくれるようにと手紙を認め始めた。二人が共に王都を目指して移動していることを知る由もなく。


◇◇◇


 先に王都へと到着したのは、ケルベロスのポチに乗ったマリウスとアマンダだった。魔物に乗った二人は王都の正門で止められそうになったが、王家の紋章と辺境伯家の紋章を振り翳して押し通った。

「フゥ...なんとか着いたな...ポチ、お疲れさん」

「ウォンッ!」

 マリウスがポチの頭を撫でて労を労っていると、

「ね? 殿下、早かったでしょ?」

 アマンダは疲れた顔一つ見せずニッコリと微笑んだ。

「あぁ、確かに早かった...まさか北の砦からたったの二日で到着するなんてな...」

 馬車だと約一ヶ月は掛かる距離だと言われた。改めてケルベロスの健脚振りを実感したマリウスだった。

「さぁ、王宮に向かいましょう。クラウド殿下がお待ちでしょうから」
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