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「なんでまたそんな所に!? あっ! リリアナちゃんか!」

 アマンダも気付いたようだ。

「そう、リリアナのことが心配になって行ったんだと思う」

「なるほど...確かに有り得ますね...」

「だからすぐに戻ると思う。何事も無ければだけど」

「そうですね...ところで殿下」

 そこでアマンダは、未だにヘタり込んでいるケルベロスのポチの背中を優しく擦りながら、

「あんまりポチに無理をさせないでくださいね?」

 そう言ってマリウスを軽く睨み付けた。

「ハハハッ、済まん済まん。訓練に熱を上げ過ぎた。これからは少し手加減するよ」

「あぁ、いえいえ。そう意味じゃなくて」

 アマンダは頭を振ってこう続けた。

「私達はこの子に乗って王都に行くかも知れないからです」

「ポチに乗って!?」

 マリウスは首を傾げた。

「えぇ、今後の魔族の動向次第ではありますが、ミランダとシオンが共にここを離れられなくなる可能性が生じます。そうなったら、私達は馬車に乗って王都に向かわざるを得ない訳ですが、この子の方が馬より何倍も速く走れますし、馬よりも遥かにタフですから」

「あぁ、なるほど。理解したよ。それじゃあポチ、訓練はしばらくお休みしようか?」

「ワォンッ!」

 マリウスにそう言われたポチは、嬉しそうに一声鳴いて尻尾をブンブンと振った。


◇◇◇


 一方その頃、宿場町に到着したミランダは、真っ先に馬車のレンタル業者の所へと向かった。

 リリアナが馬を乗り替えるかも知れないと踏んだからだ。

「すいません、ちょっとお尋ねしたいことが...」

 ミランダはリリアナの容姿を説明し、こういった人物が馬を借りた形跡がないかどうか聞いてみた。

「いいや、そんなお嬢ちゃんに馬を貸した覚えはねぇなぁ」

 レンタル業者の男は首を捻りながらそう答えた。

「そうですか...」

 やはりまだリリアナはこの町に到着してはいないようだ。先回りに成功したと思ったミランダは、

「もしその人物が馬を借りたいと言って来たら、なんやかやと理由を付けて馬を貸さず、直ぐ様私に連絡して欲しいんですが...」

 そう言ってミランダは、男に幾ばくかの金を握らせた。

「そりゃ構わねぇが、お嬢ちゃんにはどうやって連絡取りゃいいんだい?」

「私はここから一番近いホテルに宿を取ります。ミランダという名前で泊まりますのでよろしくお願いします」

「あぁ、分かった。ミランダだな?」

 レンタル業者の所を後にしたミランダは、男に言った通り一番近いホテルに向かった。

 フロントで受付を済ませた後、念のためにここでも金を握らせてリリアナのことを聞いてみたが、やはり宿泊客の中には居ないようだった。
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