上 下
65 / 133

65

しおりを挟む
『は、はいぃ~!?』

 次の瞬間、二人の声がキレイにハモッた。

「オーッホホホッ! 貧乏人共、ザマァみさらせ! 世の中、金が全てなのよ~! オーッホホホッ!」

 そんな最低なセリフを吐きながら、まるで悪役令嬢のような高笑いを浮かべているのは、紛う事なき二人の知己であるリリアナその人だった。

「リリアナっ!? あんた一体なにやってんの!? ってか、なんでこんな所に居んのよ!?」

 ミランダは堪らず席から立ち上がってリリアナに詰問する。

「ゲェッ!? み、ミランダっ!? あ、あんたがなんでこの店に!?」

 リリアナはヤベェッて顔に出ている。

「聞いてんのはこっちよ! あんた、自分の仕事ほっぽり出してこんな所でなにしてんのって聞いてんのよ!」

 ミランダはリリアナの方にツカツカと歩み寄りながら詰問を続ける。その剣幕に、騒がしかった店内はいっぺんに静まり返ってしまった。

「え、え~とぉ...そ、そのぉ...」

 リリアナはタジタジになってしまった。目が完全に泳いでいる。

「ちょっと来なさい!」

 ここじゃ店に迷惑が掛かると判断したミランダは、リリアナの首根っこを引っ掴んで店から出そうとする。

「い、イヤァ! イヤよぉ~! せっかく指名料払ったのにぃ~! カーミラちゃ~ん!」

「やかましいわっ!」

 リリアナはまるで駄々を捏ねる子供のように抵抗したが、ミランダは有無を言わせなかった。そのままリリアナを引き摺るようにして、ミランダは足音荒く店を後にした。

「え、え~と...お騒がせして申し訳ない...」

 一人残されたマリウスは、恐縮しながら二人分の飲食代をテーブルの上に置いて、そそくさと店を後にした。

 そんな彼らの姿を、カーミラは怪しげな微笑みを浮かべながら静かに見詰めていた。


◇◇◇


「さて、一体どういうことなのか聞かせて貰おうかしら?」

 今、リリアナは店の外の道路上で正座させられている。その前には仁王立ちしたミランダが睨みを利かせていた。

「え、え~と...そ、そのですね...ど、どこから話せばいいものやら...」

「最初っから始めて終わりまで話せばいいのよ」

 ミランダは至極当然のことを言った。

「え、え~と...は、始まりは...」

 リリアナは順を追って話し始めた。曰く、南の砦のお膝元にある町中で最近、メイド喫茶なる店が流行っているらしく、砦に常駐している兵達の間でも噂になっていた。

 その内、非番の時などに興味本位で店に行ってみようと思う兵達が現れ始めた。するとその兵達はいっぺんでメイド喫茶の虜になってしまった。そしてその数は次第に増えて行った。

 やがて南の砦では訓練中に集中を欠き、怪我をする兵達が続出するようになって行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?

カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。 フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。

お姉さまとの真実の愛をどうぞ満喫してください

カミツドリ
ファンタジー
「私は真実の愛に目覚めたのだ! お前の姉、イリヤと結婚するぞ!」 真実の愛を押し通し、子爵令嬢エルミナとの婚約を破棄した侯爵令息のオデッセイ。 エルミナはその理不尽さを父と母に報告したが、彼らは姉やオデッセイの味方をするばかりだった。 家族からも見放されたエルミナの味方は、幼馴染のローレック・ハミルトン公爵令息だけであった。 彼女は家族愛とはこういうものだということを実感する。 オデッセイと姉のイリヤとの婚約はその後、上手くいかなくなり、エルミナには再びオデッセイの元へと戻るようにという連絡が入ることになるが……。

聖女は祖国に未練を持たない。惜しいのは思い出の詰まった家だけです。

彩柚月
ファンタジー
メラニア・アシュリーは聖女。幼少期に両親に先立たれ、伯父夫婦が後見として家に住み着いている。義妹に婚約者の座を奪われ、聖女の任も譲るように迫られるが、断って国を出る。頼った神聖国でアシュリー家の秘密を知る。新たな出会いで前向きになれたので、家はあなたたちに使わせてあげます。 メラニアの価値に気づいた祖国の人達は戻ってきてほしいと懇願するが、お断りします。あ、家も返してください。 ※この作品はフィクションです。作者の創造力が足りないため、現実に似た名称等出てきますが、実在の人物や団体や植物等とは関係ありません。 ※実在の植物の名前が出てきますが、全く無関係です。別物です。 ※しつこいですが、既視感のある設定が出てきますが、実在の全てのものとは名称以外、関連はありません。

婚約破棄ですか? ありがとうございます

安奈
ファンタジー
サイラス・トートン公爵と婚約していた侯爵令嬢のアリッサ・メールバークは、突然、婚約破棄を言われてしまった。 「お前は天才なので、一緒に居ると私が霞んでしまう。お前とは今日限りで婚約破棄だ!」 「左様でございますか。残念ですが、仕方ありません……」 アリッサは彼の婚約破棄を受け入れるのだった。強制的ではあったが……。 その後、フリーになった彼女は何人もの貴族から求愛されることになる。元々、アリッサは非常にモテていたのだが、サイラスとの婚約が決まっていた為に周囲が遠慮していただけだった。 また、サイラス自体も彼女への愛を再認識して迫ってくるが……。

義妹がいつの間にか婚約者に躾けられていた件について抗議させてください

Ruhuna
ファンタジー
義妹の印象 ・我儘 ・自己中心 ・人のものを盗る ・楽観的 ・・・・だったはず。 気付いたら義妹は人が変わったように大人しくなっていました。 義妹のことに関して抗議したいことがあります。義妹の婚約者殿。 *大公殿下に結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい、の最後に登場したアマリリスのお話になります。 この作品だけでも楽しめますが、ぜひ前作もお読みいただければ嬉しいです。 4/22 完結予定 〜attention〜 *誤字脱字は気をつけておりますが、見落としがある場合もあります。どうか寛大なお心でお読み下さい *話の矛盾点など多々あると思います。ゆるふわ設定ですのでご了承ください

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

婚約破棄された娘の結婚相手を探しただけなのに ~ 令嬢の婚活は、まさに命がけです ~

甘い秋空
恋愛
 娘が第一王子から婚約破棄されました。夫の喪が明けるまでに、跡取りを決めないと、伯爵家は取り潰しになります。   母は、娘の婿を探して奔走しますが、第一王子が起こす騒ぎに巻き込まれ…… (全14話完結)

処理中です...