上 下
23 / 133

23

しおりを挟む
 マリウスが引き摺られて行ったのと入れ違いに、

「ただいま~...あぁ、疲れた~...」

 ミランダをちょっと成長させたような感じの、成熟した色気を漂わせる美女が疲れ切った表情を浮かべながらやって来た。

「あ、ママ。お帰り~」

「おば様、ご無沙汰してます」

「あら!? リリアナちゃんじゃないの!? どうしたの!? ウチに来るなんて珍しいじゃない!?」

「えぇ、実は...」

 リリアナが応えようとした時、

「おぉっ! 我が愛する妻アマンダよ! よくぞ戻った!」

 ガストンが突進するような勢いで飛んで来て熱烈なハグをしようとする。

「あぁ、はいはい。暑苦しいから後でね」

 それをミランダと同じように華麗に躱したアマンダは、何事もなかったかのようにリリアナに向き直った。

「アハハ、相変わらずですね...」 
 
 リリアナは苦笑するしかなかった。

「まぁね。愛情が重過ぎるのよ。それで?」

「あぁ、はい。実は...」

 リリアナは改めてここに来た経緯をアマンダに説明した。

「ふうん、なるほどねぇ...南の蛮族に魔族の関与有りか...どうにもキナ臭くなって来たわね」

「えぇ、同感です」

「この件、国王陛下はご存知なの?」

「はい、既に報告済みです」

「そう。ならその内に我が家の方にもなにかお達しがありそうね」

「えぇ、そう思います。もしかしたら、南と北で合同軍を組んで戦うことになるかも知れません。その時はよろしくお願いします」

「分かったわ。でもまずはゆっくり休ませて貰うわね...」

「ママ、また徹夜したの?」

 ミランダが非難めいた目を向ける。

「えぇ、まぁ...」

「無理しないでっていつも言ってるのに...」

「しょうがないじゃない...負傷者がひっきりなしにやって来るんだから...」

 アマンダは治癒魔法士だ。病院の院長を勤めている。魔族軍との戦いで負傷した兵士を治療するため、何日も病院に泊まり込むなどザラなのだ。

「それにしたって無理し過ぎよ? もう若くないんだから...」

「失敬ね! まだ私は40前だっての! ピチピチだっての!」

「はいはい...」

 リリアナはそんな親娘の気の置けないやり取りを微笑ましく見守っていた。実際、ミランダとアマンダが並んで立っている時、間違っても親娘に見られないということは有名な話だ。どう見ても姉妹にしか見えない。

 ミランダは口では辛辣なことを言っているが、本心ではいつまでも若々しい母親を誇りに思っていることも良く知っている。

 リリアナの母親はリリアナを産んですぐ儚くなってしまったので、こういった親娘のやり取りを羨ましく、そしてちょっぴり寂しく思って眺めていたのだった。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!

桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。 令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。 婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。 なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。 はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの? たたき潰してさしあげますわ! そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます! ※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;) ご注意ください。m(_ _)m

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?

カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。 フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。

お姉さまとの真実の愛をどうぞ満喫してください

カミツドリ
ファンタジー
「私は真実の愛に目覚めたのだ! お前の姉、イリヤと結婚するぞ!」 真実の愛を押し通し、子爵令嬢エルミナとの婚約を破棄した侯爵令息のオデッセイ。 エルミナはその理不尽さを父と母に報告したが、彼らは姉やオデッセイの味方をするばかりだった。 家族からも見放されたエルミナの味方は、幼馴染のローレック・ハミルトン公爵令息だけであった。 彼女は家族愛とはこういうものだということを実感する。 オデッセイと姉のイリヤとの婚約はその後、上手くいかなくなり、エルミナには再びオデッセイの元へと戻るようにという連絡が入ることになるが……。

聖女は祖国に未練を持たない。惜しいのは思い出の詰まった家だけです。

彩柚月
ファンタジー
メラニア・アシュリーは聖女。幼少期に両親に先立たれ、伯父夫婦が後見として家に住み着いている。義妹に婚約者の座を奪われ、聖女の任も譲るように迫られるが、断って国を出る。頼った神聖国でアシュリー家の秘密を知る。新たな出会いで前向きになれたので、家はあなたたちに使わせてあげます。 メラニアの価値に気づいた祖国の人達は戻ってきてほしいと懇願するが、お断りします。あ、家も返してください。 ※この作品はフィクションです。作者の創造力が足りないため、現実に似た名称等出てきますが、実在の人物や団体や植物等とは関係ありません。 ※実在の植物の名前が出てきますが、全く無関係です。別物です。 ※しつこいですが、既視感のある設定が出てきますが、実在の全てのものとは名称以外、関連はありません。

婚約破棄ですか? ありがとうございます

安奈
ファンタジー
サイラス・トートン公爵と婚約していた侯爵令嬢のアリッサ・メールバークは、突然、婚約破棄を言われてしまった。 「お前は天才なので、一緒に居ると私が霞んでしまう。お前とは今日限りで婚約破棄だ!」 「左様でございますか。残念ですが、仕方ありません……」 アリッサは彼の婚約破棄を受け入れるのだった。強制的ではあったが……。 その後、フリーになった彼女は何人もの貴族から求愛されることになる。元々、アリッサは非常にモテていたのだが、サイラスとの婚約が決まっていた為に周囲が遠慮していただけだった。 また、サイラス自体も彼女への愛を再認識して迫ってくるが……。

義妹がいつの間にか婚約者に躾けられていた件について抗議させてください

Ruhuna
ファンタジー
義妹の印象 ・我儘 ・自己中心 ・人のものを盗る ・楽観的 ・・・・だったはず。 気付いたら義妹は人が変わったように大人しくなっていました。 義妹のことに関して抗議したいことがあります。義妹の婚約者殿。 *大公殿下に結婚したら実は姉が私を呪っていたらしい、の最後に登場したアマリリスのお話になります。 この作品だけでも楽しめますが、ぜひ前作もお読みいただければ嬉しいです。 4/22 完結予定 〜attention〜 *誤字脱字は気をつけておりますが、見落としがある場合もあります。どうか寛大なお心でお読み下さい *話の矛盾点など多々あると思います。ゆるふわ設定ですのでご了承ください

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

婚約破棄された娘の結婚相手を探しただけなのに ~ 令嬢の婚活は、まさに命がけです ~

甘い秋空
恋愛
 娘が第一王子から婚約破棄されました。夫の喪が明けるまでに、跡取りを決めないと、伯爵家は取り潰しになります。   母は、娘の婿を探して奔走しますが、第一王子が起こす騒ぎに巻き込まれ…… (全14話完結)

処理中です...