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「そんなことになっていたんだ...」

 クラウドから話を聞いたマリウスは、北の砦のみならず南の砦にまで影響を与えている魔族という存在に戦いた。

「そういう訳でやって来たところなんだが、ミランダ。魔族の真意を確認するにはやっぱり魔王に直接聞くしかないよな?」

 クラウドは次にミランダへ向き直って尋ねた。

「まぁそうなるでしょうね」

「会えるかな?」

「今日は無理です。さっき私の最大魔法で地の果てまで吹っ飛ばしましたから。明日にならないと戻って来ませんね」

 ミランダはなんでもないことのようにケロッとそう言った。

「そ、そうなんだ...さすがは精霊の愛し子...」

 クラウドは若干引いた。

「それでですね、マリウス殿下。ちょっと言い難いことが...」

 ミランダは先程の魔王とのやり取りを話して聞かせた。 

「ふ、ふぇ...ま、魔王に俺のことを知られたって...」

「えぇ、会わせろ会わせろって五月蝿いんですが、どうします? 会ってみます?」

 マリウスは真っ青な顔色になってプルプルと首を横に振った。

「ですよね。分かりました。なんとか誤魔化してみることにします」

 マリウスは「頼んだよ!」という意味を込めて、今度はコクコクと首を縦に振った。

「明日までは無理かぁ。なら仕方ない。ミランダ、申し訳ないけど今日泊めて貰える?」

 そう言ってリリアナはお祈りのポーズを取った。

「えぇ、構わないわ。久し振りに朝まで語り合いましょう」

「いいわね!」

「あぁ、ミランダ。出来れば俺はマリウスと同部屋で頼むよ。こっちも男同士でたっぷりと語り合いたいんだ」

「分かりました」

 クラウドにそう言われたマリウスは頭を抱えた。今夜は一晩中お説教コースになることが確定したからだ。


◇◇◇
 

「あれ!? ファルファルが居ない!?」

 話を終えてジャイアントファルコンの元に戻って来たリリアナは首を傾げた。

「リリアナ、上よ」

 ミランダは空中を指差す。

「クエッ!」

「グオッ!」

 そこには空中戦を繰り広げる二頭の獣の姿があった。

「あぁ、また始まった...『最速は俺だ!』レースが...あの子達、顔を合わせる度にやり合うわよねぇ...」

 リリアナがため息を吐きながらしみじみと呟くと、

「そうね。ファルファルも懲りないわよね。スピードでシオンに敵う訳が無いのに」

 ミランダのその言葉にリリアナはカチンと来た。

「ちょっと! 聞き捨てならないんですけど! ジャイアントファルコンが最速に決まってるじゃない!」

「そっちこそ! 寝言は寝てから言いなさいな! 飛竜が最速に決まってるじゃない!」

「なんですって! ウチの子が一番だって言ってるじゃないの!」

「なによ! ウチの子に敵う訳が無いって言ってるでしょ!」

「二人ともいい加減にしてくれないか...」

 今にも一触即発になりそうな親バカ二人に、疲れ果てたような声でクラウドが割って入った。
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