270 / 276
270
しおりを挟む
『お嬢様!』
ちょうどお医者様と入れ替わるようなタイミングで、セバスチャンとカイルがほぼ同時にアランの病室へとやって来た。相変わらずシンクロしている。
二人とも着替えは済ませたみたいで身なりは整っているが、頭や両腕などに巻かれた包帯がとても痛々しい。
「あなた達! 安静にして寝てなきゃダメじゃないの!」
私は思わず叱り飛ばしたのだが、
『寝てなんかいられませんよ!』
またもやシンクロでそう返された。もはや名人芸の域なんじゃね?
「全くもう...気持ちは良く分かるけど、あなた達二人が付いてたって状況は変わらないわ。寧ろ病室が狭く感じて息苦しくなるから大人しく自分の病室に戻りなさい。アランには私が付いていればいいから」
『し、しかし...』
「しかしも案山子もない。これは命令よ?」
『わ、分かりました...』
二人は渋々といった体で下がって行った。最後までシンクロしてたな。
「フゥ...」
さすがにちょっと疲れた...私はアランの手を握り締めながら大きなため息を一つ吐いた。
◇◇◇
「...様、嬢様...」
「う~ん...」
なんだろう? 誰かに呼ばれているような? 誰だろう?
「お嬢様!」
「ハッ!?」
「お嬢様! こんな体勢で寝たら体に良くありません! ちゃんとベッドで横になってお休みください!」
どうやら私はアランの手を握り締めた状態のまま寝落ちしていたらしい。起こしてくれたシェイラが心配そうに覗き込んでいる。
「あぁ、シェイラ...大丈夫、大丈夫だから...」
「全然大丈夫じゃありませんよ! お嬢様、酷いお顔になっていますよ!? お願いですから休んでください! アランさんにはこのシェイラが付いていますから!」
「酷い顔ってあなたね...」
なかなか言うじゃないか。まぁでも、多少の自覚はあるんだけどね。きっと鏡を見たら自分でもビックリするくらいに、今の私は疲れ切った顔をしていることなんだろう。
「ちょっと顔洗ってくるわ...」
私はヨロヨロと立ち上がりながら洗面所に向かおうとした。
「た、大丈夫ですか!? お嬢様!?」
すかさずシェイラが体を支えてくれた。
「あぁ、ありがとう...」
「洗面所までお供致しましょうか?」
「大丈夫...大丈夫...一人で平気だから...」
私はヒラヒラと手を振ってアランの病室を後にした。
「アンリエットお嬢様」
病室を出てすぐの所でネオに呼び止められた。
「うん~!? ネオ~!? どうしたの~!?」
私はまだ良く回っていない頭でボンヤリと尋ねた。
「危険です。病室にお戻りください。カスパート家の手の者が病院内に侵入した形跡があります」
「な、なんですって!?」
私の頭は一瞬で覚醒した。
ちょうどお医者様と入れ替わるようなタイミングで、セバスチャンとカイルがほぼ同時にアランの病室へとやって来た。相変わらずシンクロしている。
二人とも着替えは済ませたみたいで身なりは整っているが、頭や両腕などに巻かれた包帯がとても痛々しい。
「あなた達! 安静にして寝てなきゃダメじゃないの!」
私は思わず叱り飛ばしたのだが、
『寝てなんかいられませんよ!』
またもやシンクロでそう返された。もはや名人芸の域なんじゃね?
「全くもう...気持ちは良く分かるけど、あなた達二人が付いてたって状況は変わらないわ。寧ろ病室が狭く感じて息苦しくなるから大人しく自分の病室に戻りなさい。アランには私が付いていればいいから」
『し、しかし...』
「しかしも案山子もない。これは命令よ?」
『わ、分かりました...』
二人は渋々といった体で下がって行った。最後までシンクロしてたな。
「フゥ...」
さすがにちょっと疲れた...私はアランの手を握り締めながら大きなため息を一つ吐いた。
◇◇◇
「...様、嬢様...」
「う~ん...」
なんだろう? 誰かに呼ばれているような? 誰だろう?
「お嬢様!」
「ハッ!?」
「お嬢様! こんな体勢で寝たら体に良くありません! ちゃんとベッドで横になってお休みください!」
どうやら私はアランの手を握り締めた状態のまま寝落ちしていたらしい。起こしてくれたシェイラが心配そうに覗き込んでいる。
「あぁ、シェイラ...大丈夫、大丈夫だから...」
「全然大丈夫じゃありませんよ! お嬢様、酷いお顔になっていますよ!? お願いですから休んでください! アランさんにはこのシェイラが付いていますから!」
「酷い顔ってあなたね...」
なかなか言うじゃないか。まぁでも、多少の自覚はあるんだけどね。きっと鏡を見たら自分でもビックリするくらいに、今の私は疲れ切った顔をしていることなんだろう。
「ちょっと顔洗ってくるわ...」
私はヨロヨロと立ち上がりながら洗面所に向かおうとした。
「た、大丈夫ですか!? お嬢様!?」
すかさずシェイラが体を支えてくれた。
「あぁ、ありがとう...」
「洗面所までお供致しましょうか?」
「大丈夫...大丈夫...一人で平気だから...」
私はヒラヒラと手を振ってアランの病室を後にした。
「アンリエットお嬢様」
病室を出てすぐの所でネオに呼び止められた。
「うん~!? ネオ~!? どうしたの~!?」
私はまだ良く回っていない頭でボンヤリと尋ねた。
「危険です。病室にお戻りください。カスパート家の手の者が病院内に侵入した形跡があります」
「な、なんですって!?」
私の頭は一瞬で覚醒した。
23
お気に入りに追加
3,452
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
【完結】お前なんていらない。と言われましたので
高瀬船
恋愛
子爵令嬢であるアイーシャは、義母と義父、そして義妹によって子爵家で肩身の狭い毎日を送っていた。
辛い日々も、学園に入学するまで、婚約者のベルトルトと結婚するまで、と自分に言い聞かせていたある日。
義妹であるエリシャの部屋から楽しげに笑う自分の婚約者、ベルトルトの声が聞こえてきた。
【誤字報告を頂きありがとうございます!💦この場を借りてお礼申し上げます】
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
大切なあのひとを失ったこと絶対許しません
にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。
はずだった。
目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う?
あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる?
でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの?
私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる