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「なんと言うか...パワフルだよな...」
アランが言葉を選ぶようにそう言った。
「色んな意味でね...」
私は呆れたようにそう言った。
「取り敢えず返事を書くか...アラン、書き終わったら届けてくれる?」
「あいよ」
結局その日は夜まで、エリザベートと兄の姿を見ることはなかった。いや、どんだけお盛んなんだよお前ら...
夕食の席でテカテカとやたら肌艶の良いエリザベートと対照的に、枯れ木のようにゲッソリと痩せ細った兄の姿を、私は極力見ないようにしていた...
◇◇◇
次の日、仕事をしているとアランがやって来た。ちなみにバカップルの姿は朝から見てない。私はもう気にしないことにした。勝手に盛ってろ。
「お嬢、ちょっといい?」
「なに?」
「パトリックのヤツがお詫びに来た」
「そう。客間に通して。後から行くわ」
「分かった」
仕事に一区切り付けてから客間に行くと、
「ママ~! ママ~!」
マックスが飛び付いて来た。
「マックス! 元気そうで良かったわ!」
私はマックスを抱き上げて頬ずりした。ママ呼ばわりも今日だけは気にならない。
客間にはウィリアムとパトリックが並んで立っていた。パトリックはかなり痩せたようだ。苦労が偲ばれる。
「アンリエット、本当にありがとう。君のお陰で兄貴と再会できたよ」
そう言ってウィリアムが頭を下げた。パトリックも同じように頭を下げる。
「良かったわね。安心したわ」
「さぁマックス、これからパパ達は大人の話があるんで、向こうに行って遊んでいような?」
ウィリアムはそう言ってマックスを私から引き取った。マックスはちょっとグズっていたが、大人しく従って行った。
ウィリアムとマックスが席を外した後、やおらパトリックが土下座した。
「...アンリエット、本当に申し訳なかった...どんなことをされても文句は言えない...煮るなり焼くなりどうか好きにしてくれ...」
「顔を上げなさい、パトリック。私から言うことは一つだけよ。父親としてマックスをちゃんと育て上げなさい。仕事なら世話してあげるから。ウィリアムと同じ職場よ。二人してしっかり働くように」
「...ありがとう...本当にありがとう...」
「そういえば、国の査察の方はどうなったの?」
「...あぁ、お陰様で厳重叱責と社会奉仕の罰で済んだよ...」
「社会奉仕って?」
「...街の清掃だ...」
「そう。その程度で済んでラッキーだったわね。しっかりお勤めを果たすのよ?」
「...あぁ、もちろんだ...」
アランが言葉を選ぶようにそう言った。
「色んな意味でね...」
私は呆れたようにそう言った。
「取り敢えず返事を書くか...アラン、書き終わったら届けてくれる?」
「あいよ」
結局その日は夜まで、エリザベートと兄の姿を見ることはなかった。いや、どんだけお盛んなんだよお前ら...
夕食の席でテカテカとやたら肌艶の良いエリザベートと対照的に、枯れ木のようにゲッソリと痩せ細った兄の姿を、私は極力見ないようにしていた...
◇◇◇
次の日、仕事をしているとアランがやって来た。ちなみにバカップルの姿は朝から見てない。私はもう気にしないことにした。勝手に盛ってろ。
「お嬢、ちょっといい?」
「なに?」
「パトリックのヤツがお詫びに来た」
「そう。客間に通して。後から行くわ」
「分かった」
仕事に一区切り付けてから客間に行くと、
「ママ~! ママ~!」
マックスが飛び付いて来た。
「マックス! 元気そうで良かったわ!」
私はマックスを抱き上げて頬ずりした。ママ呼ばわりも今日だけは気にならない。
客間にはウィリアムとパトリックが並んで立っていた。パトリックはかなり痩せたようだ。苦労が偲ばれる。
「アンリエット、本当にありがとう。君のお陰で兄貴と再会できたよ」
そう言ってウィリアムが頭を下げた。パトリックも同じように頭を下げる。
「良かったわね。安心したわ」
「さぁマックス、これからパパ達は大人の話があるんで、向こうに行って遊んでいような?」
ウィリアムはそう言ってマックスを私から引き取った。マックスはちょっとグズっていたが、大人しく従って行った。
ウィリアムとマックスが席を外した後、やおらパトリックが土下座した。
「...アンリエット、本当に申し訳なかった...どんなことをされても文句は言えない...煮るなり焼くなりどうか好きにしてくれ...」
「顔を上げなさい、パトリック。私から言うことは一つだけよ。父親としてマックスをちゃんと育て上げなさい。仕事なら世話してあげるから。ウィリアムと同じ職場よ。二人してしっかり働くように」
「...ありがとう...本当にありがとう...」
「そういえば、国の査察の方はどうなったの?」
「...あぁ、お陰様で厳重叱責と社会奉仕の罰で済んだよ...」
「社会奉仕って?」
「...街の清掃だ...」
「そう。その程度で済んでラッキーだったわね。しっかりお勤めを果たすのよ?」
「...あぁ、もちろんだ...」
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♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
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