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「それにちょうどいいじゃないの♪ あなたもやっと良い相手に巡り合えたみたいだし♪ どうせなら合同結婚式とかやっちゃいましょうよ♪」

「バッ! お、おま! な、なんつーことを!」

 いきなりこっちに飛び火したことで私は大慌てになった。チラッとアランの方を見ると茹で蛸みたいに真っ赤になっている。

 きっと私もトマトみたいに真っ赤になっているんだろうなと思うと、急に恥ずかしくなって来た。

「ぬわんだとぉ~! おい、アンリ! そんな相手が居るのか!? どこの馬の骨だ! 俺は許さんぞ! これ以上お前を不幸にさせてなるもんか! そいつに会わせろ! ぶん殴ってやる!」

 あ、兄が復活した。

「アランよ♪」

「へっ!?」

「だからお相手はアランよ♪」

 あ、兄が固まった。そしてギギギと音が鳴りそうなゆっくりとしたスピードで首を巡らせアランを見やる。

 さっきまで真っ赤だったアランの顔色が、一瞬にして真っ青になってしまった。

「貴様かぁ~!」

 アランへと踊り掛かろうとした兄だったが、下半身がヘロヘロなもんで途中で足が縺れてコケた。

「へぶっ!」

 馬車に轢かれたヒキガエルみたいになった兄の姿を見た私は、

「プププッ!」

 カオスな状況も忘れて思わず吹き出してしまった。

「あらあらまぁまぁ♪ 全くもう♪ 旦那様ったらぁ♪ しょうがないわねぇ♪」

 エリザベートはまるで聖母みたいな微笑みを浮かべながら兄に近付き、優しくお姫さま抱っこしてあげてた...って、いやいや、おかしいだろ! 普通逆だろ! あとお前、旦那様なんて言うタイプじゃねぇだろ!

「後は若い二人でゆっくり話し合ってね♪ 私達はこれから夫婦の時間だからぁ♪」

 そう言ってエリザベートは、大の大人の男を抱き上げているとはとても思えない軽やかな足取りで食堂を出て行った。それを私とアランは呆気に取られながら見送った。

「あう...おう...」

 兄は力なく呟くだけでなにも抵抗できなかった。その内、兄は全ての精気を吸い取られて即身仏になるかも知れないな...兄よ、安らかに眠れ...骨は拾ってやるよ...御愁傷様...チーン...

 そして私はアランと二人っきりで取り残された訳だが、微妙な空気になる前に私の胃が悲鳴を上げた。どんな時だって腹は減るものだ。

「アラン、お腹空いた」

 私はミイラになるのも即身仏になるのもゴメンなので、まずは腹ごしらえだ。兄の分も食べて元気になんないとね。

「あいよ。ちょっと待ってて」

 色々と察してくれたのか、アランもいつも通りに対応してくれたのがありがたかった。

 

 
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