我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します！

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「最近、彼冷たいの...」

　急にエリザベートが目を伏せてしおらしくなった。だがこれが演技だと分かっている私は、話半分に聞いてやることにした。

「は～」

「いつ行っても『忙しい忙しい』の一点張りでロクに話もしてくれないの...」

「ひ～」

「それに最近は留守がちで...しょっちゅうどこかへ出掛けてるみたいなの...」

「ふ～」

「きっと他に好きな女が出来たんだわ...そうに違いない...」

「へ～」

「私、どうしたらいいのかしら...悲しいわぁ...シクシク...」

「ほ～」

「ちょっと!　アンリエット!　なによその気の抜けた返事は!　あんまりじゃないの!　人がこんなに悩んでいるっていうのにぃ～!」

「あ、一人芝居終わった?」

「芝居だなんて酷いわぁ!」

「いやいや、それって完全にベンジャミンの言い分じゃん?　立場を逆転させただけっしょ?」

「なんでバレたし...」

「バレいでか!　そりゃあんなにしょっちゅうウチの領地まで来てりゃそうなるわ!　ベンジャミンが気の毒だよ!」

「だってしょうがないじゃないのよ。ウチの家のドタバタだったんだから」

「それ、ベンジャミンにはちゃんと説明したの?」

「言える訳ないじゃない。ウチの恥を晒すようなもんだもん」

「そりゃそうかも知んないけどさぁ、赤の他人って訳じゃないんだから、ちょっとくらい説明してあげたって良かったんじゃないの?　そうすればベンジャミンも疑心暗鬼になることもなかっただろうし」

「赤の他人よ」

　エリザベートがそう言い切ったんで、

「えぇっ!?　だって婚約者でしょ!?」

　私は目を丸くした。

「えぇ、だから赤の他人よ。まだ結婚してないんだから」

「うわぁ...なんてドライな考え方...」

　私は若干引いた。

「あら?　あなただってそうだったでしょ?　ギルバートになんでもかんでも全て話してた?」

「うぐっ...そう言われると...」

　痛い所を突かれた...確かに私もギルバートには兄の件も含め、大事なことはなにも話していなかったな...

「ほ～ら、人のこと言えないじゃな～い」

　エリザベートのドヤ顔がめっちゃウザいが、私はなにも言い返せなかった。悔しい...

「そういう訳で、私とベンジャミンとの仲は冷え切ってしまったの...メソメソ...」

「あ?　まだ続けんの?」

　もうお腹一杯なんだけど...

「でも大丈夫。悲しくなんかないわ。だって私にはダーリンが居るんだから♪」

「だからちょっと待てい!　いつの間にダーリンに格上げされてんだぁ!」

　叫び過ぎて私の喉はカラカラに干上がってしまった...