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 翌日の午前中、アランがウィリアムを連れて戻って来た。

 私は極力アランの方を見ないようにして、ウィリアムに集中することにした。

「ウィリアム、久し振りね」

「アンリエット...」

 客間に通されたウィリアムは、ちょっと見ない間に精悍さが増したように見える。潮風に晒されて日焼けしたせいだろうか。

「話は聞いた?」

「あぁ、彼から聞いた...」

「そう。なら話は早いわね。ウィリアム、あなたとあなたの両親のせいでお家は断絶、パトリックは行方不明になってるわ。あなたはこの状況をどう思ってる? どう責任を取るつもり?」

「俺は...正直どうしたらいいのか分からない...」

「責任を取りたいって気持ちはある?」

「あぁ、俺が出来ることならなんでもしたい...」

「そう。あなたの覚悟は良く分かったわ。ハンス、マックスをここに連れて来て頂戴」

「畏まりました」

 ややあってオドオドと怯えた様子のマックスがハンスに手を引かれてやって来た。

「マックス、この人はあなたの叔父さん当たる人よ」

「叔父さん!?」

「えぇ、そう。あなたのパパの弟なのよ」

「弟...」

「どことなくパパに似てるでしょ?」

「確かに...」

「やぁ、マックス...初めまして...俺の名はウィリアムだ。お前の叔父さんだよ」

「初めまして...」

「マックス、あなたは今日からこの叔父さんと一緒に暮らすのよ」

「叔父さんと!?」

「えぇ、そうよ」

「ママは!?」

「ごめんなさいね、マックス。私はあなたのママにはなれないの」

「そ、そんなぁ...ぼ、僕、ママと一緒がいい...」

「分かって頂戴、マックス。それは無理なの。あなたには血の繋がった叔父さんが居るんだから。叔父さんと一緒に暮らす方があなたのためなのよ」

「グスグスッ! ヤダヤダヤダ~! ママと一緒がいい~! ウエ~ン!」

 ついにマックスは泣き出してしまった。私も心が痛むが、ここは心を鬼にして突き放すしかない。

「なにやってんの、ウィリアム! 抱き締めてあやしてあげなさい!」

「あ、あぁ、分かった...おぉ、良し良し。マックス、良い子だから泣かないで...」

 ウィリアムはぎこちないまでも懸命にマックスをあやしている。これならきっと大丈夫だろう。

「ウィリアム、慣れるまでは今マックスに付けているベビーシッターさんを引き続き付けてあげるわ。仕事と住む所も世話してあげる」

「アンリエット、何から何まで済まない...」

「その代わり、マックスをぞんざいに扱ったりしたらタダじゃおかないわよ? 良く覚えておきなさい?」

「肝に銘じておくよ...」
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