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 お昼過ぎ、ようやくハンスが戻って来た。

「お嬢様、遅くなりまして申し訳ございません」

「ううん、いいのよ。本当にご苦労様。それでどうだった?」

「はい、どうやら国の査察が入ったようです」

「あぁ、なるほど...」

 マックスの言ってた、制服に帽子を被った男達というのは近衛の連中のことか。

「理由はやっぱり先代の?」

「はい、先代様の数々の愚行は領民達から密告されていたそうです。それで国はずっと内偵を進めていて、証拠が固まったのでついに査察と相成ったそうです」

「そうだったのね...それで? ヘンダーソン子爵家としてはどういう処分になったの?」

「お家はお取り潰し。財産は全て没収という厳しい処分が下ったそうです」

「そうなのね...」

 マックス曰く、パトリックが言っていたという『もうこの家には住めなくなった』っていうのはこういう意味だったのか...大いに納得した。

 だが困ったな...パトリックが出奔した理由は分かったが、問題はなに一つ解決していない。

 マックスの処遇をどうするか? 一番良いのは、マックスの親戚に当たるウィリアムに引き取って貰うことだが、ヤツは今海の上で連絡が取れない。

 となると他の親戚ってことになるが、そこで私はハタと気付いた。

「ねぇ、ハンス。ヘンダーソン子爵家の先代夫妻ってどこに居るか分かる?」

 考えてみれば、マックスを任せられるもっと近い近親者が居るじゃないか。マックスは自分達の孫に当たるんだ。きっと無下に扱ったりはしない...と思いたいが...

「事情聴取のため国に拘束されました」

 ダメじゃん!

「ちなみにパトリック殿も拘束しようとしたみたいですが、先代様方を拘束している隙に逃げ出したそうです」

 自分の両親を人身御供にしやがった!

「それで子を連れての逃避行をしてたって訳か...まぁ、自分の子を、マックスを置き去りにしなかった。その一点だけは認めてやってもいいけど、なんでウチを頼って来たのかしら? 他に頼れそうな親戚とかなかったのかしらね?」

「聞く所によると、どうもヘンダーソン子爵家は親戚一同から爪弾きにされていたみたいです。先代の評判は地に落ちていたみたいですな」

 ダメダメじゃん! 

 しかも以前パトリック自身が言っていたように、社交にも精を出していなかったみたいだから、他の貴族家を頼りたくても伝手がなかったってことか。

 そんで最後に残ったのがウチだったという訳だな...全ての理由は明らかになったがなんてハタ迷惑な...

 私はこれからどうしようかと頭を悩ませた。


 
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