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118 (第三者視点)

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 パトリックはまだアンリエットのことを諦め切れないでいた。

 もう一度会いたいと思ったが、二度と顔を見せるなと言われた手前、屋敷に赴いても門前払いされて終わりだろう。

 ではどうするか? 待ち伏せするしかない。そう、ウィリアムがやっていたように。この二人、実の兄弟だけあって思考回路が同じなのだった。

 そして物陰に隠れ、アンリエットの屋敷を伺っていたパトリックの目に、見知らぬ訪問者の姿が映った。なぜか赤いバラの花束をこれでもかというほど抱えている男だ。

 そう、パトリックが知らないのも無理はない。それはアンリエットの返事を催促しに来たクリフトファーの姿だったのだから。

 だが正体は知らずとも、赤いバラを女性に贈るということの意味は分かる。あの男が誰だか知らないが、ヤツはアンリエットに好意を持っているに違いない。

 そう結論付けたパトリックは焦った。アンリエットがどう応えるのか分からないが、先を越されてしまったら元も子もない。

 なんとかしなければ。そう思ったパトリックは、取り敢えず見知らぬ男を尾行することにした。

 アンリエットの屋敷を出たその男は、真っ直ぐ城下町に向かって行く。やがてとある高級ホテルに入って行った。どうやらこのホテルに泊まっているらしい。パトリックも直ぐ様チェックインした。


◇◇◇


 そして翌日の朝、ホテルのロビーで新聞を読みながら待ち伏せしていると、昨日の男が現れた。パトリックは話し掛けようとして一瞬躊躇った。どう挨拶すればいい? なんて聞けばいい?

 そんな逡巡をしている間に、男はパトリックの目の前を足早に通り過ぎて行ってしまった。舌打ちしたパトリックは、仕方なく昨日と同じように男の尾行をすることにした。

 すると男は花屋に立ち寄った。そして昨日と同じように大量の赤いバラの花束を抱えて出て来た。またアンリエットに贈るつもりなんだろう。

 男がアンリエットの屋敷に向かって歩き始めたのを確認したパトリックは、意を決して男に話し掛けようと動き出した。

 その時だった。

「えっ!? あれはアンリエット!?」

 間違いない。アンリエットの家の馬車だ。男とすれ違うようにして町中へと向かって行く。パトリックは踵を返して馬車を追い掛けた。


◇◇◇


 アンリエットは従者を一人連れて町中を散策している。話し掛けたかったが従者が目を光らせている。

 邪魔だな...アイツをどうにかしないと...パトリックは物騒な思考に囚われてしまった。

 町中を離れ、パトリックは裏通りに入って行った。どこの町にだって金で動く破落戸はゴロゴロ居る。

 交渉次第でなんとかなるだろう。パトリックはそう考えながら裏通りを物色し始めた。

 
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