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「アンリエットもそうだったのか!? 済まん、全然気付かなかった。てっきり君に取っての俺は、兄のような存在として慕われているものとばかり思っていたよ。なにせ君の本物の兄であるロバートと俺は同い年だしな」

「...えぇ、そりゃ出会った当初はね...私も兄がもう一人増えたみたいな感覚だったわよ。でも調子に乗ったウィリアムが暴走する度に、巻き込まれていた私を助けてくれたでしょ? その辺りから次第にあなたに惹かれていったわ。今思えばアレは私の初恋だったのかも知れないわね」

 いきなりプロポーズされたこと、それに動揺して思わず自分の気持ちをポロっと溢してしまったことから、もう隠す必要はないと開き直った私は、自身の思いの丈をパトリックに全て話してしまっていた。

「そうだったのか...俺は出会った時からなんて可愛らしい女の子なんだろうって思ってたよ。一目で好きになっていた。一目惚れって本当にあるんだなって思っていた。今思えば俺の初恋の相手もアンリエット、君だったのかも知れないな。でも年齢差もあるし、この気持ちは伝えられることもないだろうと、自分の心の奥底に蓋をして封じ込めていたんだ。今日、君に伝えられて良かったよ。それと君の正直な気持ちも聞けて嬉しかった」

「パトリック...」

「アンリエット、改めて言うよ。俺と結婚してくれないだろうか?」

「その申し出は正直とても嬉しい...でも私はこんな傷物だし...逆にあなたがその歳まで独身で居たなんて信じられないわ。今まで誰か良い人は居なかったの?」

「良いなって思う人は確かに居た。恋人関係になって婚約寸前まで行ったこともある。でもウィリアムのクソッたれのせいでお流れになっちまったけどな」

 パトリックが吐き捨てるようにそう言った。

「えぇっ!? 一体なにがあったの!?」

「あの人の皮を被ったケダモノが、女にだらしがないのは知ってるだろう? 事もあろうに俺の恋人にまで手を出しやがった...」

「うわぁ...それは...」

 ウィリアムの下半身に人格が無いのは当然だとしても、兄の恋人にまで手を出すってのはいくらなんでも倫理に反するだろうに...

 またそれに応えてしまったという恋人の方も、同じ女として倫理観に疑問を持たざるを得ないな。逆に言えばそんな女とは結婚しなくて良かったんじゃないか?

「まぁそのお陰で、股の緩い女と結婚しなくて良かったと思えなくもないけどな...非常に不本意ではあるが...」

 やっぱりパトリックもそう思っていたんだね。苦虫を噛み潰したような顔になっちゃってるけど。
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