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35 (ギルバート視点9)

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 今日は例の小説『真実の愛は永遠なら』の最終刊が発売される日だ。

 ここまで全くシナリオ通りには行ってないけど、最後はビシッと決めるつもりで本を開く。

「えっ!? な、なんだって!? お、王家主宰の晩餐会!? そ、そんな場所で断罪を行うのか!? だ、大丈夫だろうか...」

 僕は思わず言葉に出していた。まさかそんな大きな舞台でやるとは思わなかったからだ。

「いやきっと大丈夫! なんたって僕とキャロラインは真実の愛で結ばれているんだから!」

 僕は自分自身に言い聞かせるようにそう言った。

 そして僕はあの運命の日を迎えるのだ...


◇◇◇


「クレイン侯! クレイン侯はおるか!」

「はっ! ここに...」

「クレイン侯! そなたは息子にどのような教育をして来たのだ!? とてもじゃないがマトモな教育を受けた貴族子息とは思えない行動を取っておるではないか! そもそも正統な後継者であるフィンレイ伯を差し置いて、フィンレイ家の血が一滴も流れていないそなたの息子が伯爵位を継げるはずがないであろうに!」

「誠に遺憾の極み...返す言葉もございません...この愚息は直ちに廃嫡致しますので平にご容赦下さい...」

「ち、父上! そ、そんな!」

「黙れ! この愚か者が!」

「ひでぶっ!」

 僕は実の父親に思いっきり殴られて吹っ飛んで行った。思えば父親に手を上げられたのはこれが初めてかも知れない。

「アンリエット嬢、いやフィンレイ女伯爵。本当に申し訳なかった。この愚息とあなたとの婚約はもちろん解消させて貰う。慰謝料含め諸々の賠償に関しては後日ということでよろしいだろうか?」

「慰謝料に関しては結構です。お金には困っていませんので。ただ今後は我が家からの援助は無くなると思って下さいね?」

「なんと...寛大なお心に感謝致す...」

 そう言って父親は僕の首根っこを引っ掴んで退場して行った。僕はされるがままになるしかなかった。


◇◇◇


「この恥晒しがぁ!」

「あべしっ!」

 王宮からの帰りの馬車の中でも父親に散々殴られ、僕はほとんど目が開かない状態だった。恐らくかなり顔が腫れてるのだろう。

 屋敷に着いた馬車から門の所で僕は下ろされ、

「貴様とは親子の縁を切った! もう父でもなければ子でもない! 出て行け! 二度とこの屋敷に足を踏み入れることは許さん! 勝手にどこぞでくたばるがいい!」

「そ、そんな! ち、父上!」

「貴様に父上などと呼ばれると虫酸が走るわ! とっとと消え失せろ!」

 そう言って門は固く閉ざされてしまった。
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