32 / 276
32 (ギルバート視点6)
しおりを挟む
「キャロライン、参加してくれないか?」
「えぇ!? 私一人で!? なんだか不安だわ...」
「そうだろうけど、シナリオを進めるチャンスでもあるんだ。頼むから頑張ってくれ」
「そういうことなら...分かったわ...」
「あ、そうそう。壊れても惜しくないペンダントを付けて行くのを忘れないでくれよ?」
「えぇ、大丈夫よ。抜かりないわ」
嫌がるキャロラインの尻を叩いて、アンリエット主宰のお茶会へ出席させることに成功した。
後はキャロラインが上手く動いてくれて、シナリオ通りの展開になることを期待するばかりだ。
一緒に付いて行ってあげられないのがもどかしいけど、キャロラインに託すしかない。
◇◇◇
お茶会の翌日、僕はキャロラインを呼び出した。
「キャロライン、昨日はどうだった? 上手くやったかい?」
するとキャロラインは目を伏せて、
「ごめんなさい。結局、アンリエット様とはほとんど話せなかったの...だからイベントを起こせなかったわ...」
「そうか...」
「アンリエット様の周りは仲の良いご友人方が囲んでいて、近くに寄ることも難しかったの...」
「そうだったんだね...」
「ギルバート、ごめんね...」
それじゃあ仕方ないか...そもそもキャロラインとアンリエットはほとんど面識が無いんだから。そう簡単に話し掛けるって訳にもいかないよな。
「いや、気にしないで。僕の方こそ無茶振りだったかも知れない。何か別の手を考えよう。それにしても知り合いのほとんど居ないお茶会はさぞや退屈だったことだろう。そんなお茶会に参加させて申し訳なかったね...」
「い、いえ、だ、大丈夫よ? き、気にしないで?」
やっぱりよっぽど辛かったんだろうな。今日のキャロラインは僕と目を合わせてくれない。
申し訳ないけど、これもシナリオ通りに進めるためだ。我慢して欲しい。僕達の輝ける未来のためにも。
「キャロライン、昨日は疲れたろう? 今日は僕が癒してあげるよ。そろそろお昼だし、どこかに食べに行こうか?」
「あ、ごめんなさい。今日はこの後ちょっと先約があって...」
「そうなんだ。それは残念。じゃあまた別の日にしよう」
「えぇ、ごめんなさいね...」
結局キャロラインは、一度も僕と目を合わせることなく帰って行った。
その時は特に気にも留めなかったが、この日以降キャロラインは僕の誘いを何かと理由をつけて断るようになって行った。
思えばこの頃から僕は破滅に近付いていたのだ。
愚かな僕はその事に気付くことはなかった...
「えぇ!? 私一人で!? なんだか不安だわ...」
「そうだろうけど、シナリオを進めるチャンスでもあるんだ。頼むから頑張ってくれ」
「そういうことなら...分かったわ...」
「あ、そうそう。壊れても惜しくないペンダントを付けて行くのを忘れないでくれよ?」
「えぇ、大丈夫よ。抜かりないわ」
嫌がるキャロラインの尻を叩いて、アンリエット主宰のお茶会へ出席させることに成功した。
後はキャロラインが上手く動いてくれて、シナリオ通りの展開になることを期待するばかりだ。
一緒に付いて行ってあげられないのがもどかしいけど、キャロラインに託すしかない。
◇◇◇
お茶会の翌日、僕はキャロラインを呼び出した。
「キャロライン、昨日はどうだった? 上手くやったかい?」
するとキャロラインは目を伏せて、
「ごめんなさい。結局、アンリエット様とはほとんど話せなかったの...だからイベントを起こせなかったわ...」
「そうか...」
「アンリエット様の周りは仲の良いご友人方が囲んでいて、近くに寄ることも難しかったの...」
「そうだったんだね...」
「ギルバート、ごめんね...」
それじゃあ仕方ないか...そもそもキャロラインとアンリエットはほとんど面識が無いんだから。そう簡単に話し掛けるって訳にもいかないよな。
「いや、気にしないで。僕の方こそ無茶振りだったかも知れない。何か別の手を考えよう。それにしても知り合いのほとんど居ないお茶会はさぞや退屈だったことだろう。そんなお茶会に参加させて申し訳なかったね...」
「い、いえ、だ、大丈夫よ? き、気にしないで?」
やっぱりよっぽど辛かったんだろうな。今日のキャロラインは僕と目を合わせてくれない。
申し訳ないけど、これもシナリオ通りに進めるためだ。我慢して欲しい。僕達の輝ける未来のためにも。
「キャロライン、昨日は疲れたろう? 今日は僕が癒してあげるよ。そろそろお昼だし、どこかに食べに行こうか?」
「あ、ごめんなさい。今日はこの後ちょっと先約があって...」
「そうなんだ。それは残念。じゃあまた別の日にしよう」
「えぇ、ごめんなさいね...」
結局キャロラインは、一度も僕と目を合わせることなく帰って行った。
その時は特に気にも留めなかったが、この日以降キャロラインは僕の誘いを何かと理由をつけて断るようになって行った。
思えばこの頃から僕は破滅に近付いていたのだ。
愚かな僕はその事に気付くことはなかった...
34
お気に入りに追加
3,452
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
【完結】お前なんていらない。と言われましたので
高瀬船
恋愛
子爵令嬢であるアイーシャは、義母と義父、そして義妹によって子爵家で肩身の狭い毎日を送っていた。
辛い日々も、学園に入学するまで、婚約者のベルトルトと結婚するまで、と自分に言い聞かせていたある日。
義妹であるエリシャの部屋から楽しげに笑う自分の婚約者、ベルトルトの声が聞こえてきた。
【誤字報告を頂きありがとうございます!💦この場を借りてお礼申し上げます】
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる