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「クレイン侯! クレイン侯はおるか!」

 今にも泡を吹いて倒れそうなギルバートでは話にならないと見た国王陛下は、ギルバートの両親を問い質すことにしたらしい。

「はっ! ここに...」

 ギルバートに負けず劣らず顔面蒼白なクレイン侯爵が国王陛下の御前で膝を突いた。プルプル震えているのは恐怖故かはたまた怒り故か。

「クレイン侯! そなたは息子にどのような教育をして来たのだ!? とてもじゃないがマトモな教育を受けた貴族子息とは思えない行動を取っておるではないか! そもそも正統な後継者であるフィンレイ伯を差し置いて、フィンレイ家の血が一滴も流れていないそなたの息子が伯爵位を継げるはずがないであろうに!」

 国王陛下のおっしゃる通り、有り得ないけど万が一この私が廃嫡された場合、伯爵位は兄のロバートに移るだけなんだよね。なにせ正統なる血統なんだからさ。だから間違ってもギルバートが伯爵位を継げる訳が無いんだよ。

 その辺りは家督教育をちゃんと受けていれば簡単に理解できるはずなんだが、サボり捲っていたギルバートはそんなことも分からなかったんだろう。

「誠に遺憾の極み...返す言葉もございません...この愚息は直ちに廃嫡致しますので平にご容赦下さい...」

「ち、父上! そ、そんな!」

 呆然としていたギルバートが慌ててクレイン侯爵に取り縋る。

「黙れ! この愚か者が!」

「ひでぶっ!」

 クレイン侯爵がギルバートを殴り飛ばした。どうやら怒りでプルプル震えていたらしい。ギルバートは吹っ飛んで行った。

「アンリエット嬢、いやフィンレイ女伯爵。本当に申し訳なかった。この愚息とあなたとの婚約はもちろん解消させて貰う。慰謝料含め諸々の賠償に関しては後日ということでよろしいだろうか?」

 クレイン侯爵は血を吐くように言葉を絞り出した。慰謝料含め今までウチが援助して来た金額を全て返金するとなったら、侯爵位も家屋敷も領地も全て手放して金を作るしかなくなるだろう。だがそれは私の本意ではない。

「慰謝料に関しては結構です。お金には困っていませんので。ただ今後は我が家からの援助は無くなると思って下さいね?」

「なんと...寛大なお心に感謝致す...」

 そう言ってクレイン侯爵はギルバートの首根っこを引っ掴んで退場して行った。

「フィンレイ女伯爵よ、本当にあれで良かったのか?」

 なんだか国王陛下の方が不満みたいだ。

「いいんです。元々クレイン侯爵家を潰す気はありませんでしたから」

「そなたは優しいのぅ」

 そう言って国王陛下が目を細めた時だった。

「あれ? ギルバートは? どこ行ったの?」

 能天気なキャロラインの声が聞こえたのは。

 さて、もう一人追い詰めますかね。
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