53 / 89
53
しおりを挟む
公衆浴場の整備も終わり、職員達と別れたエリスとカイは、場所を教えて貰った製材所に向かった。
切り倒した木材を卸すためだ。ストレージから次々と出てくる木材に、製材所の所員は目を丸くしていた。木材を卸し終わった後、次は現状を報告するために町長の所に向かった。
「たった1日か2日でホテルや公衆浴場、更にお土産物屋まで...いやはや、エリス様に関わると通常の感覚が麻痺してしまいますね」
報告を受けた町長は、苦笑しながら言った。カイは隣でうんうんと頷いている。
「あははは、そろそろ慣れて下さいね」
エリスは他人事みたいにそう言って笑った。
「さて公衆浴場ですが、街の人達は基本無料にします。ただ、それを公言してしまうと、観光客や旅行者から不満が出ると思うんです。なんで自分達はタダで温泉に入れないのかと。だからそれを防ぐ意味で、街の人達にはパスを配ろうと思います。そのパスがあれば無料で、無いなら有料で入って貰うという風にしたいと思ってます」
「なるほど、温泉に入りたいだけだという人達からもお金を取るということですね?」
「その通りです。温泉に入りたいけどホテルに泊まるお金は無い。そういう人達にもせめて温泉気分を味わって貰うために良心的な価格設定にします。更に希望があれば、年間パスという形で売り出しても良いと思ってます。有効期限は1年で、1度購入すれば何度でも入れるようにします。あぁもちろん、街の人達に配る分は永年ですよ」
「素晴らしいアイデアだと思います! 早速取り掛かりましょう!」
「ありがとうございます。あ、それと、今思い付いたんですが、1階の空いてるスペースにお土産物屋の出店を作っても良いかも知れませんね。街の人達もそこで買えるように」
「それ良いですね! 是非やりましょう!」
「ちなみにこの街の名物になりそうな食べ物って何がありますか? 果物や牧場で作る乳製品、山の幸を使った料理などはすぐに思い付いたんですが、それ以外で」
「そうですね...食べ物ではないんですが、ワインは名物になると思います」
「あぁ、果物の生産が盛んなら当然ですよね。他には?」
「まだ試作段階なんですが、ため池を利用して魚の養殖をしようと思ってます」
「そうなんですね。淡水魚だから鯉とかニジマスあたりでしょうか?」
「仰る通りです。目処が立てば魚料理を出せるようになります」
「海が遠いこの地において、魚を食べられるのは魅力ですね。是非成功させましょう。私に手伝えることがあれば何でも言って下さい」
「ありがとうございます。実は養殖場の責任者から中々問題が解決しないと報告がありまして、どうしたら解決するか頭を悩ませているところなんです」
「そうなんですね。では私が見てみましょうか?」
「是非お願い致します」
「分かりました。場所を教えて下さい。そして明日伺うと連絡をお願いします」
「了解致しました」
切り倒した木材を卸すためだ。ストレージから次々と出てくる木材に、製材所の所員は目を丸くしていた。木材を卸し終わった後、次は現状を報告するために町長の所に向かった。
「たった1日か2日でホテルや公衆浴場、更にお土産物屋まで...いやはや、エリス様に関わると通常の感覚が麻痺してしまいますね」
報告を受けた町長は、苦笑しながら言った。カイは隣でうんうんと頷いている。
「あははは、そろそろ慣れて下さいね」
エリスは他人事みたいにそう言って笑った。
「さて公衆浴場ですが、街の人達は基本無料にします。ただ、それを公言してしまうと、観光客や旅行者から不満が出ると思うんです。なんで自分達はタダで温泉に入れないのかと。だからそれを防ぐ意味で、街の人達にはパスを配ろうと思います。そのパスがあれば無料で、無いなら有料で入って貰うという風にしたいと思ってます」
「なるほど、温泉に入りたいだけだという人達からもお金を取るということですね?」
「その通りです。温泉に入りたいけどホテルに泊まるお金は無い。そういう人達にもせめて温泉気分を味わって貰うために良心的な価格設定にします。更に希望があれば、年間パスという形で売り出しても良いと思ってます。有効期限は1年で、1度購入すれば何度でも入れるようにします。あぁもちろん、街の人達に配る分は永年ですよ」
「素晴らしいアイデアだと思います! 早速取り掛かりましょう!」
「ありがとうございます。あ、それと、今思い付いたんですが、1階の空いてるスペースにお土産物屋の出店を作っても良いかも知れませんね。街の人達もそこで買えるように」
「それ良いですね! 是非やりましょう!」
「ちなみにこの街の名物になりそうな食べ物って何がありますか? 果物や牧場で作る乳製品、山の幸を使った料理などはすぐに思い付いたんですが、それ以外で」
「そうですね...食べ物ではないんですが、ワインは名物になると思います」
「あぁ、果物の生産が盛んなら当然ですよね。他には?」
「まだ試作段階なんですが、ため池を利用して魚の養殖をしようと思ってます」
「そうなんですね。淡水魚だから鯉とかニジマスあたりでしょうか?」
「仰る通りです。目処が立てば魚料理を出せるようになります」
「海が遠いこの地において、魚を食べられるのは魅力ですね。是非成功させましょう。私に手伝えることがあれば何でも言って下さい」
「ありがとうございます。実は養殖場の責任者から中々問題が解決しないと報告がありまして、どうしたら解決するか頭を悩ませているところなんです」
「そうなんですね。では私が見てみましょうか?」
「是非お願い致します」
「分かりました。場所を教えて下さい。そして明日伺うと連絡をお願いします」
「了解致しました」
0
お気に入りに追加
1,390
あなたにおすすめの小説
親友に裏切られた侯爵令嬢は、兄の護衛騎士から愛を押し付けられる
当麻月菜
恋愛
侯爵令嬢のマリアンヌには二人の親友がいる。
一人は男爵令嬢のエリーゼ。もう一人は伯爵令息のレイドリック。
身分差はあれど、3人は互いに愛称で呼び合い、まるで兄弟のように仲良く過ごしていた。
そしてマリアンヌは、16歳となったある日、レイドリックから正式な求婚を受ける。
二つ返事で承諾したマリアンヌだったけれど、婚約者となったレイドリックは次第に本性を現してきて……。
戸惑う日々を過ごすマリアンヌに、兄の護衛騎士であるクリスは婚約破棄をやたら強く進めてくる。
もともと苦手だったクリスに対し、マリアンヌは更に苦手意識を持ってしまう。
でも、強く拒むことができない。
それはその冷たい態度の中に、自分に向ける優しさがあることを知ってしまったから。
※タイトル模索中なので、仮に変更しました。
※2020/05/22 タイトル決まりました。
※小説家になろう様にも重複投稿しています。(タイトルがちょっと違います。そのうち統一します)
虐げられた第一王女は隣国王室の至宝となる
珊瑚
恋愛
王族女性に聖なる力を持って産まれる者がいるイングステン王国。『聖女』と呼ばれるその王族女性は、『神獣』を操る事が出来るという。生まれた時から可愛がられる双子の妹とは違い、忌み嫌われてきた王女・セレナが追放された先は隣国・アバーヴェルド帝国。そこで彼女は才能を開花させ、大切に庇護される。一方、セレナを追放した後のイングステン王国では国土が荒れ始めて……
ゆっくり更新になるかと思います。
ですが、最後までプロットを完成させておりますので意地でも完結させますのでそこについては御安心下さいm(_ _)m
平民として追放される予定が、突然知り合いの魔術師の妻にされました。奴隷扱いを覚悟していたのに、なぜか優しくされているのですが。
石河 翠
恋愛
侯爵令嬢のジャクリーンは、婚約者を幸せにするため、実家もろとも断罪されることにした。
一応まだ死にたくはないので、鉱山や娼館送りではなく平民落ちを目指すことに。ところが処分が下される直前、知人の魔術師トビアスの嫁になってしまった。
奴隷にされるのかと思いきや、トビアスはジャクリーンの願いを聞き入れ、元婚約者と親友の結婚式に連れていき、特別な魔術まで披露してくれた。
ジャクリーンは妻としての役割を果たすため、トビアスを初夜に誘うが……。
劣悪な家庭環境にありながらどこかのほほんとしているヒロインと、ヒロインに振り回されてばかりのヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID3103740)をお借りしております。
【完結】皇太子殿下の婚約者は、浮気の証拠を盾に婚約破棄を画策する
五色ひわ
恋愛
ジョゼフィーヌは婚約者である皇太子フェルディナンの浮気の証拠を持って王宮を歩いていた。
この証拠をフェルディナンに突きつければ、婚約を破棄することができる。ジョゼフィーヌの心の中には、市井で出会った愛するマルクがいて、立ち向かう勇気を与えてくれていた。
本編50話+おまけ5
【完結】育成準備完了しました。お父様を立派な領主にしてみせます。
との
恋愛
「婚約破棄だ!!」
ありがとうございます。やっとその一言を聞けました。こちらの準備は終わってるので早く婚約破棄言い出してくれないかなぁって待ってました。
それにしても、愛人?浮気相手?を引き連れて下品な顔で宣言してますけど、それから先どうなるかわかってるんでしょうか。
王家の私欲ではじめた無謀な戦争が敗戦に終わり、その責を押し付けられ続けているウォルデン侯爵は私財を王家に搾り取られ、騙されて一人娘のルーナをグレイソン第一王子の婚約者にされても現実から目を逸らしていた。
悩みを抱え、言われるがままに国王達に資金提供し続けていたウォルデン侯爵が娘の為・侯爵家の為に立ち上がります。
「きっ、聞いてた話と違うんです。ルーナ様! 助けて、助けて下さい」
「貴様は何も勉強していないから教えられんのだろう! いつも偉そうな態度で王宮を闊歩しておきながらなんと情けない!」
哀れな法務官に同情を感じ声をかけようとしていたルーナは振り向き、王子達に向けて態とらしく微笑んだ。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済
R15は念の為・・
王族なんてお断りです!!
紗砂
恋愛
この度めでたく私、エリス・フォーリアは男爵令嬢のいじめなんて生ぬる……馬鹿らしいことをしたという理由で婚約破棄をされました。
全く身に覚えもありませんし、その男爵令嬢の名前すら知らないのですが。
まぁ、そういうことで王家を見限った私は王国から店舗を撤退させていただきます♪
……のはずが、何故国王選定の最有力候補に名前があがっているのでしょうか?
そのうえ、他の公爵家の方々から頭を下げられ、隣国の王子との婚約話も進んでいるのですが……
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる