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第20話

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 次の打ち合わせはまた一週間後ということで、その日はお開きとなった。

「あ、アズミ。ちょっといいかい?」

 会議室を出ようとしたアズミをハインツが呼び止める。

「なんでしょう?」

「ほら、一度お流れになっちゃった最高級ホテルの最上階、展望レストランでのディナーの件だけど、あれからバタバタしちゃってまだ行けてないだろ? 明日なんかどうかな? 予約入れてあるんだ。今度こそ二人でゆっくりと楽しもう?」

「まぁ! 嬉しいですわ! もちろんですとも! 楽しみにしておりますわね!」

 アズミは喜色満面で頷いた。


◇◇◇


 次の日の夜、完璧にドレスアップしたアズミをハインツが迎えに来た。前回、ハインツは無理に予定を入れ込んだので直前まで公務に追われ、アズミを迎えに行く時間が取れなかったが、今回はたっぷりと時間に余裕がある。

「アズミ...綺麗だよ...とても素敵だ...」

 ハインツはドレスアップしたアズミを見て、恍惚とした表情を浮かべながらそう言って馬車へとエスコートした。

「ありがとうございます。ハインツ様もとても凛々しいですわよ」

 アズミは頬を赤く染めながら照れ臭そうに微笑んだ。

 馬車で走ること約10分、二人は王都の最高級ホテルに到着した。ハインツが先に馬車から降りてアズミをエスコートする。

 二人は腕を組んで和やかに会話を交わしながら魔道エレベーターに乗り、最上階の展望レストランへと向かった。そこで絶句した...

「あらあらあらっ! まぁまぁまぁまぁっ! ハインツ殿下にアズミ様! 偶然でございますわねぇ! お二人も今夜はここでお食事ですの!? もしよろしかったらご一緒しませんこと!? 私、一人っきりで食事をするつもりでしたが、やっぱり一人は寂しくて...たまたまここでお会いしたのも何かのご縁! 是非ともご一緒させて下さいませ! ね? ねっ? ねぇっ?」
  
 レストランの入口にチリーヌ王女が待ち構えるようして立っていたのだ。

 アズミとハインツは訳が分からなかった。そもそもこのレストランは一人で食事に来るような所ではない。

 偶然? たまたま? 有り得ない! どう見ても狙って二人の邪魔をしに来たとしか思えない! 間違いなくそう思ったが、相手の立場上無下にする訳にも行かず...

「え、えぇ、そうですね...」

 ハインツは渋々そう答えるしかなかった。

 結果、気不味い雰囲気の中、三人でテーブルを囲むことになった。運ばれて来るのはどれも美味しい料理のはずなのだが...

 アズミには全く味がしないように感じられた夜だった...
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