上 下
11 / 28

第11話

しおりを挟む
「そのまさかですよ。他国を侵略するとか国境の紛争を解決するとかの可能性が無くなって、最後に残ったもの言えば...」

「クーデターか...」

 アズミの言葉を引き継いでハインツが重々しく呟く。

「ご明答。男爵が関与を疑われているのは、隣国の四大公爵家の内でも一番タカ派と呼ばれている家だそうです。その事実に行き当たった時、これはとてもじゃないけど私達の懐の中だけで収まるような案件ではないと判断し、陛下にご注進申し上げた次第です」

「そうだったのか...」

 ハインツはやっと納得したような顔になってそう言った。

「事は一国の興亡を左右するような、そんな事態にまで発展しそうな雰囲気になって来ましたからね。ここまで大事になってしまえば、国同士の話にした方が良いでしょう。国王陛下としても自国の貴族が働いた不正を詫びるより先に、隣国におけるクーデターの可能性を示唆することで、隣国に対して政治的に優位に立ちたいという思惑もあったでしょうから」

「確かにな...それにそもそもの発端が隣国の公爵家からの誘いで、男爵家は見事そのエサに食い付いただけっていう風に話を持って行ければ、ウチには非が無いと言い切れるかも知れないよな」 

「えぇ、ウチも全くおとがめ無しって訳には行かないでしょうけど、何らかの譲歩を引き出せそうですもんね」

「そうだな。そこら辺の政治的なやり取りは大人達に任せるとしよう」 

「えぇ、そして殿下達に対するお仕置きも、大人達にお任せすることにします」

「うぐっ...やっぱりお仕置きはあるんだよな...そりゃ当然か...」

 ハインツは頭を抱えた。

「家に帰ったら覚悟して下さいね? 男性陣には全員、ご両親によるお説教とお仕置きが待ってますから」

 アズミはとても良い笑顔を浮かべてそう言った。

「あぅ...」

 それに対してハインツは、まるでこの世の終わりのような顔をして俯いてしまった。
 
「さて、それじゃあ帰りましょうか」

 そう言ってアズミは席を立った。だがハインツが引き留める。
 
「あ、アズミ! ちょっと待ってくれ!」

「まだ何か?」

 ハインツはモジモジしながらこう言った。

「あの...その...本当に済まなかった...それでその...婚約を解消したりは...」

「したいですか?」

 ハインツはブンブンと音が鳴る勢いで首を横に振った。
 
「安心して下さい。私含めて女性陣全員その気は無いですよ」

 そう言われてハインツはホッとした表情を浮かべた。だが...

「ただし! 二度目はありませんからね!」

 アズミにビシッと言われたハインツは、これまた音が鳴る勢いでブンブンと首を縦に振った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!

青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。 すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。 「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」 「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」 なぜ、お姉様の名前がでてくるの? なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。 ※タグの追加や変更あるかもしれません。 ※因果応報的ざまぁのはず。 ※作者独自の世界のゆるふわ設定。 ※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。 ※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

元妃は多くを望まない

つくも茄子
恋愛
シャーロット・カールストン侯爵令嬢は、元上級妃。 このたび、めでたく(?)国王陛下の信頼厚い側近に下賜された。 花嫁は下賜された翌日に一人の侍女を伴って郵便局に赴いたのだ。理由はお世話になった人達にある書類を郵送するために。 その足で実家に出戻ったシャーロット。 実はこの下賜、王命でのものだった。 それもシャーロットを公の場で断罪したうえでの下賜。 断罪理由は「寵妃の悪質な嫌がらせ」だった。 シャーロットには全く覚えのないモノ。当然、これは冤罪。 私は、あなたたちに「誠意」を求めます。 誠意ある対応。 彼女が求めるのは微々たるもの。 果たしてその結果は如何に!?

「そんなの聞いてない!」と元婚約者はゴネています。

音爽(ネソウ)
恋愛
「レイルア、許してくれ!俺は愛のある結婚をしたいんだ!父の……陛下にも許可は頂いている」 「はぁ」 婚約者のアシジオは流行りの恋愛歌劇に憧れて、この良縁を蹴った。 本当の身分を知らないで……。

【完結】「妹の身代わりに殺戮の王子に嫁がされた王女。離宮の庭で妖精とじゃがいもを育ててたら、殿下の溺愛が始まりました」

まほりろ
恋愛
 国王の愛人の娘であるヒロインは、母親の死後、王宮内で放置されていた。  食事は一日に一回、カビたパンや腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。  しかしヒロインはそれでもなんとか暮らしていた。  ヒロインの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。  その妖精はヒロインに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。  ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたヒロインは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。 ※カクヨムにも投稿してます。カクヨム先行投稿。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」 ※2023年9月17日女性向けホットランキング1位まで上がりました。ありがとうございます。 ※2023年9月20日恋愛ジャンル1位まで上がりました。ありがとうございます。

私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。

田太 優
恋愛
結婚して1年も経っていないというのに朝帰りを繰り返す夫。 結婚すれば変わってくれると信じていた私が間違っていた。 だからもう離婚を考えてもいいと思う。 夫に離婚の意思を告げたところ、返ってきたのは私を深く傷つける言葉だった。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

処理中です...