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第3話

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「そもそもですね、貴族のマナーを学びたいのでしたら、男性に教わるんじゃあなくて、女同士の方が良いと思うんですよね。男と女でマナーの違う所もありますし。なんでそうしなかったんですか?」

 アズミの追及は更に続く。

「そ、それはその...わ、私は他の女の人から嫌われていまして...」

 ホヘットが苦しそうに言う。
 
「ふうん、それはなぜだと思いますか?」

「そ、それは...」

 ついにホヘットが言葉に詰まった。

「この先は次のお題に繋がるんで、その前に少し休憩しましょうか。喉渇いたでしょう? あなた達、お茶を入れ直してくれるかしら?」

 アズミは侍女に指示を出した。侍女が素早く全員のお茶を入れ替える。一息入れた後、

「さてさて、次のお題に参りましょうか」

 アズミがサラサラとホワイトボードに書いて行く。

『なぜホヘット嬢は婚約者の居る男性にばかりすり寄るのか?』

「わ、私、そんなことしてません!」

 ホヘットが顔を真っ赤にして否定する。

「あらぁ、本当にそうですか~? 女の人に嫌われる原因はこれじゃあないんですか~?」

「そ、そんな酷いです...うぅぅ...」

 ついにホヘットは手で顔を覆って泣き出してしまった。いつもならここで男性陣から掩護射撃が入る。ホヘットもそれを期待して手の隙間から覗いていたのだが、いつまで経っても誰も掩護射撃をしてくれない。

「ねぇ男性の方々。冷静に客観的に見て、婚約者の居る男性にすり寄る女性をどう思います? 冷静に客観的に見て」

 アズミは大事なことなので二回繰り返した。するとまずはハインツが口を開く。
 
「普通に考えて有り得ないよな...」

「そ、そんな! ハインツ様!」

 マインツも続く。

「端ない女性だと思います...」
 
「マインツ様まで!」

 ヤインツも更に続く。

「常識を疑う...」

「ヤインツ様!」

 ラインツも更に更に続く。

「良識が欠如してますね...」

「そんな...」

 ワインツが締める。

「マナー以前に人としてどうかと...」

「みんな...酷いわ...」
  
 ホヘットはテーブルに突っ伏してしまった。

「ホヘットさん、如何ですか? あなたの行動は女性のみならず男性からも忌避されるものだと理解しましたか?」

「うぅぅ...」

「もし今後、あなたが行動を改めて男性にすり寄るのを止めたら、私達はあなたを迎え入れるのもやぶさかではありません。そうよね? あなた達?」

「「「「 はい、その通りです 」」」」

 今まで一言も発しなかった女性陣が声を揃える。

「これからは何か困ったことがあったら、男性陣ではなく女性陣に相談すること。いいですね?」

「......」

「い・い・で・す・ね?」

「わ、分かりましたよ...」

 ホヘットは渋々頷いた。

「よろしい。言質を取りましたよ?」

 アズミはとても良い笑顔を浮かべてそう言った。





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