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 私は今、大司教様の執務室に来ている。

「聖女見習いの少女達を聖女様の公務に伴わせる...ですか...」

「はい、もちろん修行の妨げにならない範囲でですが。将来、自分が就くかも知れない職業のことを詳しく知っておいて損は無いと思います」

 まぁ職場体験みたいなもんだ。

「なるほど...修行の一環にもなりそうですね。分かりました。許可しましょう」

「ありがとうございます。少女達は何人かのグループに分けて順番に持ち回りで伴わせたいと思っています」

「その辺りは聖女様にお任せします」

 こうして聖女見習いの少女達による、聖女職場体験がスタートすることになった。


◇◇◇


 今日は神殿で癒しを行う日だ。相変わらず長蛇の列が出来ている。

「レイ、怪我人の重傷、軽傷の判断を素早く的確に」

「は、はいっ!」

「アミ、病人の症状把握を速やかに間違えないように」

「わ、分かりました!」

 今日の聖女職場体験当番はレイとアミの二人だ。実は私が意図的にこの二人を組ませた。忙しい中で共に働くことにより、蟠りを無くして欲しいと思ったからだ。

 目論見通り、二人は協力し合って作業を進めている。良し良し。あぁでも...ホントこの治療行為は毎回疲れる...だから...

「レイ、喉渇いた。お茶」

「はいっ!」

「アミ、肩凝った。揉んで」

「はいっ!」

 これくらいの我が儘は勘弁して欲しい...


◇◇◇


 今日から久し振りに巡礼の旅に出る。王都から馬車で二日ほど掛かる侯爵領が目的地だ。

「レイ、アミ、向こうに着いたらしっかりとご挨拶すること。緊張して粗相したりしないように注意してね?」

「「 わ、分かりました! 」」

 そう、今回の旅にも聖女職場体験としてレイとアミの二人を同行させている。緊張しているようなので解してやっているところだ。

 宿で二人を同部屋にしたので、旅の間により一層歩み寄ることを期待している。

 目論見通り、旅から戻って来た頃には、大分二人の距離が縮まったように感じられた。良し良し。


◇◇◇


 そんなこんなで時は過ぎ、いよいよ聖女見習いの中から聖女の最終候補を選ぶ日がやって来た。

 最終候補に残れるのは二人。まぁ大体みんな予想できてると思うけどね。 

「最終候補はレイ、アミ、あなた達二人よ。おめでとう。他のみんなはお疲れ様でした。ゆっくり休んで頂戴。レイとアミはこれからもっともっと頑張るようにね?」

「「 はいっ! ありがとうございます!  これからも精進します! 」」

 うんうん、二人とも良い笑顔だ。良かった良かった。
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