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パターン10

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「オリコー! 貴様との婚約は破棄じゃあ~!」

 今日は学園の卒業式の日。

 卒業パーティーに臨む生徒達の、浮かれた気分を台無しにするような大声を上げたのは、この国の第2王子アホヤネンである。その傍らには最近アホヤネンと噂になっている、バッカーナ男爵令嬢の姿があった。

「婚約破棄って...本当ですか!?」
 
 困惑しながらそう答えたのは、オリコー公爵令嬢である。

「当然だ! 貴様は俺様とバッカーナが仲良くしているのを見て、嫉妬に駆られてこのバッカーナを虐めたな! まず、バッカーナの教科書を全て破り捨てた! 次にバッカーナを噴水に突き落とした! 更にバッカーナを階段から突き落とした! 更に更に...」

「やったぁ~♪ 婚約破棄されたぁ♪ これでやっと私は自由だぁ~♪ ひゃっほい~♪」

「な、なんだとぉ!? それはどういう意味だ!?」

 いきり立つアホヤネンの言葉を遮ってオリコーが嬉しそうに叫ぶ。そしてスマホを取り出した。誰かに電話を掛ける。

「あ、もしもし? アタシ~♪ うんうん♪ 予想通りアホな殿下が婚約破棄してくれたの~♪ ね? アタシの言ってた通りになったでしょ? アタシに隠れてなんかコソコソやってるなって思ってたのよねぇ~♪」

「ぬなぁっ!? ふ、ふざけるなぁ! そ、そんなこと俺様はしてないぞぉ! 大体誰がアホだぁ!」

 アホヤネンがますます激昂する。だがオリコーは聞いちゃいない。

「アタシやっとダーリンと結ばれるのねぇ~♪ 長かったわぁ~♪ えっ!? ヤダぁ♪ こんな所でぇ~♪ フフッ♪ アタシもよ♪ 愛・し・て・る♪ キャハッ♪ じゃあダーリン♪ また後でね?」

 そう言ってオリコーはスマホを切った。

「ふわぁっ!?」

 またもやアホヤネンが奇声を発する。

「殿下! 私を解放してくれて本当にありがとうございました! それではご機嫌よう」

 オリコーは軽やかな足取りでその場を後にした。

 アホヤネンはその場に崩れ落ちた。

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