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第160話 第三者視点 風竜の試練 その4

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「うぐっ!」

 かろうじて指先で体を支えたアリシアは、どうにかもう一度斜面にへばり付くことに成功した。

「あ、危なかった!」

 アリシアは肝を冷やした。

「クルル...」

「メル、心配掛けてゴメン。もう大丈夫」

 メルに一声掛けてから、アリシアは気合いを入れ直した。

「良し! もう一息!」

 アリシアはより慎重に登り始めた。一歩一歩着実に。やがて...

「つ、着いた...」

 ついに山頂へと辿り着いた。

「なんてキレイ...」

 山頂はなだらかな斜面が一面雪に覆われていて、いつの間にか射し込んでいた陽の光にキラキラと輝いていた。あれだけ激しかった風もウソのように凪いでいる。

 山頂の真ん中辺りに氷で出来た宮殿ような建物がある。あそこに風竜が居るのだろうか? そこまで考えた辺りでアリシアは意識を失った。


◇◇◇


 目が覚めた時、アリシアは自分がどこに居るか分からなかった。ただ何か暖かい物に包まれているということだけは分かった。

『目覚めたか?』

「ここは...」

『我の住まいだ。よくぞここまで辿り着いたな』

 そこでアリシアは、風竜の声が自分の頭の上から響いて来ているのに気付いた。

「ひょわっ!?」

 改めて周りを見回して見て、自分が蜷局を巻いた風竜の体に包まれていると分かった。

「あ、あの...風竜...様?」

『うむ!? どうした!?』

「あ、あの、その...わ、私はなぜ風竜様に包まれているのでしょうか...」

『そなたが疲れて気絶しておったからな。冷えてはいかんと思って我の体で温めておいた』

「も、申し訳ありません...な、なんと恐れ多いことを...」

『気にすることはない。そなたは我の試練を乗り越えたのだからな』

「そ、そうなんですかね...」

 アリシアはまだ恐縮しきりだ。

『約束通り我の加護を授けよう』

 風竜がそう言うと、アリシアの手元に風車のような形をしたペンダントが現れた。

「これは?」

『我の加護を込めてある。身に付けているだけで我の力を使うことが出来る』

「というと!? 具体的には!?」

『例えば攻撃した時に我の力が上乗せされる。離れた所に居る敵にも攻撃が届くようになる』

「本当ですか!? それはとっても嬉しいです!」

 近接戦闘タイプのアリシアは、ロングレンジの攻撃が課題だったので素直に喜んだ。

『それと常に我の風がそなたを守るだろう』

「ありがとうございます!」

 防御まで強化してくれるらしい。アリシアは苦労して試練を突破した甲斐があったと思った。

『ところでその鳥はもしかして神獣なのか?』

 風竜が話題を変えた。

「はい。メルは神獣だという話です」

「クルル」

『そうか...』

 風竜はそう言ったあと沈黙してしまった。
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