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第140話 ちみっことエルフの里 その7
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「ゴーレム!」
アタシ達を逃がさまいとエルフの戦士達が行手を塞ぐ。それをゴーレムで蹴散らす。後ろから追い縋って来る連中には、
『アースウォール!』
土の壁を作って近付かせないようにする。
「ミナお嬢様っ! 出口です!」
マリーが指差す先に里の入口...私達にとっては出口...にある木製の柵が見えて来た。今は閉じられているそこに向かって、
『ロックシュート!』
魔法をぶちかます。柵が吹っ飛んだ。
「マリー! 急ごう!」
「はいっ!」
もうすぐ出られる。こんな場所とはオサラバだ。森に入ってしまえば隠れる所は沢山あるはず。その後はどうにか森を抜け出して、ナギの力が元に戻るのを待って家に帰る。
そんな皮算用を描いていた。だから油断したんだろう。
「キュイ!」
胸に抱いていたナギが鋭く鳴く。
シュタッ!
そんな擬音が聞こえて来そうな感じで、上から人影が降って来た。
「動くなっ!」
アタシは喉元に突き付けられた剣を呆然と見詰めるしかなかった。まさか上から来るとは思わなかった。完全に想定外の動きだった。
チラッと上を見上げると、柵の側に高い木が立っている。あの木からここまで飛んで来たのか。大した身体能力だ。アタシはこんな時なのに寧ろ感心しながら、剣を突き付けているエルフの戦士ルークを見上げた。
「ミナお嬢様っ!」
「マリー、大丈夫だから。落ち着いて」
アタシはなるべく穏やかに言った。これ以上抵抗したらアタシはともかくマリーは...
「そうだ。お前も動くな。おいっ! 誰か魔封じの腕輪を持って来い!」
魔封じの腕輪...そんなもんがあるのか...
◇◇◇
「そこでしばらく大人しくしていろ」
両腕に魔封じの腕輪とやらを嵌められたアタシと、両手両足を鎖付きの手枷足枷で拘束されたマリーは、座敷牢みたいな場所に閉じ込められた。
金属製の格子が嵌まっている。逃げ出すのは苦労しそうだ。
「マリー、怪我はない?」
「大丈夫です。ミナお嬢様は?」
「私も平気。魔封じの腕輪って言うだけあって、魔法が使えないってだけでね」
「...これからどうなるんでしょうか...」
それはアタシにも分からない。アタシが答えられずにいると、
「安心せい。もうすぐ助けが来るでな」
「精霊王様!? 力が復活したんですか!?」
ちゃんと声が聞こえて来たので、アタシは頭上を見上げた。
「あれ!? 居ない!?」
「ここじゃここ」
胸の辺りから声が聞こえる。
「これは...精霊王様から頂いたペンダント!?」
最初に精霊王様とお会いした時に頂いた、木の形をしたペンダントが淡く光っている。
「フム、なんとかここまで力が復活したんでな」
「良かったです! マリーも聞こえる?」
「はい、聞こえます。精霊王様、お久し振りでございます」
「ウム、久しいな」
「それで精霊王様、助けが来るというのは?」
「あぁ、力が復活した瞬間、精霊達にこの場所を知らせておいた。直に助けに来てくれるじゃろ」
「そうだったんですね!」
アタシ達に希望が見えた瞬間だった。
アタシ達を逃がさまいとエルフの戦士達が行手を塞ぐ。それをゴーレムで蹴散らす。後ろから追い縋って来る連中には、
『アースウォール!』
土の壁を作って近付かせないようにする。
「ミナお嬢様っ! 出口です!」
マリーが指差す先に里の入口...私達にとっては出口...にある木製の柵が見えて来た。今は閉じられているそこに向かって、
『ロックシュート!』
魔法をぶちかます。柵が吹っ飛んだ。
「マリー! 急ごう!」
「はいっ!」
もうすぐ出られる。こんな場所とはオサラバだ。森に入ってしまえば隠れる所は沢山あるはず。その後はどうにか森を抜け出して、ナギの力が元に戻るのを待って家に帰る。
そんな皮算用を描いていた。だから油断したんだろう。
「キュイ!」
胸に抱いていたナギが鋭く鳴く。
シュタッ!
そんな擬音が聞こえて来そうな感じで、上から人影が降って来た。
「動くなっ!」
アタシは喉元に突き付けられた剣を呆然と見詰めるしかなかった。まさか上から来るとは思わなかった。完全に想定外の動きだった。
チラッと上を見上げると、柵の側に高い木が立っている。あの木からここまで飛んで来たのか。大した身体能力だ。アタシはこんな時なのに寧ろ感心しながら、剣を突き付けているエルフの戦士ルークを見上げた。
「ミナお嬢様っ!」
「マリー、大丈夫だから。落ち着いて」
アタシはなるべく穏やかに言った。これ以上抵抗したらアタシはともかくマリーは...
「そうだ。お前も動くな。おいっ! 誰か魔封じの腕輪を持って来い!」
魔封じの腕輪...そんなもんがあるのか...
◇◇◇
「そこでしばらく大人しくしていろ」
両腕に魔封じの腕輪とやらを嵌められたアタシと、両手両足を鎖付きの手枷足枷で拘束されたマリーは、座敷牢みたいな場所に閉じ込められた。
金属製の格子が嵌まっている。逃げ出すのは苦労しそうだ。
「マリー、怪我はない?」
「大丈夫です。ミナお嬢様は?」
「私も平気。魔封じの腕輪って言うだけあって、魔法が使えないってだけでね」
「...これからどうなるんでしょうか...」
それはアタシにも分からない。アタシが答えられずにいると、
「安心せい。もうすぐ助けが来るでな」
「精霊王様!? 力が復活したんですか!?」
ちゃんと声が聞こえて来たので、アタシは頭上を見上げた。
「あれ!? 居ない!?」
「ここじゃここ」
胸の辺りから声が聞こえる。
「これは...精霊王様から頂いたペンダント!?」
最初に精霊王様とお会いした時に頂いた、木の形をしたペンダントが淡く光っている。
「フム、なんとかここまで力が復活したんでな」
「良かったです! マリーも聞こえる?」
「はい、聞こえます。精霊王様、お久し振りでございます」
「ウム、久しいな」
「それで精霊王様、助けが来るというのは?」
「あぁ、力が復活した瞬間、精霊達にこの場所を知らせておいた。直に助けに来てくれるじゃろ」
「そうだったんですね!」
アタシ達に希望が見えた瞬間だった。
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