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第84話 アリシア視点 vs 闇の眷族四天王 その3

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 私は身体強化を全開にしてアシュラと対峙した。


 戦いになるとは思わず徒手空拳だが、形振り構っていられない。さっきのアシュラの言葉通りなら、エリオットを助けられるタイムリミットは、あと20回鐘が鳴らされるまで。

 それまでに助け出さないと! 時間が無い! 私は最初から全力で拳を振るった。

「ハァァァッ! ヤァァァッ!」

 だが6本の腕にガードされ、本体まで届かない。その間にも鐘は鳴っている。私は焦った。

「フンッ、この程度か」

 アシュラに鼻で笑われた。余裕がありそうな表情がムカつく!

「ウォリャァァァッ!」

 私はローキックに切り替えた。これならどうだ!

「ぬぅ...小癪な...」

 初めてアシュラの顔が歪んだ。良し! 効いてる! このまま一気に!

「舐めるな!」

 アシュラの顔が右に回転した。正面を向いた顔は怒りに満ちている。

「食らえ!」

 6本の腕から容赦無い攻撃が襲って来る。

「くうっ!」

 私は防戦一方になった。その間にも鐘は鳴り続ける。多分、あと10回も無い。このままでは...私は覚悟を決めた。声に出さず心でレムに話し掛ける。

 (レム、聞いて! このままじゃ時間切れになる! だから賭けに出る!)

 (どうする気?)

 (防御を捨てる! その分の力を全て攻撃に回して一気に片を付ける!)

 (なっ!? だ、ダメよそんなの! あなたが死んじゃうじゃない!)

 (ヒールを掛け続けて! 死なない程度に!)

 (そんな...相手だけじゃなく、想像を絶する痛みとも戦うことになるのよ?)

 (いいからやって! 時間が無い!)

 (...分かったわ...)

「全力全開攻撃開始!」

 私は自分のステータスを攻撃に全振りした。

「トリャァァァッ!」

 攻撃力は上がったが、今の私は防御力0に近い状態だ。致命傷だけは避けるようにしているつもりだが、相手の攻撃を全て避けられるはずもない。攻撃を受ける度、レムがヒールを掛けてくれるが、痛みまでは消せない。メチャクチャ痛い! 死ぬほど痛い!

 早く倒さないと! エリオットのためにも自分のためにも! 攻撃のぺースを上げる! アシュラの6本の腕の内、4本まで叩き折った!

「貴様ぁ!」

 アシュラの怒りに満ちた顔が歪む。今だ! 私はローキックを叩き込む! アシュラの体勢が崩れた!

「これでトドメだぁ~!」

 空中高く舞い上がり、かかと落としを食らわす! やった! これで...

「えっ?」

 アシュラの顔が左に回転した。今度のは仏様のような穏やかな顔だ。すると、

「ウソでしょう...」

 あろうことか、アシュラの怪我が全回復した。

 呆然としている私の耳に鐘の音が聞こえた。

「あと5回じゃの」

 無情なアシュラの声が響いた。




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