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第58話 ちみっこと水竜の卵 その14
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腰を抜かしたマリーが落ち着いた所で事情を説明した。
マリー含め護衛の皆さん達も事の経緯を聞いて一様に驚いた様子だった。まぁ無理もない。伝説の存在だったものが今目の前にあるんだから。
おバカさん含め冒険者達は、護衛の皆さん達の馬車に乗せることにした。マリーはまたアタシ達の馬車に移って貰うことにする。ここまでは良い。前と一緒だ。問題は...
「こんな大きな竜が飛んで来たら、王都はパニックになりますよね...」
「あぁ、想像したくないな...」
「事前に先触れを出しておくというのはどうでしょう?」
「なんて言うんだよ...『水竜が飛んで来ますけど大丈夫です。危険はありません』ってか? それ誰が信じるよ?」
「そ、それは...」
そう、誰も信じないだろう。間違いなく大騒ぎになる。軍隊が出動する事態になるだろう。どうしようかと頭を悩ませていると、
「キュイキュイ~♪」
一声鳴いた水竜の体が光に包まれそして...
「えっ!? 消えた!?」
あれだけの巨体が一瞬でかき消えた。すると足元から、
「キュイ~♪」
「えぇっ!? あなた小さくなれるの!?」
猫くらいの大きさに縮まった水竜がそこに居た。
「「「「「「 か、可愛い~♪ 」」」」」」
全員の声がキレイに被った。これなら馬車に乗せていけそうだ。アタシ達は帰路に就いた。
◇◇◇
「可愛いな~♪ ほれ、肉食え肉」
「クッキーもありますわよ♪」
「チョコもあるぞ?」
「果物食べるかな?」
「そろそろ喉渇いたでしょ? お水飲む?」
「キュイキュイ~♪」
現在、小さくなった水竜はアタシの膝の上に居る。みんなに大人気だ。食べ物を貰って嬉しそうにしてる。しかしコイツ何でも良く食べるな。
ちなみに前回の教訓を生かして、今回は少し大き目の馬車にしてるんで、マリーはアタシの横に座ってる。アタシを膝上抱っこ出来ないのが残念そうだ。知ったことじゃないけど。
「あ、そうだ。殿下、あの依頼は取り消しておいた方が良いと思います。ああいうおバカさんがまた現れないとは言い切れませんから」
「あぁ、確かにそうだな。そもそもあんなデカイ卵を運べるはずもないし、依頼自体に無理があったよな」
「えぇ、それに私も幾らお金を積まれても、この子を手放すつもりはありませんし、この子も私から離れたがらないでしょうし」
「あぁ、無理にミナから離したりしたら暴れ出しそうだもんな。そんなことになったらヘタすりゃ国が滅ぶ。そうならないために、あの依頼はすぐに取り消すことにしよう」
「ありがとうございます」
アタシは水竜の背を撫でる。お腹一杯になったのか、水竜は微睡んでいるようだ
「でもどうしましょうか? 寮ってペット禁止なんですよね...」
「あぁ、それなら考えがある。神獣として認めて貰うというのはどうだろう?」
「神獣...ですか? 今までにもそういう存在が?」
「あぁ、この国を建国した初代の王には、常に付き従っていた神獣が居たと伝えられている。その姿は大きくて白い狼だったそうだが」
「なるほど...でもそうなると、難しくないですか? この子青いですし狼じゃないですし」
「新しい神獣が現れたってことにすればいいさ。なにせ竜なんだからな。まず間違いなく神獣と認められるだろう。いや、認めさせてやるさ」
「分かりました。よろしくお願いします」
「でもそうなると、いつまでもこの子っていう訳にもいかないよな。名前が必要だろ。付けてやったらどうだ?」
「名前...」
この水竜を初めて見た時の印象。そう、あれはまるで凪いだ海のように穏やかで、包み込まれるようにとても温かい感じがして...すると微睡んでいた水竜が起きて目が合った。
「ナギ...この子の名前、ナギにします。よろしくね、ナギ」
「キュイキュイ~♪」
ナギが新しい仲間になった瞬間だった。
マリー含め護衛の皆さん達も事の経緯を聞いて一様に驚いた様子だった。まぁ無理もない。伝説の存在だったものが今目の前にあるんだから。
おバカさん含め冒険者達は、護衛の皆さん達の馬車に乗せることにした。マリーはまたアタシ達の馬車に移って貰うことにする。ここまでは良い。前と一緒だ。問題は...
「こんな大きな竜が飛んで来たら、王都はパニックになりますよね...」
「あぁ、想像したくないな...」
「事前に先触れを出しておくというのはどうでしょう?」
「なんて言うんだよ...『水竜が飛んで来ますけど大丈夫です。危険はありません』ってか? それ誰が信じるよ?」
「そ、それは...」
そう、誰も信じないだろう。間違いなく大騒ぎになる。軍隊が出動する事態になるだろう。どうしようかと頭を悩ませていると、
「キュイキュイ~♪」
一声鳴いた水竜の体が光に包まれそして...
「えっ!? 消えた!?」
あれだけの巨体が一瞬でかき消えた。すると足元から、
「キュイ~♪」
「えぇっ!? あなた小さくなれるの!?」
猫くらいの大きさに縮まった水竜がそこに居た。
「「「「「「 か、可愛い~♪ 」」」」」」
全員の声がキレイに被った。これなら馬車に乗せていけそうだ。アタシ達は帰路に就いた。
◇◇◇
「可愛いな~♪ ほれ、肉食え肉」
「クッキーもありますわよ♪」
「チョコもあるぞ?」
「果物食べるかな?」
「そろそろ喉渇いたでしょ? お水飲む?」
「キュイキュイ~♪」
現在、小さくなった水竜はアタシの膝の上に居る。みんなに大人気だ。食べ物を貰って嬉しそうにしてる。しかしコイツ何でも良く食べるな。
ちなみに前回の教訓を生かして、今回は少し大き目の馬車にしてるんで、マリーはアタシの横に座ってる。アタシを膝上抱っこ出来ないのが残念そうだ。知ったことじゃないけど。
「あ、そうだ。殿下、あの依頼は取り消しておいた方が良いと思います。ああいうおバカさんがまた現れないとは言い切れませんから」
「あぁ、確かにそうだな。そもそもあんなデカイ卵を運べるはずもないし、依頼自体に無理があったよな」
「えぇ、それに私も幾らお金を積まれても、この子を手放すつもりはありませんし、この子も私から離れたがらないでしょうし」
「あぁ、無理にミナから離したりしたら暴れ出しそうだもんな。そんなことになったらヘタすりゃ国が滅ぶ。そうならないために、あの依頼はすぐに取り消すことにしよう」
「ありがとうございます」
アタシは水竜の背を撫でる。お腹一杯になったのか、水竜は微睡んでいるようだ
「でもどうしましょうか? 寮ってペット禁止なんですよね...」
「あぁ、それなら考えがある。神獣として認めて貰うというのはどうだろう?」
「神獣...ですか? 今までにもそういう存在が?」
「あぁ、この国を建国した初代の王には、常に付き従っていた神獣が居たと伝えられている。その姿は大きくて白い狼だったそうだが」
「なるほど...でもそうなると、難しくないですか? この子青いですし狼じゃないですし」
「新しい神獣が現れたってことにすればいいさ。なにせ竜なんだからな。まず間違いなく神獣と認められるだろう。いや、認めさせてやるさ」
「分かりました。よろしくお願いします」
「でもそうなると、いつまでもこの子っていう訳にもいかないよな。名前が必要だろ。付けてやったらどうだ?」
「名前...」
この水竜を初めて見た時の印象。そう、あれはまるで凪いだ海のように穏やかで、包み込まれるようにとても温かい感じがして...すると微睡んでいた水竜が起きて目が合った。
「ナギ...この子の名前、ナギにします。よろしくね、ナギ」
「キュイキュイ~♪」
ナギが新しい仲間になった瞬間だった。
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