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「これも入学してちょっと経った辺りね。あなたは階段を登っていた時、コケて転がり落ちそうにならなかった?」

「なってません」

「その時、前のめりに倒れちゃったもんだから、スカートが捲り上がっちゃって『あら見てたのね!』なんていうラッキースケベな展開には」

「だからもう...ラッキースケベはいいですから...」

 私は段々疲れて来た...

「魔道騎士団長子息ルートでも無いのね。じゃあ最後に」 

「やっと終わるんですね...」

「これも入学してちょっと経った辺りね。あなたハンカチを落とさなかった?」

「落としてません」

「本当に!? 名前と学年とクラス名が書いてあるハンカチよ!?」

「小学生じゃないんだから...そんな持ち物全てに名前入れるなんてことしませんよ...」

「そうなのね。じゃあハンカチを落として『これ君のだろ? 落としたよ』なんていうベタな出会いとかは無かったのね?」

「ありませんが、最後だけラッキースケベは無いんですね...」

「あら? ラッキースケベな展開が良かった?」

「いえ、どうでもいいです。というよりラッキースケベな展開ってなんなんですか...」

「義弟ルートでも無いとなると...まさかあなた! 逆ハー狙いなの!?」

「また訳の分からん単語が...結局どういうことなんですか? 一体全体なにを確認してるんですか?」

 私はイライラして来た。

「何をってこの世界のことよ」

「世界!?」

 なんか大きなことを言い出したぞ...

「えぇ、この世界はね、乙女ゲームの世界なのよ!」

「乙女ゲームってなんですか?」

 次々に訳の分からん単語が...

「恋愛シミュレーションを楽しむ世界、つまり疑似恋愛を楽しむ世界なのよ!」

「はぁ...そうなんですか...」

「なによその反応!? あなた信じてないわね!?」

「信じるもなにも...なにがなんだか...」

 混乱の極みなんだが...

「いい? この世界が乙女ゲーム『ヒロインさえ居ればいい』の世界なのは間違いないのよ。その証拠にね、この学園の名前は『リリカル魔法学園』でしょ?」

「そうですね」

「まさしく乙女ゲームの舞台なのよ! そして私は悪役令嬢のアクンジョ公爵令嬢で、あなたはヒロインのヒロウィン男爵令嬢なのよ! そうでしょ?」

「はぁ...確かにヒロウィンですけど...」

「ほらね? そのピンク髪を見た瞬間、すぐ分かったわ! 悪役令嬢は私のように金髪縦ロールで、ヒロインはピンク髪って決まってるのよ!」

「決まってるんですか...」

「永遠不変の法則なのよ!」

 私は頭が痛くなって来た...
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