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「さて、それじゃあそろそろ向かうとするかの」

 そう言ってヘイロンは家を出て飛竜の姿になった。4人も後に続く。

「凄い...もう尻尾が元に戻ってる...」

 シイナが呆れたように呟いた。

「そう言ったじゃろ。ほれ、さっさと乗れ」

 4人はそれぞれヘイロンの背に跨がった。

「飛ばすからな? 振り落とされんよう、しっかり捕まっておれよ? 振り落とされた者は助からんからな? そうなったら儂の腹の中じゃぞ? 儂はそれでも構わんがの。いや寧ろその方が...ジュルジュルジュルジュルリ」

 どうあっても欲望に忠実なヘイロンだった。

「しっかり捕まっているから!」

「わざと振り落とそうとするんじゃねぇぞ!」

「あ、安全運転でお願いね...」

「こ、怖いですわ...」

 4人は早くも後悔しかけていた。

 ヘイロンが飛び立った。最初はゆっくり、次第にスピードを上げて行く。4人は必死になってヘイロンの背中にへばり付いていた。

 月明かりに照らされた景色が凄い速さで後ろに流れて行く。もっとも、目を閉じて歯を食い縛っている4人にそんな光景を楽しんでいる余裕はないが。

 どれくらい飛んだだろうか。4人の体力がそろそろ限界に達しようとした時、

「ほれ、着いたぞ。あれが王都じゃ」

 そう言ってヘイロンがスピードを緩めた。4人は恐る恐る目を開ける。すると宵闇の中に王都の夜景が広がっていた。

「近くに降りるぞ? いくら夜とはいえ、さすがに王都に直接は降りられんからな」

 ヘイロンは王都近くの草薮に着地した。4人は這う這うの体でヘイロンの背中から降りた。

「あの、ヘイロン...乗せて貰えるのは嬉しいんだけど...もうちょっとスピードを落として貰っていいかしら...」

「安全運転で頼むって言ったじゃねぇか...ありゃ完全にスピード違反だろ...」

「し、死ぬかと思った...」

「も、もう嫌ですわ...」

 4人それぞれから不満が上がった。それを受けてヘイロンは、

「おぉ、そりゃ済まんかったの。次はもっとゆっくり飛ぶとしよう」

 全く懲りてない様子でそう言ったのだった。4人は大きなため息を吐いた。

「それでこれからどうすんだ?」

 気を取り直してカレンが尋ねる。

「まずは宿屋じゃな。宿を取って一休みするとしよう。お主らも疲れて腹も減っとるじゃろ?」

「だから無一文なんだってば...」

 シイナがポケットの中を裏返して見せる。

「心配要らん。儂の奢りじゃ」

「...そりゃありがたいけど、その代わり手足を一本ずつ寄越せとか言わないわよね...」

「そんなケチ臭いこと言わんよ。だがそうじゃな...小指の先くらいは」

「極道か!」
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