王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います

真理亜

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「やぁ、ラングレー公。元気そうでなによりだ」

 近衛兵に連れて来られたラングレー公爵は手錠を掛けられ、すっかり憔悴し切った様子でお世辞にも元気があるようには見えなかった。

 ミハエルの痛烈な皮肉である。

「少し痩せたか?」

「......」

 少しどころではない。ラングレー公爵は見る影もなく痩せ細ってしまっている。連日に渡る尋問が如何に過酷な物であるかを如実に物語っていると言えるだろう。

「ところでラングレー公、あの男に見覚えはないか?」

 ミハエルがマジックミラーを指差すと、ラングレー公爵は光を失ったように暗く沈んだ目をゆっくりと向けた。

「あ、アイツは...」

 その途端、ラングレー公爵の目に光が戻り、明らかに怯えたような様子を見せた。

「知っているんだな?」

「...は、はい...」

 ラングレー公爵は力なく俯きながらそう呟いた。

「何者だ?」

「...隣国で汚れ仕事を請け負っている男です...」

「要するに暗殺者ということか?」

「...そうです...」

「なんで知ってる?」

「...隣国と...その...取り引きをする際に同席していて紹介されました...」

 ラングレー公爵はこの期に及んでもまだ言葉を選んでそう言った。ミハエルは苦笑を堪えながら続けた。

「なるほどな。用心棒的立場ということか。しかもラングレー公の顔を知っているという訳だ」

「...はい...」

「そんなヤツを隣国が送り込んで来た。理由は言うまでもないよな?」

「...はい...」

 ラングレー公爵はますます怯えながら囁くように呟いた。

「スモルツ家の子飼いであることは間違いないんだな?」

「...そのはずです...」

「良く分かった。ご苦労さん」

 ミハエルはもう用は済んだとばかりに、ヒラヒラと片手を振って近衛兵に合図した。

 すかさず近衛兵が両脇からラングレー公爵を支えるように拘束した。

「...あ、あの...で、殿下...」

 するとラングレー公爵は慌ててミハエルに取り縋った。

「なんだ?」

「...そ、その...私の身の上は...」

「あぁ、心配するな。全ての供述が済むまではラングレー公の身の安全は保障しよう」 

「あ、ありがとうございます!」

 ラングレー公爵は目に涙を浮かべながら感謝の意を表した。その姿をミハエルは笑いを堪えながら見守っていた。

 なぜなら全ての供述が済んだ時=ラングレー公爵が処刑される時だからだ。

「知らぬが仏とは良く言ったもんだな」

 ラングレー公爵が連れて行かれた後、誰に言うでもなくミハエルは苦笑しながら呟いた。

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