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「そう言えば、ラングレー公が接触していた隣国の貴族家はどこだった?」

「隣国の四大公爵家の一つとして知られるスモルツ家ですね」

「あぁ、確か四大公爵家の中でもタカ派として有名な一族だったか?」

「えぇ、事あるごとに我が国との戦を主張している厄介な連中ですね」

「ラングレー公に近付いたのもそのためか」

「恐らくは」

「フム...」
 
 そこでミハエルは腕を組んで少し考え始めた。

「陛下には報告したか?」

「はい、国王陛下には既に報告済みです。近い内に隣国の王族と会談の場が設けられると思います」

「分かった。ところで騎士団長、ラングレー公の様子はどうだ?」

「今のところ素直に取り調べに応じています」

「そうか。引き続きよろしく頼む。さっきも言った通り、警護を強化してな」

「分かりました」

「それとついでに候補者達の警護も強化しといてくれ」

「了解しました」

 騎士団長が退室した後、ミハエルは窓の外を眺めて一つため息を漏らした。


◇◇◇


 その日、昼食の席にミハエル姿を現したことに候補者達全員が驚いた。なぜなら合宿が始まって三ヶ月あまり、ミハエルが候補者達と昼食を共にしたことなど一度もなかったからだ。

「諸君、昼食の前に報告しておきたいことがある」

 ミハエルは全員が席に着いたことを確認した後、少し緊張した面持ちで話し始めた。

「現在、ラングレー公が仕出かした件において、隣国との関係がやや緊迫感を増している。そのため、諸君の身の回りの警護を強化することにした。窮屈に感じることもあるだろうが我慢して欲しい」

「分かりました」

 ミシェルが候補者全員を代表する形でそう応じた。

「それとこれはまだ確定では無いんだが...」

 ミハエルはちょっと言い辛そうに、

「もしかしたら状況によっては、合宿が終わっても諸君をすぐ家に帰す訳にはいかなくなるかも知れない。申し訳ないが承知おきしておいて欲しい」

 そう言って軽く頭を下げた。

「それは...」

 するとミシェル始め、候補者達全員が顔を見合わせて絶句してしまった。

「合宿後に予定のある者も居るだろうが、緊急事態ということで勘弁願いたい」

 候補者達全員がしばし沈黙していたが、

「致し方ありませんね...皆さん、殿下のご指示に従いましょう」

 ミシェルがそう言って締めたことで、ライラを除く全員が軽く頷いた。ちなみにライラは反論こそしなかったものの、渋い顔でミハエルを睨み付けるだけであった。

「ありがとう。感謝する」

 ミハエルはもう一度軽く頭を下げた後、昼食も摂らずに席を立った。
 
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