117 / 171
117
しおりを挟む
「それは?」
「ま、まぁそのぉ~...さ、ささいな行き違いと言うか...」
ミハエルはライラと同じ女であるソニアに対し、真実を伝えると言うことはとてもじゃないが憚られてしまったので言葉を濁すしかなかった。
自業自得であるため致し方ない。
「なんだかハッキリしませんねぇ~」
当然ながらソニアは不満そうだ。
「ま、まぁそれはともかくだな...ソニア嬢が協力と言うか後押ししてくれると言うのはとても助かる。その調子でどんどんライラを焚き付けてくれ」
「えぇ、もちろんそのつもりです...んん!? ライラ!? まさかの呼び捨て!?」
ミハエルとしては話を逸らすために振った話題だったが、思わずライラのことを親しげに呼んでしまったことで、ソニアの興味を引いてしまったようだ。
慌てて口を塞ぐが既に後の祭りである。
「い、いやその...ま、まぁ...つ、つい本音が...」
最早ミハエルはボロボロであった。
「本音って...なんかもうラブラブな雰囲気なんじゃないんですか?」
ソニアは年相応な恋愛脳の女の子のような表情を浮かべて揶揄った。
「...だといいんだがな...」
ミハエルは自嘲気味に苦笑した。
「そんなお二人が気まずくなるなんて...ホントに一体なにがあったんです?」
「だ、だからそれは...」
結局元に戻ってしまった。ミハエルは頼むからこれ以上触れないでくれと願った。
「ハァ...まぁ、おっしゃりたくないんならそれでいいですが...その件がライラさんを焚き付けるにあたって、地雷を踏むようなことになったりはしませんよね?」
「それは大丈夫...だと思う...」
ミハエルはちょっと自信無さげにそう言った。
「ならいいです。私は私のやり方でお二人をくっ付けようと動きますから」
「あぁ、それでいい。よろしく頼む」
紆余曲折あったにせよ、これでミシェル、ソニア、ファリスの三人をこちらの陣営に引き寄せることに成功した。
ライラを完全包囲する態勢が整ったことで一先ず良しとしよう。ミハエルは心の中でほくそ笑んでいた。
◇◇◇
ソニアとの個人面談を終え、執務室に戻ったミハエルを騎士団長が待ち構えていた。
「騎士団長、どうした?」
「隣国が不穏な動きを見せております」
さっきまでの弛緩した雰囲気が一変し、ミハエルは険しい表情を浮かべた。
「ラングレー公が捕まったことに勘付いたか?」
「どうやらそのようです」
「向こうさんとしても、ラングレー公にペラペラと白状されては都合の悪い輩が居るってことだな」
「えぇ、なにせ密輸に関することですからね」
「ラングレー公回りの警備を強化しろ。消されては堪らん」
「分かりました」
「ま、まぁそのぉ~...さ、ささいな行き違いと言うか...」
ミハエルはライラと同じ女であるソニアに対し、真実を伝えると言うことはとてもじゃないが憚られてしまったので言葉を濁すしかなかった。
自業自得であるため致し方ない。
「なんだかハッキリしませんねぇ~」
当然ながらソニアは不満そうだ。
「ま、まぁそれはともかくだな...ソニア嬢が協力と言うか後押ししてくれると言うのはとても助かる。その調子でどんどんライラを焚き付けてくれ」
「えぇ、もちろんそのつもりです...んん!? ライラ!? まさかの呼び捨て!?」
ミハエルとしては話を逸らすために振った話題だったが、思わずライラのことを親しげに呼んでしまったことで、ソニアの興味を引いてしまったようだ。
慌てて口を塞ぐが既に後の祭りである。
「い、いやその...ま、まぁ...つ、つい本音が...」
最早ミハエルはボロボロであった。
「本音って...なんかもうラブラブな雰囲気なんじゃないんですか?」
ソニアは年相応な恋愛脳の女の子のような表情を浮かべて揶揄った。
「...だといいんだがな...」
ミハエルは自嘲気味に苦笑した。
「そんなお二人が気まずくなるなんて...ホントに一体なにがあったんです?」
「だ、だからそれは...」
結局元に戻ってしまった。ミハエルは頼むからこれ以上触れないでくれと願った。
「ハァ...まぁ、おっしゃりたくないんならそれでいいですが...その件がライラさんを焚き付けるにあたって、地雷を踏むようなことになったりはしませんよね?」
「それは大丈夫...だと思う...」
ミハエルはちょっと自信無さげにそう言った。
「ならいいです。私は私のやり方でお二人をくっ付けようと動きますから」
「あぁ、それでいい。よろしく頼む」
紆余曲折あったにせよ、これでミシェル、ソニア、ファリスの三人をこちらの陣営に引き寄せることに成功した。
ライラを完全包囲する態勢が整ったことで一先ず良しとしよう。ミハエルは心の中でほくそ笑んでいた。
◇◇◇
ソニアとの個人面談を終え、執務室に戻ったミハエルを騎士団長が待ち構えていた。
「騎士団長、どうした?」
「隣国が不穏な動きを見せております」
さっきまでの弛緩した雰囲気が一変し、ミハエルは険しい表情を浮かべた。
「ラングレー公が捕まったことに勘付いたか?」
「どうやらそのようです」
「向こうさんとしても、ラングレー公にペラペラと白状されては都合の悪い輩が居るってことだな」
「えぇ、なにせ密輸に関することですからね」
「ラングレー公回りの警備を強化しろ。消されては堪らん」
「分かりました」
11
お気に入りに追加
3,713
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
捨てられ聖女の私が本当の幸せに気付くまで
海空里和
恋愛
ラヴァル王国、王太子に婚約破棄されたアデリーナ。
さらに、大聖女として国のために瘴気を浄化してきたのに、見えない功績から偽りだと言われ、国外追放になる。
従者のオーウェンと一緒に隣国、オルレアンを目指すことになったアデリーナ。しかし途中でラヴァルの騎士に追われる妊婦・ミアと出会う。
目の前の困っている人を放っておけないアデリーナは、ミアを連れて隣国へ逃げる。
そのまた途中でフェンリルの呼びかけにより、負傷したイケメン騎士を拾う。その騎士はなんと、隣国オルレアンの皇弟、エクトルで!?
素性を隠そうとオーウェンはミアの夫、アデリーナはオーウェンの愛人、とおかしな状況に。
しかし聖女を求めるオルレアン皇帝の命令でアデリーナはエクトルと契約結婚をすることに。
未来を諦めていたエクトルは、アデリーナに助けられ、彼女との未来を望むようになる。幼い頃からアデリーナの側にいたオーウェンは、それが面白くないようで。
アデリーナの本当に大切なものは何なのか。
捨てられ聖女×拗らせ従者×訳アリ皇弟のトライアングルラブ!
※こちら性描写はございませんが、きわどい表現がございます。ご了承の上お読みくださいませ。
婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!
志波 連
恋愛
伯爵令嬢として生まれたローゼリア・ワンドは婚約者であり同じ家で暮らしてきたひとつ年上のアランと隣国から留学してきた王女が恋をしていることを知る。信じ切っていたアランとの未来に決別したローゼリアは、友人たちの支えによって、自分の道をみつけて自立していくのだった。
親たちが子供のためを思い敷いた人生のレールは、子供の自由を奪い苦しめてしまうこともあります。自分を見つめ直し、悩み傷つきながらも自らの手で人生を切り開いていく少女の成長物語です。
本作は小説家になろう及びツギクルにも投稿しています。
婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
突然、婚約解消を告げられたリューディア・コンラット。
彼女はこのリンゼイ国三大魔法公爵家のご令嬢。
彼女の婚約者はリンゼイ国第一王子のモーゼフ・デル・リンゼイ。
彼は眼鏡をかけているリューディアは不細工、という理由で彼女との婚約解消を口にした。
リューディアはそれを受け入れることしかできない。
それに眼鏡をかけているのだって、幼い頃に言われた言葉が原因だ。
余計に素顔を晒すことに恐怖を覚えたリューディアは、絶対に人前で眼鏡を外さないようにと心に決める。
モーゼフとの婚約解消をしたリューディアは、兄たちに背中を押され、今、新しい世界へと飛び出す。
だけど、眼鏡はけして外さない――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる