102 / 171
102
しおりを挟む
「それと騎士団長は『ちょっと気になる事があるから』とも言っていました」
「気になる事?」
ミハエルは首を捻った。
「えぇ、これは例の裏切り者の尋問を終えた後だったんですが」
「あぁ、そう言えば聞くのを忘れていたな。どうなったんだ?」
ミハエルは完全に失念していた。
「まだ口を割りません」
「そうか、中々にしぶといな。で? 気になる事というのは?」
「もしかしたら、時間稼ぎをしているのではないかという事です」
「時間稼ぎとは?」
「事が露見しそうになって最早逃れられないとみたラングレー公が、隣国に亡命を企てているかも知れない可能性があるという事です」
「亡命...そうか...確かに...その可能性があるのを失念していたな...」
ミハエルは唇を噛んだ。
「えぇ、なにせ裏切り者の実家はラングレー公爵家の寄子ですからね。もしもの場合には、寄親であるラングレー公爵家を身を挺してでも庇おうとするんじゃないかと。幼少時からそうするように教育を受けて来ているんではないかと」
「なるほどな...そしてこの場合は、ラングレー公が逃げるための時間を稼ぐ事が、忠誠の証かも知れないという事なんだな...」
ミハエルは心から納得した。
「えぇ、騎士団長はそう感じたそうです。恐らくですが、裏切り者はラングレー公と定時連絡を取り合っていたと思われますので、それが途絶えたとなるとラングレー公は身の危険を察知した可能性があります。ですので、一刻の猶予もないとみて急ぎ現地に飛んだという訳です」
「そう言う事か...だとすれば、例の暗殺者も同じように定時連絡というか成果報告という形で、ラングレー公と連絡を取り合っていた可能性もあるよな..」
「えぇ、そう思います。それがどっちも途絶えたとなると...」
「なにか不手際があったのだと、ラングレー公が気付いてもおかしくはないという事か...」
ミハエルは頭を振った。
「えぇ、そう言う事です」
「そして隣国との繋がりが深いラングレー公は、いざという時に備えて亡命の手筈を整えていたと...」
「えぇ、頭の回る悪党というのは、悪事に手を染める前に予め逃走ルートを確保おくものですからね。ラングレー公がバカでない限りそうしている事でしょうよ」
「なるほどな...状況は良く分かった。引き続きよろしく頼む。報告は随時上げてくれ」
「分かりました」
そう言ってミハエルは詰め所を後にした。そして公務を控えている自室へと向かいながら、遠くのラングレー公爵領へと思いを馳せていた。
「気になる事?」
ミハエルは首を捻った。
「えぇ、これは例の裏切り者の尋問を終えた後だったんですが」
「あぁ、そう言えば聞くのを忘れていたな。どうなったんだ?」
ミハエルは完全に失念していた。
「まだ口を割りません」
「そうか、中々にしぶといな。で? 気になる事というのは?」
「もしかしたら、時間稼ぎをしているのではないかという事です」
「時間稼ぎとは?」
「事が露見しそうになって最早逃れられないとみたラングレー公が、隣国に亡命を企てているかも知れない可能性があるという事です」
「亡命...そうか...確かに...その可能性があるのを失念していたな...」
ミハエルは唇を噛んだ。
「えぇ、なにせ裏切り者の実家はラングレー公爵家の寄子ですからね。もしもの場合には、寄親であるラングレー公爵家を身を挺してでも庇おうとするんじゃないかと。幼少時からそうするように教育を受けて来ているんではないかと」
「なるほどな...そしてこの場合は、ラングレー公が逃げるための時間を稼ぐ事が、忠誠の証かも知れないという事なんだな...」
ミハエルは心から納得した。
「えぇ、騎士団長はそう感じたそうです。恐らくですが、裏切り者はラングレー公と定時連絡を取り合っていたと思われますので、それが途絶えたとなるとラングレー公は身の危険を察知した可能性があります。ですので、一刻の猶予もないとみて急ぎ現地に飛んだという訳です」
「そう言う事か...だとすれば、例の暗殺者も同じように定時連絡というか成果報告という形で、ラングレー公と連絡を取り合っていた可能性もあるよな..」
「えぇ、そう思います。それがどっちも途絶えたとなると...」
「なにか不手際があったのだと、ラングレー公が気付いてもおかしくはないという事か...」
ミハエルは頭を振った。
「えぇ、そう言う事です」
「そして隣国との繋がりが深いラングレー公は、いざという時に備えて亡命の手筈を整えていたと...」
「えぇ、頭の回る悪党というのは、悪事に手を染める前に予め逃走ルートを確保おくものですからね。ラングレー公がバカでない限りそうしている事でしょうよ」
「なるほどな...状況は良く分かった。引き続きよろしく頼む。報告は随時上げてくれ」
「分かりました」
そう言ってミハエルは詰め所を後にした。そして公務を控えている自室へと向かいながら、遠くのラングレー公爵領へと思いを馳せていた。
12
お気に入りに追加
3,701
あなたにおすすめの小説
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
【完結】偽物と呼ばれた公爵令嬢は正真正銘の本物でした~私は不要とのことなのでこの国から出ていきます~
Na20
恋愛
私は孤児院からノスタルク公爵家に引き取られ養子となったが家族と認められることはなかった。
婚約者である王太子殿下からも蔑ろにされておりただただ良いように使われるだけの毎日。
そんな日々でも唯一の希望があった。
「必ず迎えに行く!」
大好きだった友達との約束だけが私の心の支えだった。だけどそれも八年も前の約束。
私はこれからも変わらない日々を送っていくのだろうと諦め始めていた。
そんな時にやってきた留学生が大好きだった友達に似ていて…
※設定はゆるいです
※小説家になろう様にも掲載しています
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる