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「...悪事...と言われますと...」
ドロシーはちょっと言い辛そうだ。
「分かってるだろう? 密輸に関してだ」
「......」
ドロシーはヒュッと息を吐いた。
「ラングレー公爵家は隣国と密輸している。そうだな?」
「......なにもかもご存知なのですね...」
ついにドロシーは諦観したような表情を浮かべて、力なく項垂れながら頷いた。
「ドロシー嬢、君が知っていることを全て話すんだ」
「...私も詳しいことまでは良く分かりませんが...取り引きの場所だけは分かります...」
「どこだ?」
「...我が公爵領と隣国との境にアロマ湖という湖があるんですが、その湖畔に我が家の別荘がありまして...そこが取り引きの場所になっています...」
「アロマ湖だな。分かった」
ミハエルは部屋の隅で尋問の記録を取っている記録係の近衛兵に目で合図を送った。
記録係は一つ頷くと静かに部屋を後にした。代わりに別の記録係が入れ違いに部屋に入って来た。それを確認しながらミハエルは続けた。
「ドロシー嬢、良く話してくれた。こちらも約束を果たそう。君の母親が囲われている家の住所を教えてくれ」
ミハエルは紙とペンを用意しドロシーに渡した。ドロシーは静かにペンを走らせて、
「...書きました...」
紙をミハエルに渡した。
「どれどれ...うん? ラングレー公爵領じゃないのか? 王都の住所になってるぞ?」
「...はい、さすがにご自分のお膝元に置いておくのは躊躇われたのでしょう...なのでこの王都に囲ったんだと思います...」
「なるほどな...良く分かった。おい」
ミハエルは先程入れ替わったばかりの記録係を呼んだ。そしてドロシーが書いた紙を渡す。
「急ぎこの住所の場所に向かってドロシー嬢の母親を救出しろ。ドロシー嬢、母親の名前は?」
「...イザベラです...」
「分かったな? 行け」
「ハッ!」
記録係が部屋を出て行った後、ドロシーがポツリと呟いた。
「...間に合うでしょうか...」
「分からん。祈るしかないな。だが君を始末しようとしたのが昨日の夜だ。少なくともその成否を確認してからになると思いたい」
「...はい...」
ドロシーはミハエルの言葉に頷きながら、両手を組み合わせて祈りのポーズを取った。
「朗報を待っていてくれ」
それだけ言ってミハエルは部屋を後にした。
「殿下」
近衛兵の詰め所に戻ったミハエルに、近衛兵の一人が話し掛けて来た。
「なんだ?」
「暗殺者の男が吐きました」
「なに? どんな内容だった?」
「ラングレー公爵の指示を受けてやったと。更にドロシー嬢を始末した後は、ドロシー嬢の母親も始末する予定だったそうです」
「そうか。ならイザベラ殿はまだ無事だな」
ミハエルは胸を撫で下ろした。
ドロシーはちょっと言い辛そうだ。
「分かってるだろう? 密輸に関してだ」
「......」
ドロシーはヒュッと息を吐いた。
「ラングレー公爵家は隣国と密輸している。そうだな?」
「......なにもかもご存知なのですね...」
ついにドロシーは諦観したような表情を浮かべて、力なく項垂れながら頷いた。
「ドロシー嬢、君が知っていることを全て話すんだ」
「...私も詳しいことまでは良く分かりませんが...取り引きの場所だけは分かります...」
「どこだ?」
「...我が公爵領と隣国との境にアロマ湖という湖があるんですが、その湖畔に我が家の別荘がありまして...そこが取り引きの場所になっています...」
「アロマ湖だな。分かった」
ミハエルは部屋の隅で尋問の記録を取っている記録係の近衛兵に目で合図を送った。
記録係は一つ頷くと静かに部屋を後にした。代わりに別の記録係が入れ違いに部屋に入って来た。それを確認しながらミハエルは続けた。
「ドロシー嬢、良く話してくれた。こちらも約束を果たそう。君の母親が囲われている家の住所を教えてくれ」
ミハエルは紙とペンを用意しドロシーに渡した。ドロシーは静かにペンを走らせて、
「...書きました...」
紙をミハエルに渡した。
「どれどれ...うん? ラングレー公爵領じゃないのか? 王都の住所になってるぞ?」
「...はい、さすがにご自分のお膝元に置いておくのは躊躇われたのでしょう...なのでこの王都に囲ったんだと思います...」
「なるほどな...良く分かった。おい」
ミハエルは先程入れ替わったばかりの記録係を呼んだ。そしてドロシーが書いた紙を渡す。
「急ぎこの住所の場所に向かってドロシー嬢の母親を救出しろ。ドロシー嬢、母親の名前は?」
「...イザベラです...」
「分かったな? 行け」
「ハッ!」
記録係が部屋を出て行った後、ドロシーがポツリと呟いた。
「...間に合うでしょうか...」
「分からん。祈るしかないな。だが君を始末しようとしたのが昨日の夜だ。少なくともその成否を確認してからになると思いたい」
「...はい...」
ドロシーはミハエルの言葉に頷きながら、両手を組み合わせて祈りのポーズを取った。
「朗報を待っていてくれ」
それだけ言ってミハエルは部屋を後にした。
「殿下」
近衛兵の詰め所に戻ったミハエルに、近衛兵の一人が話し掛けて来た。
「なんだ?」
「暗殺者の男が吐きました」
「なに? どんな内容だった?」
「ラングレー公爵の指示を受けてやったと。更にドロシー嬢を始末した後は、ドロシー嬢の母親も始末する予定だったそうです」
「そうか。ならイザベラ殿はまだ無事だな」
ミハエルは胸を撫で下ろした。
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