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 その日の夕食の席に現れたミハエルは、候補者達全員を見渡しながらこう言った。

「君達に報告がある。約三ヶ月に及ぶ合宿生活もそろそろ終わりを迎えようとしている今日この頃、最後の最後に僕との個人面談の時間を設けようと思っているんだ」

「個人面談!?」

 ここでもやはり、候補者一同を代表する形でミシェルが口を開いた。

「そうだ。僕と二人っきり。間に誰も入れないから、安心して思いの丈を僕にぶつけて欲しい」

「具体的にはどのようなことを話せばいいんですの?」

「なんでも構わない。本合宿の感想でも今後の展望でも。それこそ全く関係ない趣味嗜好の話でもなんでもOKだ。好きな話題をセレクトしてくれ。僕は君達に合わせるから気兼ねなく話して欲しい」

「なるほど...」

 候補者達はそれぞれ違った表情を見せた。個人面談の話を初めて聞いたミシェルとソニアは興味津々と言った感じで頷いていたが、ライラは胡乱気にミハエルを睨み付けていた。

 そして事前に知っていたファリスだけは無表情のままだった。

「君達さえ良ければ早速明日から始めようと思っている。トップバッターはミシェル嬢、君からでどうかな?」

「畏まりました」

 ミハエルとしてはいきなりファリスを指名しても良かったのだが、それだとライラを警戒させてしまうかも知れないと考え、ここは序列通りにまずはミシェルを指名することにした。

「時間は午後を予定している。そのつもりでいてくれ」

「了解致しました」

 ミハエルはそれだけ言うと席を立った。


◇◇◇


 その後、ミハエルはとある部屋に姿を現した。
 
「どうだ? なにか吐いたか?」

 ミハエルは部屋の中央にある大きな姿見を見詰めながら、部屋に居る者にそう尋ねた。
 
「いえ、まだ黙りを続けております」

「丸二日も黙りのままか。全く持って大した精神力だな」

 姿見には尋問中のドロシーの姿が映っている。この姿見はマジックミラーになっていて隣の部屋の様子が手に取るように分かる。

 声までは聞こえないが、尋問者に詰め寄られても眉一つ動かさず、ただただ黙りを決め込んでいる様子のドロシーの姿は、腐ってもさすが公爵令嬢と言った風情か。

「襲撃者共の自供は取れたか?」

「えぇ、どうやら金で雇われただけのようです」

「誰に頼まれたか吐いたか?」

「それが...黒いフードで顔を覆っていて男だとしか分からないとのことでした...」

「そうか...まぁ、そんなもんだよな...」

 予想された事とはいえ、襲撃者の線からはドロシーの実家であるラングレー公爵家に辿り着くことは出来なかったようだ。
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