86 / 171
86
しおりを挟む
その日の夕食の席に現れたミハエルは、候補者達全員を見渡しながらこう言った。
「君達に報告がある。約三ヶ月に及ぶ合宿生活もそろそろ終わりを迎えようとしている今日この頃、最後の最後に僕との個人面談の時間を設けようと思っているんだ」
「個人面談!?」
ここでもやはり、候補者一同を代表する形でミシェルが口を開いた。
「そうだ。僕と二人っきり。間に誰も入れないから、安心して思いの丈を僕にぶつけて欲しい」
「具体的にはどのようなことを話せばいいんですの?」
「なんでも構わない。本合宿の感想でも今後の展望でも。それこそ全く関係ない趣味嗜好の話でもなんでもOKだ。好きな話題をセレクトしてくれ。僕は君達に合わせるから気兼ねなく話して欲しい」
「なるほど...」
候補者達はそれぞれ違った表情を見せた。個人面談の話を初めて聞いたミシェルとソニアは興味津々と言った感じで頷いていたが、ライラは胡乱気にミハエルを睨み付けていた。
そして事前に知っていたファリスだけは無表情のままだった。
「君達さえ良ければ早速明日から始めようと思っている。トップバッターはミシェル嬢、君からでどうかな?」
「畏まりました」
ミハエルとしてはいきなりファリスを指名しても良かったのだが、それだとライラを警戒させてしまうかも知れないと考え、ここは序列通りにまずはミシェルを指名することにした。
「時間は午後を予定している。そのつもりでいてくれ」
「了解致しました」
ミハエルはそれだけ言うと席を立った。
◇◇◇
その後、ミハエルはとある部屋に姿を現した。
「どうだ? なにか吐いたか?」
ミハエルは部屋の中央にある大きな姿見を見詰めながら、部屋に居る者にそう尋ねた。
「いえ、まだ黙りを続けております」
「丸二日も黙りのままか。全く持って大した精神力だな」
姿見には尋問中のドロシーの姿が映っている。この姿見はマジックミラーになっていて隣の部屋の様子が手に取るように分かる。
声までは聞こえないが、尋問者に詰め寄られても眉一つ動かさず、ただただ黙りを決め込んでいる様子のドロシーの姿は、腐ってもさすが公爵令嬢と言った風情か。
「襲撃者共の自供は取れたか?」
「えぇ、どうやら金で雇われただけのようです」
「誰に頼まれたか吐いたか?」
「それが...黒いフードで顔を覆っていて男だとしか分からないとのことでした...」
「そうか...まぁ、そんなもんだよな...」
予想された事とはいえ、襲撃者の線からはドロシーの実家であるラングレー公爵家に辿り着くことは出来なかったようだ。
「君達に報告がある。約三ヶ月に及ぶ合宿生活もそろそろ終わりを迎えようとしている今日この頃、最後の最後に僕との個人面談の時間を設けようと思っているんだ」
「個人面談!?」
ここでもやはり、候補者一同を代表する形でミシェルが口を開いた。
「そうだ。僕と二人っきり。間に誰も入れないから、安心して思いの丈を僕にぶつけて欲しい」
「具体的にはどのようなことを話せばいいんですの?」
「なんでも構わない。本合宿の感想でも今後の展望でも。それこそ全く関係ない趣味嗜好の話でもなんでもOKだ。好きな話題をセレクトしてくれ。僕は君達に合わせるから気兼ねなく話して欲しい」
「なるほど...」
候補者達はそれぞれ違った表情を見せた。個人面談の話を初めて聞いたミシェルとソニアは興味津々と言った感じで頷いていたが、ライラは胡乱気にミハエルを睨み付けていた。
そして事前に知っていたファリスだけは無表情のままだった。
「君達さえ良ければ早速明日から始めようと思っている。トップバッターはミシェル嬢、君からでどうかな?」
「畏まりました」
ミハエルとしてはいきなりファリスを指名しても良かったのだが、それだとライラを警戒させてしまうかも知れないと考え、ここは序列通りにまずはミシェルを指名することにした。
「時間は午後を予定している。そのつもりでいてくれ」
「了解致しました」
ミハエルはそれだけ言うと席を立った。
◇◇◇
その後、ミハエルはとある部屋に姿を現した。
「どうだ? なにか吐いたか?」
ミハエルは部屋の中央にある大きな姿見を見詰めながら、部屋に居る者にそう尋ねた。
「いえ、まだ黙りを続けております」
「丸二日も黙りのままか。全く持って大した精神力だな」
姿見には尋問中のドロシーの姿が映っている。この姿見はマジックミラーになっていて隣の部屋の様子が手に取るように分かる。
声までは聞こえないが、尋問者に詰め寄られても眉一つ動かさず、ただただ黙りを決め込んでいる様子のドロシーの姿は、腐ってもさすが公爵令嬢と言った風情か。
「襲撃者共の自供は取れたか?」
「えぇ、どうやら金で雇われただけのようです」
「誰に頼まれたか吐いたか?」
「それが...黒いフードで顔を覆っていて男だとしか分からないとのことでした...」
「そうか...まぁ、そんなもんだよな...」
予想された事とはいえ、襲撃者の線からはドロシーの実家であるラングレー公爵家に辿り着くことは出来なかったようだ。
22
お気に入りに追加
3,713
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
【完結】あなたのいない世界、うふふ。
やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。
しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。
とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。
===========
感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。
4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。
暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ
Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます!
ステラの恋と成長の物語です。
*女性蔑視の台詞や場面があります。
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
捨てられ聖女の私が本当の幸せに気付くまで
海空里和
恋愛
ラヴァル王国、王太子に婚約破棄されたアデリーナ。
さらに、大聖女として国のために瘴気を浄化してきたのに、見えない功績から偽りだと言われ、国外追放になる。
従者のオーウェンと一緒に隣国、オルレアンを目指すことになったアデリーナ。しかし途中でラヴァルの騎士に追われる妊婦・ミアと出会う。
目の前の困っている人を放っておけないアデリーナは、ミアを連れて隣国へ逃げる。
そのまた途中でフェンリルの呼びかけにより、負傷したイケメン騎士を拾う。その騎士はなんと、隣国オルレアンの皇弟、エクトルで!?
素性を隠そうとオーウェンはミアの夫、アデリーナはオーウェンの愛人、とおかしな状況に。
しかし聖女を求めるオルレアン皇帝の命令でアデリーナはエクトルと契約結婚をすることに。
未来を諦めていたエクトルは、アデリーナに助けられ、彼女との未来を望むようになる。幼い頃からアデリーナの側にいたオーウェンは、それが面白くないようで。
アデリーナの本当に大切なものは何なのか。
捨てられ聖女×拗らせ従者×訳アリ皇弟のトライアングルラブ!
※こちら性描写はございませんが、きわどい表現がございます。ご了承の上お読みくださいませ。
拝啓、王太子殿下さま 聞き入れなかったのは貴方です
LinK.
恋愛
「クリスティーナ、君との婚約は無かった事にしようと思うんだ」と、婚約者である第一王子ウィルフレッドに婚約白紙を言い渡されたクリスティーナ。
用意された書類には国王とウィルフレッドの署名が既に成されていて、これは覆せないものだった。
クリスティーナは書類に自分の名前を書き、ウィルフレッドに一つの願いを叶えてもらう。
違うと言ったのに、聞き入れなかったのは貴方でしょう?私はそれを利用させて貰っただけ。
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる