王妃候補に選ばれましたが、全く興味の無い私は野次馬に徹しようと思います

真理亜

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「あれ? でもちょっと早過ぎるんじゃありません?」

 安堵したはいいが、ライラは一つ疑問に思う点に気付いた。

「なにが?」

「だってドロシーさんが書いた最後の指示書って言うかメモは、結局彼らの手元には届かなかった訳ですよね? それなのにもうウチの実家を襲おうとしてたんですか?」

「あぁ、その点は僕も気になってた。襲撃者達のフライングなのか、それともライラ嬢が言っていたなんらかの次善の策、つまり伝書鳩が届かなかった時の替えの手段とやらで既に連絡済みだったのかどうか。そこら辺は襲撃者達を拷問して明らかにするしかないだろうと思っている」

「ご、拷問ですか...」

 尋問じゃないんだ...と分かって、ライラは背筋が凍る思いをしたのだった。

「当たり前だろう? 襲撃者連中は明らかにその道のプロというか、傭兵崩れのような輩ばっかりだったそうだから、貴族に対する扱い方と違って遠慮なんかしないさ。吐くまで痛め続ける。水攻め火攻めなんでもござれだ」

「ひっ...」

 ライラは声にならない悲鳴を上げた。

「彼らのためにもドロシー嬢にはさっさと吐いて貰いたいもんなんだがな...」

「まだ黙秘を続けているんですか?」

「あぁ、黙りのままだ。全く大した精神力だよ...」

 疲れで目がショボショボしているのだろう。ミハエルは目蓋を指でゆっくりと擦っていた。

「もしかして殿下、ずっとお休みになっておられないのですか?」

「寝てなんかいられないさ...」

「でもお体に障りますよ? お気持ちは良く分かりますが、少し横になって下さい」

 するとミハエルは急に悪戯っぽい表情を浮かべた。

「君が膝枕してくれるって言うなら考えんでもないな♪」 

「えっ...」

 これにはさすがにライラも絶句してしまった。ミハエルはしてやったりと言ったような顔になって「アハハ♪ 冗談だよ冗談♪」と笑い飛ばす気だったのだが、

「...いいですよ...」

「えっ!? いいの!?」

 今度はミハエルが絶句する番だった。

「...えぇ、殿下には実家の両親を救って頂いた恩がありますし...私如きの膝で良いのでしたら...」

 最後の方は恥ずかしさの余り尻窄みになってしまったが、ライラはハッキリと許諾の意を示した。

「で、ではお言葉に甘えて...」

 据え膳食わぬはなんとやらではないが、こんなチャンスを逃す手はない。ミハエルは躊躇いがちにライラの隣に回った。

「ど、どうぞ...」

 一方のライラは覚悟完了したような表情を浮かべて固まっていた。ミハエルはそっとライラの膝の上に己の頭を載せる。

「柔らかい...温かい...それになんて良い香り...」

 ミハエルは即寝落ちした。

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