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「ライラさん? どうかしましたか?」

 ファリスはあくまで冷静に問い掛けた。

「どうもこうもありませんよ! 明らかにおかしいじゃないですか!」

 ライラは立ち上がって抗議した。

「どこがですか?」

「なにもかもがですよ! ミハエル殿下はともかく、私が2番ってのは有り得ないでしょう~!?」

「お疑いになられるならどうぞご確認下さい」

 そう言ってファリスは全員が書いた紙を掲げた。ライラはそれを引ったくるようにして受け取り、一枚一枚調べて行った。

「そ、そんな...ど、どうやって!?」

 ライラは愕然としてしまった。そこには確かにライラの名前が2つ、ミハエルの名前が3つ書かれていたのだ。そして一枚だけソニアの名前が書かれた紙があった。

 全員で6人だから数は合っているし、どこにも細工した様子もない。ちなみにライラはソニアの名前を書いた。

「ご理解頂けましたか?」

 ファリスが静かに問い掛ける。ライラは項垂れながら軽く頷くしかなかった。

「では中央のソファーにどうぞ。5分間、たっぷりと語り合って下さい」

 ミハエルはイソイソと、ライラは渋々とソファーに座った。ライラとしては少しでも距離を置いて座りたかったのだが、なにせ二人掛けのソファーなものでどうしても限界がある。

 しかもそんなライラの気持ちなんかお構い無く、あろうことかミハエルはライラに体ごと密着し、更にライラの背中に腕を回して肩を抱き締めるようにして座って来た。

「ぴえっ!?」

 余りにも大胆過ぎるミハエルの行動に、ライラは完全に固まってしまった。

「そんなに緊張しないで。楽にして」

「ぴええっ!?」

 ミハエルはライラの耳元で囁くように言葉を紡ぐ。ライラはミハエルの息遣いまで感じるような至近距離からの攻撃に、ますます身体を強張らせてしまった。

「君の髪はサラサラとしていてとても美しい。それにとても芳しい香りがする」

 尚もミハエルは攻撃の手を緩めない。ライラの髪を一掬いして感触を確かめ、更に匂いを嗅いだりもした。

「ぴえええっ!?」

 途端にライラは茹で蛸のように真っ赤になってしまった。

「メガネを外してもいいかな?」

 次にミハエルは返事も待たず、ライラの分厚いメガネをそっと外してしまった。ライラは既にされるがままになってしまっている。

「あぁ、やっぱり君の瞳は素敵だ...まるで深い海のように、ずっと見詰めていると吸い込まれてしまいそうだよ...」

 ミハエルはうっとりと目を潤ませた。ライラは完全に魂の脱け殻状態になってしまった。
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