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「ハァ...それは...どうも?」

 ライラはどう反応したら良いのか分からず、曖昧に頷くのみだった。そんなライラの様子を気にすることなく、更にミハエルは続ける。

「そもそも君は、未来の王妃を決めるというこの候補者合宿が、一体どういった理由で行われるようになったのか、その経緯を知ってるかい?」

「いえ、全く興味がありませんでしたので」

 ライラは素直に答えた。

「その昔、時の王太子が選んだ婚約者、つまりは未来の王妃がとんでもない散財を繰り返す悪女だったからだ。しかもそれが何代かに渡って続いた結果、裕福だった我が国は忽ち傾いてしまった」

「それはそれは...」

 ライラはなんとも言えない表情を浮かべた。

「業を煮やした元老院は王家に対して、次代の王妃を選定する際に自分達にも裁量権を寄越せと要求した。つまりは王妃を決める前に口を挟ませろという訳だな。王家としてはその要求を呑むしかなかった。自分達だけでは自浄効果が見込めないと認めるしかなかったからな」

「ちなみにそれまではどうやって王妃を選んでいたんですか?」

「各派閥の力関係を考慮して何人か候補を選び、その中から王家が、要するに王太子が自分の好みで選んでいた」

「それはそれは...」

 そりゃ悪女を選ぶ可能性が高くなる訳だなとライラは首肯した。

「元老院は派閥の力関係無しに、国中から候補となりそうな令嬢を何人かピックアップしてリストを作成した。そしてその候補者達を一同に集めて直に為人を確認しようとしたんだ。それが候補者合宿の始まりという訳だな」

「なるほど...つまりここに集められた候補者達全員、元老院から未来の王妃として相応しいと認められた面々ってことなんですね? 私も含めて」

「ちょっと違う。君を除いて全員だ」

「なんですと!?」

 ライラはビックリして目を剥いた。

「元老院が作って来たリストに君の名前はなかった。僕が捩じ込んだんだ」

「捩じ込んだ!?」

「あぁ実はな、王家に対して一つだけ許された権利があるんだ。それは一人だけ候補者を立てても良いということだ。その権利を使って君をここに呼んだ」

「な、なんてハタ迷惑な...」

 ライラは心底イヤそうな顔をした。

「そんな顔しないで欲しいな。ライラ嬢、君は希望の星なんだから」

「いやいや、なんですかそれ...意味が分かりませんけど...」

 そこでミハエルは急に改まった顔になった。

「僕はね、今回で候補者合宿そのものを無くそうと思っているんだよ」
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