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「あ、あの~...」

 するとここでライラが遠慮がちに手を挙げた。

「なんだ?」

「それって私もお茶会を主催しなきゃならないんでしょうか?」

「当然だ。例外は認めん」

「あの~...でもですねぇ...私これまでお茶会に参加したこともあんまり無ければ、ましてや主催なんかしたことも無いんですけど...」

「なに!? 本当か!? そんなこと有り得るのか!? 君だって貴族令嬢の端くれだろう?」

 ミハエルは驚きと呆れの入り混じったような表情を浮かべた。

「確かにそうなんですけどね...お恥ずかしながら私の家って男爵家とは名ばかりの貧乏貴族でして...貴族の綺羅びやかな世界とは無縁に慎ましく生きて来たんですよね...私は子供の頃から領地で畑仕事を手伝ったり、牧場で牛や馬の世話なんかもしてました...幸いなことに私には文才があったんで、その時の体験を生かして小説を書いたりしてみたところ、なんとこれが大当り! 今じゃ私の本の印税で我が家の財政を立て直すことに成功した程なんですよ!」

「そ、そうなのか...」

 ライラの勢いにミハエルはちょっと引いた。

「なので貴族令嬢としての嗜みのようなものが体に染み付いていません。いきなりお茶会を開けと言われてもなにをどうしたらいいのやらサッパリなんですが...」

「なるほど。良く分かった。ならライラ嬢、君のお茶会の順番は最後に回してやろう。他の候補者達のお茶会に参加して良く学ぶといい」

「え~...どうしてもお茶会開かなきゃダメなんですか~?」

 ライラは口を尖らせて不貞腐れた。

「ダメだ」

 だがミハエルは鰾膠も無い。

「面倒だなぁ...」

「文句言うな」

「だってそもそも私、野次馬としてここに来てる身なんですよ? 時間と労力の無駄じゃありません?」

「無駄ではない。野次馬だと思っているのは君だけで、我々は候補者の一員だと思っているんだからな。それに君にとっても貴族令嬢としての嗜みを覚える良い機会じゃないか? 君だっていつかは嫁に行くんだ。その時に恥ずかしい思いをしたくないだろう? 婚期を逃したくないだろう?」

「そんなの必要ありませんよ。私は誰とも結婚する気ありませんし」

 ライラはキッパリと言い切った。

「なんだって!? 一生独身で居るつもりなのか!?」

 ミハエルは目を見張った。

「えぇ、私は貴族令嬢としてではなく、職業婦人として生きて行くつもりですので! これからも小説をどんどん書き続けて行きますよ!」

 ライラは胸を張ってそう宣言した。
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