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第2章 聖女と聖獣
第25話 間一髪
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菜園には先程の弛緩した空気とは一転して、緊迫した空気が流れていた。
「セイラ様! どうか落ち着いて下さい! まだ子供なんです! 許してあげて下さい!」
「い~やぶっ殺す! 一度ならず二度までもっ! 絶対許さんっ! 殺すったら殺す!」
完全にイッちゃったセイラは、背負っていたリュックからクロスボウを出して構えた。それをなんとかタチアナが宥めようとしている。
すると当の本人? はタチアナの腕の中から逃れるように翼を広げ、
「シャァーー!!」
と威嚇しながら空に飛び上がった。
「キャッ!」
その勢いでタチアナは後方にふっ飛ばされた。
「タチアナっ!」
リシャールが慌てて駆け寄る。黒い生物は空中に飛び上がると、円を描くようにリシャール達の周りを飛んだ後、空中に停止した。
すると、空中にホバリングしている黒い生物の小さな体から、信じられない程の膨大な魔力が溢れ、その赤い瞳は爛々と輝いてセイラをロックオンした。
小さい牙を覗かせる口がゆっくり開くと、口内に魔力が収束した小さな黒い塊が発生した。その塊は次第に大きくなり、収束される魔力がどんどん増えて、今にも限界を超え発射体制に入ろうとしている。
一方のセイラはというと、こちらは全身に魔力を漲らせ体から淡い光を発している。構えたクロスボウの矢は神々しいような白い光に包まれていた。
それはまるで、邪悪なる物を殲滅せんとする聖なる輝きにも見えた。セイラが更に弓を引き絞る。白い光が段々と大きくなって来た。
まさに黒と白。対象的な両者の対峙は、側で見ているリシャールに本能的な恐怖を与えた。両者の攻撃が発射されるまさに寸前、凛としたタチアナの声が辺りに響き渡った。
「止めなさいっ!」
ふっ飛ばされたはずのタチアナは、いつの間にか両者の間に割って入っていた。するとタチアナの叫びが届いたのか、黒い生物の攻撃は放たれる前に飛散し、あれだけ溢れていた魔力もいつの間にか消えていた。
空中にホバリングしていた小さな体はゆっくりと降りて来て、タチアナの腕の中に収まった。赤い瞳の輝きも元に戻っている。
一方のセイラも構えを解き矢を下ろした。魔力の放出も止まっている。辺りは何事もなかったかのように静まり返り、呆然と立ち尽くすリシャール以外は普通に戻っていた。
ただセイラは、眼光だけは鋭く黒い生物を睨み付けていた。そこへ異変を察知したのか、神官達が集団でやって来た。集団の先頭に立つカリム神官は、リシャール達を見て叫ぶ。
「一体何事ですかっ!?」
すぐに答えられる者は誰も居なかった。
「セイラ様! どうか落ち着いて下さい! まだ子供なんです! 許してあげて下さい!」
「い~やぶっ殺す! 一度ならず二度までもっ! 絶対許さんっ! 殺すったら殺す!」
完全にイッちゃったセイラは、背負っていたリュックからクロスボウを出して構えた。それをなんとかタチアナが宥めようとしている。
すると当の本人? はタチアナの腕の中から逃れるように翼を広げ、
「シャァーー!!」
と威嚇しながら空に飛び上がった。
「キャッ!」
その勢いでタチアナは後方にふっ飛ばされた。
「タチアナっ!」
リシャールが慌てて駆け寄る。黒い生物は空中に飛び上がると、円を描くようにリシャール達の周りを飛んだ後、空中に停止した。
すると、空中にホバリングしている黒い生物の小さな体から、信じられない程の膨大な魔力が溢れ、その赤い瞳は爛々と輝いてセイラをロックオンした。
小さい牙を覗かせる口がゆっくり開くと、口内に魔力が収束した小さな黒い塊が発生した。その塊は次第に大きくなり、収束される魔力がどんどん増えて、今にも限界を超え発射体制に入ろうとしている。
一方のセイラはというと、こちらは全身に魔力を漲らせ体から淡い光を発している。構えたクロスボウの矢は神々しいような白い光に包まれていた。
それはまるで、邪悪なる物を殲滅せんとする聖なる輝きにも見えた。セイラが更に弓を引き絞る。白い光が段々と大きくなって来た。
まさに黒と白。対象的な両者の対峙は、側で見ているリシャールに本能的な恐怖を与えた。両者の攻撃が発射されるまさに寸前、凛としたタチアナの声が辺りに響き渡った。
「止めなさいっ!」
ふっ飛ばされたはずのタチアナは、いつの間にか両者の間に割って入っていた。するとタチアナの叫びが届いたのか、黒い生物の攻撃は放たれる前に飛散し、あれだけ溢れていた魔力もいつの間にか消えていた。
空中にホバリングしていた小さな体はゆっくりと降りて来て、タチアナの腕の中に収まった。赤い瞳の輝きも元に戻っている。
一方のセイラも構えを解き矢を下ろした。魔力の放出も止まっている。辺りは何事もなかったかのように静まり返り、呆然と立ち尽くすリシャール以外は普通に戻っていた。
ただセイラは、眼光だけは鋭く黒い生物を睨み付けていた。そこへ異変を察知したのか、神官達が集団でやって来た。集団の先頭に立つカリム神官は、リシャール達を見て叫ぶ。
「一体何事ですかっ!?」
すぐに答えられる者は誰も居なかった。
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