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第1章 聖女誕生
第17話 妥協案
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「ちょ、ちょっと待ってくれ、セイラ。本当にその2択しかないのか!?」
リシャールが青い顔で尋ねる。
「私が今思い付いたのは2つだけだ。他になにか良い案があるなら教えてくれ」
「い、いや、急に言われても...」
「まぁ、妥協案くらいなら提示できるけどな」
「妥協案? それは?」
「基本的には2つ目で進める。誰でも良い、聖女候補の中からお飾り聖女を選んで、そいつに対外的なこと、政治的なことを全て任せる。私は裏に回ってサポートする。そしてここからが肝心なんだが」
そこでセイラはいったん言葉を切って全員を見回す。
「私が最後の聖女だっていうことを、ここに集まってる教会の上層部及び国のお偉方に秘密裏に周知させる。情報漏れには細心の注意を払う必要があるが。理由は危機感を煽るためだ。1つ目の時に言った、魔の者に対する備えと飢饉に対する備えを、私が死ね前にちゃんとやっておかないと国が滅ぶってな。政権や利権争いしてる暇なんか無いってな。腐敗した貴族どもや官僚どもを一掃する良い機会なんじゃないか? そうやって膿を出し切って、国に対し真摯に取り組む姿勢を見せれば、私も協力は惜しまない。魔の者や飢饉対策にも積極的に参加しよう。そうなれば、国民に対して最後の聖女という事実を伏せておいても構わないだろう。私が死ぬギリギリまでな。これならどうだ?」
部屋は再び静寂に包まれた。
「今すぐには決められない...国王交えて話し合う必要がある...」
掠れた声でリシャールが答える。
「あぁ、そりゃ当然だな。しっかり話し合ってくれ」
そう言ってセイラは部屋を出ようとする。
「セイラ!? どこに行くんだ!?」
「着替えるんだよ。この服どうにも窮屈なんでな。もう儀式は終わったんだし良いだろ?」
そのまま控え室に戻ってしまったセイラを止める者は誰も居なかった。
◇◇◇
セイラが退出してからもしばらくは誰も口を開こうとしなかった。衝撃的な事実と突き付けられた現実に思考停止してしまっていた。と、そこへまだ若い神官が慌てて飛び込んで来た。
「し、失礼します! 大神官様! 大切な儀式の最中に申し訳ありません!」
「あぁ、もう儀式は終わりましたから大丈夫ですよ? どうしました?」
ゴドウィンは物憂げに答えた。
「は、はい! セイラ様がお作りになられた聖水の鑑定結果が出たのですが、聖水ではありませんでした!」
「というと?」
「なんと...エリクサーでした!」
部屋は再び静寂に包まれた。
リシャールが青い顔で尋ねる。
「私が今思い付いたのは2つだけだ。他になにか良い案があるなら教えてくれ」
「い、いや、急に言われても...」
「まぁ、妥協案くらいなら提示できるけどな」
「妥協案? それは?」
「基本的には2つ目で進める。誰でも良い、聖女候補の中からお飾り聖女を選んで、そいつに対外的なこと、政治的なことを全て任せる。私は裏に回ってサポートする。そしてここからが肝心なんだが」
そこでセイラはいったん言葉を切って全員を見回す。
「私が最後の聖女だっていうことを、ここに集まってる教会の上層部及び国のお偉方に秘密裏に周知させる。情報漏れには細心の注意を払う必要があるが。理由は危機感を煽るためだ。1つ目の時に言った、魔の者に対する備えと飢饉に対する備えを、私が死ね前にちゃんとやっておかないと国が滅ぶってな。政権や利権争いしてる暇なんか無いってな。腐敗した貴族どもや官僚どもを一掃する良い機会なんじゃないか? そうやって膿を出し切って、国に対し真摯に取り組む姿勢を見せれば、私も協力は惜しまない。魔の者や飢饉対策にも積極的に参加しよう。そうなれば、国民に対して最後の聖女という事実を伏せておいても構わないだろう。私が死ぬギリギリまでな。これならどうだ?」
部屋は再び静寂に包まれた。
「今すぐには決められない...国王交えて話し合う必要がある...」
掠れた声でリシャールが答える。
「あぁ、そりゃ当然だな。しっかり話し合ってくれ」
そう言ってセイラは部屋を出ようとする。
「セイラ!? どこに行くんだ!?」
「着替えるんだよ。この服どうにも窮屈なんでな。もう儀式は終わったんだし良いだろ?」
そのまま控え室に戻ってしまったセイラを止める者は誰も居なかった。
◇◇◇
セイラが退出してからもしばらくは誰も口を開こうとしなかった。衝撃的な事実と突き付けられた現実に思考停止してしまっていた。と、そこへまだ若い神官が慌てて飛び込んで来た。
「し、失礼します! 大神官様! 大切な儀式の最中に申し訳ありません!」
「あぁ、もう儀式は終わりましたから大丈夫ですよ? どうしました?」
ゴドウィンは物憂げに答えた。
「は、はい! セイラ様がお作りになられた聖水の鑑定結果が出たのですが、聖水ではありませんでした!」
「というと?」
「なんと...エリクサーでした!」
部屋は再び静寂に包まれた。
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