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 王都が魔物に襲われていた時、バッカーノはなにも知らず呑気にビッチーナと二人でバカンスに出掛けていた。
 
 帰って来てから臣下に聞かされたが『それがどうした?』だけで済ませたような気がする。そのことを思い出したバッカーノは、

「俺は本当に最低だ...」

「えぇ、全くです。大いに反省して下さいね?」

「あぁ、分かってる...」

 口ではそう言いながらも、安らかに眠る子供達の側で頭を抱えているバッカーノの姿を、ヘンリエッタは優し気な眼差しで見守っていたのだった。


◇◇◇


「今日は郊外に視察に行きますよ!」

 その日もヘンリエッタは元気一杯だった。

「視察!? どこに行くんだ!? そしてまたしてもドカジャンにニッカポッカなんだな...」

「行けば分かります! 今日は私も同じ格好なんだから文句言わない!」

 そう言って馬車に乗り込んだ。馬車が走り出して間もなく、ヘンリエッタが「そう言えば」と切り出した。

「ビッチーナに対する処分はどうするつもりです?」

「本当はさっさと始末したいところなんだが...さすがにこんな短期間で王妃を交代させる訳にもいくまい。仕方無しにこのまま死ぬまで幽閉するしかないと思ってる」

「まぁ妥当なところでしょうね。後は新しい王妃を迎えれば世継ぎも作れるでしょうし」

「えっ!?」

「どうしました? 鳩が豆鉄砲を食ったような顔して?」

「いやお前が...ヘンリエッタが産んでくれるものとばかり...」

「はっ!? 嫌ですよそんなの。そもそも私は愛しのダーリンを国に置いて来てるんですから!」

「だ、ダーリン!? 他に好きな男が居るのか!? だったらなんで嫁いで来た!?」

「言ったじゃないですか? 教育係だって。陛下の教育が終わったと判断したら国に帰りますよ? いつまでもダーリンを待たせる訳にいかないので!」

「そ、そんな...」

「陛下、もし血迷って私に手を出そうとしたら...」

 ヘンリエッタは指でチョキを作りながら、

「チョン切りますからね!」

 何を? とは怖くて聞けないバッカーノはコクコク頷くしかなかった。


◇◇◇


 馬車で約3時間走って辿り着いた場所は...かつては農地が広がっていただろうその土地には土砂が厚く積み上がっていた。未だ復興半ばなのか、農夫と思われる人達がもくもくと土砂の除去作業を続けていた。

 そんな人々を眺めながらヘンリエッタがこう言った。

「ここは元々豊かな小麦畑が広がっていた土地だったんです。それが先日の大雨により川が氾濫し、見ての通りこの有り様です。予算が無くて川の治水工事が出来なかったせいです。なぜ予算が無かったかはもうお分かりですよね?」

「...あぁ、良く分かってる。全て俺のせいだ...俺がビッチーナに言われるがまま国庫の金を使い捲ったから...」

 バッカーノは項垂れながらそう呟いた。

 
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