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プロローグ(一章まるごと読み飛ばしOK非エロエピソード)
魔王を倒せ!
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「やってもらいたい事?」
目覚めたら見知らぬ場所で見知らぬ人たちに囲まれて身に覚えのない借金を負わされている事実を突きつけられた怜子はすでに十分すぎるほど用心深くなっている。
しかも意識があやふやな事をいいことにこんなVストリングビキニを着せられているのだ。いやらしい企みのターゲットにされているとしても不思議ではない。
そんな怜子の気も知らぬかのようにマリス司教は告げた。
「勇者として魔界へ赴き、魔王を斃すのです!」
「は?」
怜子は当然理解できなかった。
一同は真面目な話をしているのにバカにされたかのような印象を受けてしまい、おもわずムカッとする。
「まぁまぁ、皆さま、いきなりそんなこと言われても飲み込める方がどうかしてるでしょう」
ファウストが宥めたが怜子の方は混乱から覚めない。
「え?勇者!?魔王???」
「まあ、それは今は置いといて・・・」
「何でアタシが?
他に適任者はいないんですか!?」
イェッタハンが申し訳なさそうに言う。
「すまんな、そなたが適任者だと思って復活させたんだが、人違いだったんだ」
「人違い!?」
(姦しい女だな)
(淑やかさの欠片もないではないか)
(こんな女がケイ・ユーキであってたまるか)
(記録が失われていたとはいえ、人違いで復活させたのがこんなアバズレとは)
(こんなのが何かの役に立つのか?)
怜子の様子を見て重鎮たちはイライラしはじめていた。
「いいからこっち向け!」
イェッタハンに食って掛かろうとする怜子の両肩に手をかけ、ファウストが押さえつける。
「今はそういうのは考えんでいい。
人違いだと分かった以上、無理は言わん」
「でも、やらないと借金が・・・」
「それも追々考えれば良い事じゃ」
「・・・はい」
「お前さんが生きとった世界とこの世界は全然違う。
だから、お前はまずこの世界で生活する事を覚えにゃならん」
「はい。」
「じゃからそのための手助けははする。
お前はこれからここにいる人たちの世話になるんじゃ」
「じゃあ、魔王は斃さなくていいんですか?」
「・・・当面はな。
出来れば斃してもらいたいが、さっきも言ったように無理にやらせようとは思わん」
「フツーに考えて無理ですよね?」
「そうでもない。
お前の身体は勇者のための特別製だ。
どんな武器でも傷一つつかんし、力も常人をはるかに凌駕する」
「え、そんな力がありそうな気がしないんですけど・・・」
現に大して体格に恵まれているとも思えない初老の男に両肩を抑えられ、抵抗できないでいる。
「それはまだ新しい肉体と魂のつながりが薄いからじゃろう。
色々経験を積んで魂が肉体へしっかり定着すれば、自在にその能力を引き出せるようになる」
「れ、レベル上げって奴ですか!?」
「・・・知らんが・・・まあ、そうかな?」
「レベルが上がれば魔王を斃せるようになるんですか!?」
「能力的には出来るようになる筈じゃ。
だからお前のやる気と訓練次第で、やれんこともない。
じゃが、事が事じゃからヤレと強制もできん
だから、それは置いとけ。
今後いろいろやってみてやれそうだったらやってくれればいい。
ダメと思ったら、やらんでいい」
「その代わりに借金ですか?」
「その時はその時に考えればいい。
その身体は不老不死じゃ、金を稼ぐにも都合が良かろう」
「・・・はい」
「どのみち、お前と一緒に魔王退治に行く予定だった者の都合が悪くなってな。
代わりを用意せねばならから当分は魔王退治はお預けだ」
「じゃあ、何をすれば・・・」
「ひとまずはお前の身体と魂の連結が強まるように、『れべるあげ』とやらをやるしかなかろう。
その前に、お前はまず今のこの世界で生きていけるように色々覚えねばなるまい」
「色々ですか?」
「お前がいつごろから冷凍睡眠にされていたかはわからんが、さっきも言ったように少なくとも400年以上は経っておる。
吾輩が生まれてからの300年ほどの間にも世界は随分変わった。
多分、お前の生きていた時代、生きていた社会とは今のこの世界は大きく違うはずじゃ」
「はぁ・・・」
「だから、当面はお前がこの世界になじめるように皆がお前をサポートするじゃろう。
そうですな?」
ファウストがそう言いながら一同を見回すと、重鎮たちは戸惑いながら不承不承とでもいう風に同意する。
「ではまずは関係者を紹介しておこうか?
吾輩はファウスト、この世界で最も偉大な錬金術師の一人だ」
「錬金術師!?」
「ああ、錬金術師とは大災害で喪われた科学技術を探求する者の称号じゃ。
並みの科学者や技術者よりワンランク上の存在が錬金術師じゃ。
吾輩はその頂点に君臨する。
そして、お前の身体を作り上げた張本人でもある」
「はぁ・・・」
「お前の身体は吾輩の最高傑作じゃ。
デザインはクライアントである国王陛下の好みに合わせたものじゃがな、自信を持つが良い。
お前の身体について分からんことがあればいくらでも相談するがいい。
それから吾輩の事は『博士』と呼べ」
「はぁ・・・」
「では次は?」
ファウストが自己紹介を終えると振り返って次の人の自己紹介を促した。
「では、わたくしから。
オホン!
私はイェッタハン、この国の内務尚書を務める者であり、この第四次勇者計画の総責任者でもある」
「次は私ですな。
名はアンタレス。軍務尚書・・・つまり、王国軍を纏め上げ、軍事に関する最高責任者である。
本計画のことは今日初めて聞いたが、軍事訓練等が必要であれば承るだろうし、実際に勇者計画が始動すれば軍がサポートする事になるだろう」
「私は財務尚書のゾーン。王国の財政と経済を総括しております。
同じく、本計画の事は今日初めて知りましたが、もし仮に計画がとん挫してアナタが借金を背負う事になるとしたら、返済する相手は王国になり私が窓口になるでしょう」
「私は法務尚書のゼーダ。国内の治安維持と法の執行を担っている。
本計画の秘密保持について責任を追う事になるだろう。
まだ誰も言っていないと思うが、本計画は極秘計画だ。お前の正体も秘匿されねばならない。
そのことを良く弁えて置くように」
「私はマリス司教。教皇庁での本計画の実務担当責任者の任を折っております。
こちらの王都アーカジィの司教座大聖堂に赴任しております。
何でも相談なさい」
「わたくしは王室と教皇庁の御用商人を務めておりますシャーロックと申します」
「最後は私だな。
私はトゥリ、この国の王太子である。
本計画のことは私も今日初めて聞かされたが、そなたを我が王国に迎える事を歓迎する。
そなたの事は王家の名誉にかけて庇護する事を約束しよう。
具体的な事はファウスト博士とイェッタハン内務尚書に任せるゆえ、相談するが良い」
目覚めたら見知らぬ場所で見知らぬ人たちに囲まれて身に覚えのない借金を負わされている事実を突きつけられた怜子はすでに十分すぎるほど用心深くなっている。
しかも意識があやふやな事をいいことにこんなVストリングビキニを着せられているのだ。いやらしい企みのターゲットにされているとしても不思議ではない。
そんな怜子の気も知らぬかのようにマリス司教は告げた。
「勇者として魔界へ赴き、魔王を斃すのです!」
「は?」
怜子は当然理解できなかった。
一同は真面目な話をしているのにバカにされたかのような印象を受けてしまい、おもわずムカッとする。
「まぁまぁ、皆さま、いきなりそんなこと言われても飲み込める方がどうかしてるでしょう」
ファウストが宥めたが怜子の方は混乱から覚めない。
「え?勇者!?魔王???」
「まあ、それは今は置いといて・・・」
「何でアタシが?
他に適任者はいないんですか!?」
イェッタハンが申し訳なさそうに言う。
「すまんな、そなたが適任者だと思って復活させたんだが、人違いだったんだ」
「人違い!?」
(姦しい女だな)
(淑やかさの欠片もないではないか)
(こんな女がケイ・ユーキであってたまるか)
(記録が失われていたとはいえ、人違いで復活させたのがこんなアバズレとは)
(こんなのが何かの役に立つのか?)
怜子の様子を見て重鎮たちはイライラしはじめていた。
「いいからこっち向け!」
イェッタハンに食って掛かろうとする怜子の両肩に手をかけ、ファウストが押さえつける。
「今はそういうのは考えんでいい。
人違いだと分かった以上、無理は言わん」
「でも、やらないと借金が・・・」
「それも追々考えれば良い事じゃ」
「・・・はい」
「お前さんが生きとった世界とこの世界は全然違う。
だから、お前はまずこの世界で生活する事を覚えにゃならん」
「はい。」
「じゃからそのための手助けははする。
お前はこれからここにいる人たちの世話になるんじゃ」
「じゃあ、魔王は斃さなくていいんですか?」
「・・・当面はな。
出来れば斃してもらいたいが、さっきも言ったように無理にやらせようとは思わん」
「フツーに考えて無理ですよね?」
「そうでもない。
お前の身体は勇者のための特別製だ。
どんな武器でも傷一つつかんし、力も常人をはるかに凌駕する」
「え、そんな力がありそうな気がしないんですけど・・・」
現に大して体格に恵まれているとも思えない初老の男に両肩を抑えられ、抵抗できないでいる。
「それはまだ新しい肉体と魂のつながりが薄いからじゃろう。
色々経験を積んで魂が肉体へしっかり定着すれば、自在にその能力を引き出せるようになる」
「れ、レベル上げって奴ですか!?」
「・・・知らんが・・・まあ、そうかな?」
「レベルが上がれば魔王を斃せるようになるんですか!?」
「能力的には出来るようになる筈じゃ。
だからお前のやる気と訓練次第で、やれんこともない。
じゃが、事が事じゃからヤレと強制もできん
だから、それは置いとけ。
今後いろいろやってみてやれそうだったらやってくれればいい。
ダメと思ったら、やらんでいい」
「その代わりに借金ですか?」
「その時はその時に考えればいい。
その身体は不老不死じゃ、金を稼ぐにも都合が良かろう」
「・・・はい」
「どのみち、お前と一緒に魔王退治に行く予定だった者の都合が悪くなってな。
代わりを用意せねばならから当分は魔王退治はお預けだ」
「じゃあ、何をすれば・・・」
「ひとまずはお前の身体と魂の連結が強まるように、『れべるあげ』とやらをやるしかなかろう。
その前に、お前はまず今のこの世界で生きていけるように色々覚えねばなるまい」
「色々ですか?」
「お前がいつごろから冷凍睡眠にされていたかはわからんが、さっきも言ったように少なくとも400年以上は経っておる。
吾輩が生まれてからの300年ほどの間にも世界は随分変わった。
多分、お前の生きていた時代、生きていた社会とは今のこの世界は大きく違うはずじゃ」
「はぁ・・・」
「だから、当面はお前がこの世界になじめるように皆がお前をサポートするじゃろう。
そうですな?」
ファウストがそう言いながら一同を見回すと、重鎮たちは戸惑いながら不承不承とでもいう風に同意する。
「ではまずは関係者を紹介しておこうか?
吾輩はファウスト、この世界で最も偉大な錬金術師の一人だ」
「錬金術師!?」
「ああ、錬金術師とは大災害で喪われた科学技術を探求する者の称号じゃ。
並みの科学者や技術者よりワンランク上の存在が錬金術師じゃ。
吾輩はその頂点に君臨する。
そして、お前の身体を作り上げた張本人でもある」
「はぁ・・・」
「お前の身体は吾輩の最高傑作じゃ。
デザインはクライアントである国王陛下の好みに合わせたものじゃがな、自信を持つが良い。
お前の身体について分からんことがあればいくらでも相談するがいい。
それから吾輩の事は『博士』と呼べ」
「はぁ・・・」
「では次は?」
ファウストが自己紹介を終えると振り返って次の人の自己紹介を促した。
「では、わたくしから。
オホン!
私はイェッタハン、この国の内務尚書を務める者であり、この第四次勇者計画の総責任者でもある」
「次は私ですな。
名はアンタレス。軍務尚書・・・つまり、王国軍を纏め上げ、軍事に関する最高責任者である。
本計画のことは今日初めて聞いたが、軍事訓練等が必要であれば承るだろうし、実際に勇者計画が始動すれば軍がサポートする事になるだろう」
「私は財務尚書のゾーン。王国の財政と経済を総括しております。
同じく、本計画の事は今日初めて知りましたが、もし仮に計画がとん挫してアナタが借金を背負う事になるとしたら、返済する相手は王国になり私が窓口になるでしょう」
「私は法務尚書のゼーダ。国内の治安維持と法の執行を担っている。
本計画の秘密保持について責任を追う事になるだろう。
まだ誰も言っていないと思うが、本計画は極秘計画だ。お前の正体も秘匿されねばならない。
そのことを良く弁えて置くように」
「私はマリス司教。教皇庁での本計画の実務担当責任者の任を折っております。
こちらの王都アーカジィの司教座大聖堂に赴任しております。
何でも相談なさい」
「わたくしは王室と教皇庁の御用商人を務めておりますシャーロックと申します」
「最後は私だな。
私はトゥリ、この国の王太子である。
本計画のことは私も今日初めて聞かされたが、そなたを我が王国に迎える事を歓迎する。
そなたの事は王家の名誉にかけて庇護する事を約束しよう。
具体的な事はファウスト博士とイェッタハン内務尚書に任せるゆえ、相談するが良い」
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